ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 本間 龍著 「原発プロパガンダ」 〈岩波新書2016年4月)

2017年07月17日 | 書評
電力会社と政府による原発推進宣伝の国民洗脳テクニックの数々 第3回

序(その3)

 1960-1970年代の高度経済成長期に取り残された、福島県、福井県、青森県、新潟県など原発を誘致した地方は。過疎のより地域衰退に追い込まれていた。そういう地域に「ゆたかな生活」という甘い幻想をもって声を掛けたのは、原発立地地域における原発プロパガンダであった。立地県におけるメッセージは以下のようなものであった。①原発を誘致すれば、電源三法交付金が自治体に入り、地域経済が豊かになり、個人の暮らしも豊かになる、②電源三法交付金で地域のインフラを整備すれば、地域発展の起爆剤となる、③原発は日本経済に絶対不可欠の電力供給の根幹であり、国策に則った政策強力になる、④原発は何重もの安全防御に守られており、絶対事故は起きない。万が一にも放射線漏れはない。といった内容の広告と記事が地元ローカル紙、テレビ局に大量に掲載され、1910月26日の「原子力の日」には著名人を呼んだシンポジウムが開催され、電事連などの広告や政府広報が配布された。その代わり都会の電力消費地には①-③の経済効果の宣伝はなく、もっぱら④の「原発の安全性」が強調された。そのほか⑤原発の発電コストは安い、1997年京都議定書締結後は⑥原発は炭酸ガスを出さないクリーンなエネルギーであるという文言が使用された。東京電力の1965年からの普及開発関係費(広告費)の推移を見ると、最初は7億円/年だった広告費は原発の増設と共に飛躍的に膨張し、1989年には200億円/年を突破し、300億円/年に迫った。そして広告費の増加にはある法則が見られる。事故やトラブルが起きるたびにそれを隠すようにして広告費が激増するのである。事故によるネガティブな印象が広がる前にメディアの紙面を独占し、大した事故ではないかのように派手な広告が多量に流れるのである。原発広告の目的は一般商品広告とは違ってユーザーへの商品訴求ではない。巨額の広告費を払うことで、その広告を掲載するメディアに対して暗黙の圧力を加えることが目的の一つである。原発事故がおきてもメディアの批判記事を自粛させる効果がある。大スポンサーの御機嫌を損ねると、広告を引き上げられるのでメディアの経営に影響が出るから、スポンサーへの批判記事や報道は不断から自粛するという。平時における電力会社の広告出稿は、常に原発礼賛してもらうための「賄賂」であり、事故などの有事の際は、メディアに報道次週を迫る「恫喝」手段となる。原発プロパガンダの司令塔は政府と関連省庁(経産省エネルギー資源庁、文科省、環境省)そして電力会社であろう。すでに破たんが決定的な高速増殖炉「もんじゅ」、一度も運転をしたことがない六か所村の「核燃料リサイクル」の施設に、現在でも税金を注ぎ続ける無責任と無自覚は、日本官僚組織の悪弊である。原発プロパガンダの普及には、それを推進する多くの組織(原子力ムラ)が存在した。分類すると以下になる。
① 政府自民党及び行政機関:経産省、文部省、環境省
② 電力会社:全国9社及びグループ企業
③ 原発メーカー:日立製作所三菱重工、東芝、建設会社、および周辺機器メーカー
④ 東大を頂点とする原子力関連研究機関(医学部も含む)
⑤ メディア:新聞社、テレビ、出版社、ラジオ局
⑥ 大手広告代理店:電通、博報堂
テレビ、ラジオCMの放送枠購入は電通や博報社など大手広告代理店を通さないと不可能である。特に電通は東電や電事連のメイン代理人として絶大な支配力を持っている。これらの原子力ムラを総攬する金融機関を含む432社の「原子力産業協会」が存在する。これが「原子力ムラ」の一覧であり、日本一流企業のほとんどが加盟する日本社会そのものである。(本書末尾の付録として原子力産業協会登録432社の一覧表が掲載されている。一度目を通しておかれることをお勧めする。又同様に軍事産業企業一覧表も知っておかれるほうがいいと思う) 原発プロパガンダはいくつかの要素で構成される。それは繰り返しになるが、①あらゆるメディアを使用した広告展開(対象は国民)、②電事連によるメディア監視(対象はメディア)、③巨額広告費を背景にした言論封殺(対象はメディア)である。特に②の電事連によるメディア監視は、執拗で高圧的である。例えば2004年の4月・5月の2か月8つの新聞記事をチェックして、抗議文と質問状を送り付ける。専門家の立場からの質問状はメディアをみくだしたような細部にわたる技術的内容である。記者は面倒だから原発記事を書くのは止めようという気にさせるらしい。そして電事連のHPにアップし攻撃を加えてきた。原発プロパガンダの仕組みこそが、メディアによる批判と検証を封殺し、福島第1原発事故の悲劇に要因となったのである。

(つづく)
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