ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 山岡耕春著 「南海トラフ地震」 (岩波新書2016年1月)

2017年03月21日 | 書評
M8-9規模の南海トラフを震源域とする巨大地震をどう予測し、何が起きるか、どう備えるかを考える 第7回

2) 最大クラスの地震とは (その2)

ここで少し地震のメカニズムを科学的に考えてゆこう。現在の気象予測はスーパーコンピュータを用いて世界中の20Kmごとの格子点の大気測定値(アメダスデータ)を取り込んで計算するものである。そこで用いられる方程式は、大気の流れの流体力学の微分方程式、水蒸気の蒸発と降雨方程式などを用いる。こうした気象の数値予測が行われ、天気予報や警報の発表がなされる。地震発生についてはコンピューターによる数値予報は研究中である。地震発生の数値計算がいかに難しいかを述べることになる。地震現象を支配する微分方程式とは、媒体である岩石層の歪と応力の関係式、字椎の正体である断層運動方程式を求めなればならない。近くの粘弾性値は温度によって変化する。深さ15Kmよりも深い場所では粘性的な性質が顕著となる。地震の発生は岩石の中で起きる急激な破壊である。これら断層面に沿っ多ずれの動機を支配するのが摩擦の法則である。摩擦とは固体と固体が接触する面のずれを抑制する。摩擦則は滑り(ずれ)速度と状態に依存する。滑り速度が増加すると摩擦力が減少する性質を「滑り速度弱化」と呼ぶ。接触の強弱の割合を「状態」と呼び、状態によって摩擦力が異なる。摩擦則はそもそも経験則であることに加え、パラメーターも空間分布も不明である。ということで現在の地震予測を数値計算から求めることはまだ不可能である。過去の地震履歴事例から地震を確率的に予測する手法の開発も進められている。話をもとに戻して南海トラフ巨大地震が発生した時、東京、名古屋、大阪といった大都市で何が起きるだろうか。政府や各自治体が発表した被害想定に基づいて考えよう。東京は南海トラフから離れているため揺れの強さは震度5強程度に収まる。伊豆半島や三浦半島の陰になるため東京湾の奥での津波もさほど大きくはない。東京では長周期地震動と呼ばれるゆっくりとした振動の影響が懸念される。高層ビルや石油タンクなど巨大建築物に影響が出る可能性がある。3.11東北太平洋地震でも千葉県市原市五井石油コンビナートで大火災が発生した。東京都内で地盤の揺れやすさが異なるので、低地や埋め立て地は揺れやすいので地盤の流動化が起きるだろう。高層ビルでは高層部の揺れが地表部に比べて大きい。家具・ファイル書棚・コピー機やPCによるケガを防ぐために固定化が必要である。東京では建物被害は少なくても交通への影響は大きい。このように短期的には東京への影響は限定的である。名古屋市は南海トラフ巨大地震の影響を最も受けやすい都市である。市内のほとんどの地域の震度は6弱以上で、名古屋の南部や西部の揺れやすい地域では震度6-7となろう。そして液状化の可能性も高い。津波については入口の狭い伊勢湾の奥にあるので影響は比較的小さい。名古屋市の想定では巨財地震の最悪ケースで建物全壊が66000棟、仮設住宅6万戸の建設費は3000億円、死者数最大6700人とみている。ライフラインや交通の停止による生活困難が待ち構えている。電力停電と固定電話が不通となり復旧するには数日から1週間ほどかかる。電力は水道にも影響する。長期間の交通マヒが続き鉄道再開まで1週間はかかる。大阪市も歴史的に南海トラフ巨大地震の影響を受けてきた都市である。安政の南海地震では大阪湾を襲った津波による被害を受けた。大阪は河川と運河の張り巡らされた都市であるので津波被害が広がった。大阪府がまとめた被害想定を見よう。南海トラフの巨大地震の最大揺れは震度6弱とみており、名古屋より1段低い。建物倒壊による死者は70人程度で見ているのは、大阪府の耐震化率は80%であるからだ。揺れによる被害は限定的であることに比べて、津波による被害は、此花区で4mの高さで地域全体が浸水する。大阪では地震発生からつ津波が来るまで1時間半から2時間かかる。大阪駅や梅田も浸水域となり地下街に侵入する可能性がある。大都会では地震後歩いて帰宅する避難者で大混雑する時間帯に津波による浸水が起きたら被害が拡大されるだろう。地震後4-5時間は避難した場所に留まる方が安全である。事前にハザードマップを入手して、よく付近の起こりうる事態を把握しておくことが大事である。

(つづく)
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