ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 金子勝・児玉龍彦著 「日本病ー長期衰退のダイナミクス」 (岩波新書2016年1月)

2017年04月20日 | 書評
失われた20年のデフレ対処法の失敗は、アベノミクスのブラセボ経済策によって「長期衰退期」を迎えた  第10回

5) 21世紀日本経済の長期衰退傾向 (その1)

 2008年米国のサブプライムローン住宅バブル問題に端を発するリーマンショックでは、関わりの少なかった日本で最も深刻な実体経済の落ち込みを経験し、ギリシャなど欧州諸国の一部ではソブリンリスクという国家存立の危機を迎えかねない事態となった。国内経済のメカニズムとグローバル経済の変動がどこかでリンクしたのである。これを線形では理解できない「複雑系の制御システム」と呼ぶ。予測の操作と言われる金融工学手法の暴走を検討すると、今のグローバルな超低金利政策と異常な金融緩和策は、リーマンショックの解決策ではなく、異なった形での経済危機の繰り返しとその深刻化ではないかという可能性が浮かび上がってくる。アベノミクスの帰結を予測するには、戦争中を除いて例を見ない日銀の異常な金融緩和の本質的な危険性を直視なければならない。国家信用だけが頼りの金融緩和策は信頼の相互関係が崩れた瞬間に信用は縮小しショックを引き起す。本書はここで共著者の児玉龍彦氏による遺伝子発現制御機構としての「エピゲノム」の働きを説明する。個別遺伝子の制御よりは上位に存在し、全体のホメオタシス(生命維持や世代交代)よりは下位の中間的な制御システムである。詳細は省くが、「制御系の制御」であるエピゲノムは複数の条件が整って準安定的なスイッチが入る。複数の情報が支配されるとエピゲノムは固定化されやすくなる。制御系の制御が変化し、情報支配を通じて格差が固定化されると、情報とルールを支配する勝ち組と、ルールで支配される負け組に別れて固定化される。「日本病」は1980年代後半のバブル以降の大きなエピゲノムの変化から生まれた。膨大な不良債権を責任を問わないままに政府債務に変え(国民に支払わせる)て経済の制御系を制御する。ここでルールを変えたのである。それによってエピゲノム制御系が傷ついたのである。規制緩和というフィードバックの解体を唱える「小泉構造改革」によって社会の解体が進み、リーマンショックによってさらに制御系のルールがおかしくなった。リーマンショック以降世界中でゼロ金利と未曽有の量的金融緩和の事態の中で、「予測(期待)を操作する」アベノミクスになると、マネタリストの経済学者と経済官僚らはあらゆる手段を動員してその場しのぎの方策が繰り返された。こうしてエピゲノム病と言える「日本病」が日本全体を蝕んだ。経済制御系の制御の変化は直接的な生活からは把握しずらいので、経済情報をさらに隠すためにあらゆる手法、とくにメデァ統制が行われ、偏った情報しか流されなくなっている。エピゲノム病は外的因子への耐性が弱いため、ショックで傷つきやすい体質、すなわち衰退的傾向が顕著になる。アベノミクスの下で、日本はいよいよ長期衰退期に入った。それはいままでの失敗の年長だけではない本質的な衰退への道である。失われた20年の間日本のGDPはほとんど停滞していた。それは安倍政権になっても同じであるが、経済成長がないまま円安を演出したため、ドル建てで見た日本のGDPは充足に縮小した。2012年と21014年のGDPの変化を見ると、米国は7.8%増加、中国は24%増加、日本は22.5%減少となり、GDPの大きさは今や日本は中国の半分以下である。一人当たりのGDPは2014年度は世界の27位まで落ち込んだ。日本製品の国際競争力は電子家電・半導体・液晶パネルなどで急速に低下した。一方相対貧困率は2012年に16%に増加し、生活保護世帯数は2015年度に162万世帯、受給者数は216万人に増加した。子供の貧困率は21012年いは16%に増加し、6人に一人は貧困児童となった。母子世帯の貧困は顕著で、年収平均は180万円以下である。地域の衰退もひどい状況である。公立病院の破綻、工場の海外移転で雇用が減少し、少子高齢化と過疎化が同時に進行した。同時に地方の主張選挙や地方議会選挙で無投票当選の割合が高まった。首長選挙の無投票選挙率は2014年に17%に、都道府県議選挙では33.4%が無投票であった。無投票選挙の増加は地域の問題を民主主義的に解決する能力の低下を意味している。

(つづく)
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