ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート R・Pファイマン著 「光と物質の不思議な理論ー私の量子電磁力学」(岩波現代文庫)

2015年04月14日 | 書評
光子と電子の相互作用を解き明かす量子電磁力学 第13回

3) 電子との相互作用
本章は光と電子の相互作用について述べるものであるが、最初からこのQEDは重力と原子核に働く力については論外であることを宣言している。前章で述べた事象を再度定義しなおすことから始まる。事象としては前章と重複する。できることはある事象が起きる確率を計算することである。前章で述べた反射の確率(直角に入射するときの反射率は4%であるが、斜めに入射するにつれ反射率は増加する)の考え方は、電子との相互作用でも通用する。これを「合成のルール」と呼びます。
①事象がいろいろな経路を経て起こりうる場合には、その一つ一つの経路について出した確率を加える。
②いくつかのステップにわたって起こる一連の事象の場合や、独立していくつものことが付随して起る事象の場合は、そのステップ(付随的な事柄)の一つ一つについて出した確率を乗じる。
QEDに成功の秘密は、確率を1本の矢印(最終矢印)の長さの自乗として計算することであった。矢印の長さが確率につながり、確率を乗じることを「矢印」を乗じるのである。矢印の角度をどう計算するかは本書には書いてないが、平面上の矢印は、頭と尻をつないでゆく行くことで「加える」ことができ、短縮と回転を続けてゆくことで「乗じる」ことができる。この矢印は大きさを持ち、代数の法則(A×B=B×A、A+B=B+Aなど)に従うことにより数学的には「数」とみなせる。大きさと方向を持つことから「複素数」と呼ぶことができ、「事象の確率は複素数の絶対値の自乗」である。つまり確率とは複素数の代数法則のことである。前章で論じた光学現象を光子と物質の電子の相互作用という観点で前章の結果を深めてゆこう。まず光子の性質のひとつ「干渉」について見ておこう。

➀ 干渉
本論に入る前に、光の振る舞いのひとつ「干渉」という事象を考えてみよう。非常に弱い単色光が一度に一個光源Aより発射され、穴の開いたスクリーンの反対側の検出器Dに達する場合です。(A-Dの距離が1mなら穴の径は0.1mm程度、光子は1%の確率で穴を通過する) こうしてBの穴をふさいでも、反対にAの穴をふさいでも検出器はカチカチと音を立てます。すなわち光は直進するという考えは成り立たないのです。両方の穴を開放して測定すると、音を出す回数が予想されるより0-4%増加する場合もありますが、穴の間隔によっては音が出なくなります。両方の穴を開放した場合の干渉とは2つの振幅(確率)を加えることです。どちらの穴を光が通るかという問題ではないのです。ところがAとBに信頼できる検出器を置くと、干渉は全く観測出ません。これは観測系でしか現象を判断できないためによるものです。下の図の右に検出器Dの干渉を示す。両方の穴を開放した場合の光の量は0-4%の振幅を持つ(a)、AとBに信頼できる検出器を置くと干渉は消え振幅は2%一定(1%+1%)である。検出器の感度によってc,dのケースとなる。こうして振幅(最終矢印)の自乗を計算するということが干渉の確率を与えるということである。

(つづく)


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