ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 本間 龍著 「原発プロパガンダ」 〈岩波新書2016年4月)

2017年07月16日 | 書評
電力会社と政府による原発推進宣伝の国民洗脳テクニックの数々  第2回

序(その2)

 一般商品の「宣伝広告」と「プロパガンダ」はどう違うのだろうか。それはプロパガンダという言葉に非常に特殊な、政治的な思惑を伴うことである。つまり「宣伝・広告戦略」である。プロパガンダになぜか危険な香りがするのは、それはナチスドイツのイメージが重なるからである。ゲッペルスの宣伝省という機関に、連合国側が狂信的ユダヤ人排斥イデオロギーを実行した悪の機関というマイナスのイメージを刷り込んだからである。そもそもプロパガンダという言葉はナチスの発明品ではなく、第1世界大戦でプロパガンダは国家間の戦争において必要不可欠なものであった。ラジオや映画を主体としたメディアを最大限に利用したのはイギリスであった。むしろ連合国側が盛んに使った手法をナチスが真似たというのが正しい。このプロパガンダ=広告宣伝は時代の技術を取り入れ世界各国で展開されたが、日本では原発推進宣伝において強烈なテクニックを駆使して展開された。日本は1950年代における原発推進を国策と決めたが、これには政治家中曽根氏と読売新聞社正力松太郎の力が大きい。米軍基地反対闘争を力づくで排除してきた国家権力であるが、「原子力平和利用」を謳うからには国家暴力を用いるのは得策ではない。円滑に原発建設を進めるためンソフト戦術、つまり「合意の捏造」でもいいから、多数の国民は原発を容認しているという世論形成を目指した。それには全国紫の巨大メディアと地方に根差したローカルメディアの両方を活用して国策宣伝に努めた。「原発は安全で必要不可欠なシステムである」という意識を浸透させる必要があった。しかし日本列島は地震大国で、原発は隠してきたが事故続きであること、原発推進には致命的な欠陥を徹底的に隠して宣伝しなければならなかった。これはもう宣伝というより神がかり的な「安全神話」を偽造して流布することになった。真実を広く知ってもらうという本来の宣伝目的ではなく、最初から国民をだますという基本スタンスに立っていた。40年間に電力事業者が使った広告宣伝費が2兆4000億円という途方もない金をつぎ込んで、しかも国民の多くがプロパガンダに気が付かないという究極の目的を達成したと言われる。原発プロパガンダの歴史とは、そのまま日本のメディア史、広告業界の歴史と重なっている。この宣伝システムが長く露見しなかった最大の要因は、本来っ警鐘を鳴らすべきメディア(新聞、テレビ、雑誌など)が完全に抱き込まれ、原発推進側の共同体となってしまったからである。メディアは長年「広告費」を貰うことで原子力ムラを批判できなくなり、プロパガンダの共犯者に成り下がった。各地で原発事故が起こっても、原子力保安院や御用学者・専門家が言う軽微な「事象」というオブラートに包んだ報道しかしなかった。しかし関係者のリークがあって度重なる事故隠しや偽造データーの程度が悪すぎること、そして決定的には2011年3月11日の原発事故発生で、電力業界の奴隷であったメディアも批判の目を向け始めた。長年メディアが原発プロパガンダの片棒を担いできたことの事実をほとんどのメディアは検証しなかった。自己批判をしたのは、朝日新聞2011年10月「原発とメディア」だけであった。原子力ムラの宣伝部であった読売新聞は黙したままどころか、再稼働宣伝の先頭に立っている。筆者は大手広告代理店である博報堂営業部に18年間勤務して、企画立案・広告制作・媒体購入・販売施策を担当し集金まで行ってきた経験から、その宣伝の流れのすべてを把握していたという。しかし事故後数年たってもメディや広告代理店は過去を反省しない実態を目にして、その仕組みを世に問うつもりで関係書籍を数冊刊行した。関係著書を羅列すると、①「本書」2016/4、②「大手広告代理店のすごい舞台裏」2012/6、③「電通と原発報道」2012/6、④「原発広告」2013/9、⑤「原発広告と地方紙」2014/10、⑥「誰がタブーをつくるのか」2013/2である。プロパガンダは気づかれずに人々をマインドコントロールすることが真骨頂であるので入念な計画を練る。3.11以前の原子力ムラのキャッチフレーズは以下のようであった。
①原発は日本のエネルギーの三分の一を占めている、
②原発は絶対安全なエネルギー、
③原発はクリーンエネルギー、
④原発は再生可能エネルギー
というものであるが、①という既成事実を除いて、すべてはすぐにばれる真っ赤なウソである。人々は何となくそれを信じてきたのだろう。2009年の内閣府「原子力に関する特別世論調査」でプロパガンダの効果(世論)を測定している。原発に賛成が60%、現状維持が19%であった。原発賛成・容認は国民の80%を占めると政府は安心したようである。スリーマイルズ島事故もチェルノブイリ事故も東電のトラブル隠しも経験してきた日本でこの世論誘導は見事であるとしかいいようがない。事故の詳細や本質を隠し大したことはないように報道し、事故のことを考えさせないようにしてほかのことに気を向けさせる。それは大量の原発宣伝広告とメディアの翼賛報道の結果であった。9電力会社の宣伝広告費は過去40年で2兆4000億円であるが、広告費の原資は利用者から集めた電気料金にある。その電気料金は総括原価方式で計上される。つまり電力会社は地域独占で競争がないことにより経費節減の圧力がないので、宣伝費に歯止めをかからない構造であるからだ。

(つづく)
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