ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート ホーキング著 林一訳 「ホーキング、宇宙を語る」(ハヤカワ文庫 1995年4月)

2016年12月28日 | 書評
一般相対性理論と量子力学の融合で新統一理論をめざし、宇宙の始まりと構造を問うービックバンとブラックホールの謎に迫る 第1回



1982年スティーブン・ホーキングスはハーヴァードで講義をしたあと、空間と時間に関する一般向けの書物を一切の数式を使わないで書こうとした。そしてそれは1988年に出版され、単独翻訳権を得た早川書房が1995年林一訳で邦訳版を出版した。ホーキングは1942年生まれ、オックスフォード大学とケンブリッジ大学で物理学と宇宙論を専攻、早くから理論物理学の第一人者と認められ、1974年史上最年少の若さ32歳で王立協会会員に選ばれ、1979年にはケンブリッジ大学ルーカス記念講座教授に任命された。この職はかってニュートンやディラックも就いたことがある名誉ある職位である。筋委縮性側索硬化症ALSと闘いながら、奇跡的にも命を長らえ(2015年で73歳)、多くの優秀なスタッフに支えられて現在も独創的な研究・執筆活動を行っている。ホーキングの研究の歴史は、第Ⅰ期は、ロジャー・ベンローズ、ロバート・ゲロッグ、ブランドン・カーター、ジョージ・エリスらを共同研究者とする「時空の大曲的構造」論であった。第Ⅱ期は1974年から始まった「量子論」では、ゲーリー・ギボンズ、ドン・ページ、ジム・ハートルらが共同研究者となった。本書は重力の一般相対性理論と原子の量子力学を基礎として、自然界及び宇宙の起源の始まりと未来を語るものである。宇宙には始まりがあるのか、なぜ存在しているかという本質に迫る、哲学と科学の境界の書であり、多くの人にとって人間の知性の限界をさらけ出すことになり話題にしたくない領域である。そのためかどうかは定かではないが、ホーキングを適切に評価してノーベル賞を与えるという動きは無いようだ。業績をまとめておこう。一般相対性理論と関わる分野で理論的研究を前進させ、1963年にブラックホールの特異点定理を発表し世界的に名を知られた。一般相対性理論が破綻する特異点の存在を証明した特異点定理をロジャー・ペンローズと共に発表した。一般相対性理論と量子力学を結びつけた量子重力論を提示している。この帰結として、量子効果によってブラックホールから粒子が逃げ出すというホーキング放射の存在を予想している。1971年には「宇宙創成直後に小さなブラックホールが多数発生する」とする理論を提唱、1974年には「ブラックホールは素粒子を放出することによってその勢力を弱め、やがて爆発により消滅する」とする理論(ホーキング放射)を発表、量子宇宙論という分野を形作ることになった。いまなお現代宇宙論に多大な影響を与えている。ホーキングのサイエンスフィクション好みは有名で、本書の各所に面白い想像話が埋め込まれている。例えば時間順序保護仮説によって過去に戻るタイムマシンは不可能という立場をとっている。これは「我々の時代に未来からの観光客が押し寄せたことはない」ことからも裏付けられるとしている。タイムマシンが将来的にできるかどうかに関しては「私は誰とも賭けをしないだろう」とした。また2010年4月25日にアメリカのディスカバリーチャンネルのテレビ番組にて、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸に到着した時、アメリカ先住民が征服されたことを引き合いに出し、人類と宇宙人との接触は人類にとってよい結果をもたらさないとして宇宙人とのコンタクトを試みるべきではないと主張した。またホーキングは宗教界とは無縁の人で、2010年9月7日「宇宙誕生に神は不要」と主張し、宗教界から批判を浴びたとされる。さらに人工知能批判としては2011年5月、人間の脳について「部品が壊れた際に機能を止めるコンピューターと見なしている」とし、「壊れたコンピューターにとって天国も死後の世界もない。それらは闇を恐れる人の架空のおとぎ話だ」と否定的な見解を述べたといわれる。

(つづく)
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