ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 矢部宏冶著 「日本はなぜ、基地と原発を止められないのか」 (集英社)

2017年07月14日 | 書評
憲法9条に外国軍基地撤去を謳うことから戦後を再スタートしよう 第11回 最終回

5) 自発的隷従の道ー昭和天皇の影

 現在の日本が直面する問題とは、実はと言えば日本人自らが生み出した認知上の歪(自発的隷従状態)に主な原因があります。戦後70年経ってなお存在する「戦後日本」という国家は、いずれは終焉を迎えるでしょう。しかしそのためには本当の民主主義を自分たちの手で勝つとってゆくプロセスが必須です。敵国条項も米軍基地も沖縄問題も原発問題も、政府(支配者)が解決するので事はl期待せず、主権在民の市民が解決しなければなりません。この問題の本質は「歴史的経緯の中で、日本人(支配者)が米軍の駐留を希望したから」であり、その支配者の意向には昭和天皇の自己保身的姿勢が強く影響していた。敗戦当時の支配者が恐れたのは原爆ではなく天皇制を否定する共産主義であったことです。近衛文麿(細川元首相の祖父、終戦時自決)は1945年2月14日に近衛上奏文を添えて昭和天応に意見を具申しています。「従って敗戦だけなら天皇制の維持についてそれほど心配する必要はないと考えます。心配すべきは敗戦よりも、それに伴って起こる共産革命です」 もし革命が起きれば皇帝は死刑になることは西欧の常でした。このとき昭和天皇は敗戦を渋っていました。そして7月12日ソ連に特使を派遣し終戦を斡旋してもらおうということで近衛文麿が特使になりましたが、この時の最悪の条件とは「沖縄、小笠原、樺太は捨て、千島は南半分でも残れば良し」というものでした。つまり沖縄は「固有の領土」ではなかった。支配者は沖縄は明治維新のときに併合した領土だから捨ててもいいと考えていたようです。政治的なリアリストだった昭和天皇は(後白河法皇のように)、重要な局面において何度も政府の頭越しにアメリカと直接取引をしています。国連の五大国の足並みが揃わないことを見て、独立後の日本安全は本土へのアメリカ軍の駐留によって確保したい考えていました。最初の政府の頭越しに出されたメッセージは1947年9月19日の「沖縄メッセージ」でした。1979年アメリカの公文書から発見された、寺埼秀成が口頭で伝えた政策提案でした。「アメリカが沖縄その他の琉球諸島の軍事占領を継続するよう天皇が希望している」、さらに天皇は50年、あるいはそれ以上の長期リースの形でもいいと言っていることを伝えました。天皇と日本の支配層は、沖縄は日本に主権を残したままの長期リースというフィクションに基づくべきだと考えていました。米軍は沖縄諸島を国連の信託統治戦略地区にして事実上の米軍の支配下に置くことでした。これに対して国務省は1946年6月に、国際世論を考慮して軍の方針は疑義を招くとして、沖縄を非軍事化し(米軍が撤退し)日本に返還することでした。こうした中に出された天皇の沖縄メッセージはマッカーサーの立場を補強するものとなり、軍部の方針に決定されました。もう一つの天皇のメッセージは1950年6月26日、昭和天皇から来日中のダレスに送られたもので、側近松平康昌が口頭で伝えました。この内容は米政府の公式文書となり、公文書公開で発見されました。この口頭メッセ―jは政府だけでなくマッカーサーも飛び越え、直接ダレスに伝えられました。これは講和条約交渉中の吉田首相が「私は軍事基地は貸したくないと考えます」と発言したことに関連して、「吉田首相の方針は間違っている。米軍の基地継続使用問題も、日本側からの自発的申し出で解決され、あのような間違った吉田の議論を引き起こさずに済んだだろう」というものです。米国国務省は外国基地と憲法9条の問題は「日本の国土に米軍基地を設けることを日本側から働きかえる試みは、憲法問題を最も深刻な形で引き起すだろう」と懸念した。米国国務省が懸念したように、米軍の駐留を裏から働きかけたたことが、日本国憲法の権威を傷つけ、法治国家崩壊という現状をもたらした原因であることが明らかです。そして1951年の旧安保条約の前文には「日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国内およびその周辺にアメリカが軍隊を維持することを希望する」と書かれています。米軍駐留を日本側から、しかも昭和天皇が日本の支配層の総意として要請したという法治国家として致命的な誤りを犯した。すべての軍事力と交戦権の放棄した憲法9条第2項と、米軍の基地という矛盾を内包したまま、米軍が天皇制を守るという非常に歪んだ形で、戦後日本の国家権力構造が完成することになった。昭和天皇は後白河法皇を上回る「天下の大天狗」だったのです。この天狗に振り回されて日本は今も窮地をさまよっているのです。何よりも重要なのは、国内に外国軍基地を置かないこと、つまり米軍を撤退させることを必ず憲法に明記し、過去の日米密約をすべて反故にすることです。自衛隊は有事の際米軍の指揮下に入ることが密約で合意されています。そのための指揮系統の整備が日米委員会で協議され、1952年7月口頭で統一指揮権を了承しました。これでは日本は米国の一つの州になったということです。2014年7月安倍内閣が「集団的自衛権の行使容認」をし、翌年安保法制整備をしたことはその密約の現実化なのです。

(完)
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