ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 矢部宏冶著 「日本はなぜ、基地と原発を止められないのか」 (集英社インターナショナル 2014年10月)

2017年07月07日 | 書評
憲法9条に外国軍基地撤去を謳うことから戦後を再スタートしよう 第4回

2) 福島の謎ー原発村 (その1)

 沖縄の米軍基地ツアーが終って、「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地観光ガイド」(書籍情報社)の構想がまとまった頃、2011年3月11日に東関東大震災と東電福島第1原発事故が起こった。そして筆者の頭の中に「沖縄イコール福島」お構造が見えてきたという。つまり原発に関しても憲法は機能しない。米軍基地での事件・事故は何度でも繰り返されるように、原発は何があっても再稼働されるということである。原発事故によって20万人の人が畑や家を失い避難生活を余儀なくされようとも、この大惨事の加害者東電と政府は罰せられない、警察は東電に捜査に入らなかった。もしこれが工場の爆発事故で死傷者が出たら、工場は操業停止、工場に消防と警察の捜査が入り、工場の責任者は逮捕され有罪となることは確実である。普通の国なら大訴訟団が結成され、空前の損害賠償請求が東電に対してなされるはずである。ところが「原子力損害賠償紛争会ケルセンター」という調停機関を通じて僅かばかりの東電言い値の賠償を受けて黙ってしまう国民なのです。いくら訴訟を起こしてもいつも玄関払いか最高裁で敗訴が分かっているかもしれません。今まで最終的に原発裁判に勝訴した例は一度もないことは、海渡雄一著 「原発訴訟」(岩波新書 2011年11月)に示されている。今までの主な14の原発訴訟はすべて棄却が出された。2013年4月の仙台高裁での「集団疎開訴訟」でも、子どもの健康へのゆゆしき影響が懸念されるとしながらも、子どもをすくための行政措置をとる必要はないという判決が出ている。原発訴訟に統治行為論的な考えを取り入れて、原発の運転の妥当性に裁判所は判断しないという。沖縄と福島の違うところは、沖縄には二つの新聞社「琉球新聞」と「沖縄タイムズ」があって正しい報道と情報をだしており、かつ政治家には大田元知事、井波洋一市長、稲嶺知事といった闘う首長を輩出している。ところが福島には原発推進派の自民党政治家しかいないし、まとまった政治勢力がない。原発の利益集団である「原発村」(産・官・学・軍)については多くの著書があるので、例えば山岡淳一郎著 「原発と権力」(ちくま新書 2011年)を挙げてここでは省略する。また第2章「福島の謎―原発村」は原発に関することが中心というより、日米の従属関係の一例に過ぎないという安保体制の話がメインである。だから繰り返しになるので多くは述べない。さきに沖縄で述べた、憲法より上位にある日米地位協定に基づく「日米合同委員会」は「安保法体系」と呼ばれる密約の集合体です。そうした密約は国際法上は条約と同じ効力を持ちます。アメリカで機密解除された二つの密約があります。一つは1957年2月アメリカ大使館から国務省に宛てた報告書です。「行政協定では、アメリカが占領中に持っていた軍事活動のための権限と権利は保護されている」、「行政協定には日本の地域の主権と利益を侵す数多くの取り決めがある」というものです。二つ目の密約は「米軍基地の使用のため日本政府によって許可された施設の米軍の権利は、1960年の協定、1952年の協定の下で変わることはない」というものです。2013年沖縄の市長らが「オスプレイ配備撤回の建白書」を野田首相に手渡したが、首相は「どうのこうのはアメリカには言えない」という返事だった。安保条約の下では日本政府とのいかなる相談もなしに米軍を使うことができるという秘密報告書に根拠があります。辺野古での基地建設の沖縄行政挙げての反対運動は、日本復帰した沖縄にとっては初めての基地建設を認めることは、沖縄自らは決して行わないという決意で始まった反対運動です。1957江の機密文書には「新しい基地についての条件を決める権利も、現存する基地を維持し続ける権利も米軍の判断にゆだねられている」としているからです。 東京のど真ん中に米軍基地があることをご存じの方は少ないでしょう。六本木ヘリポートがヒルズの前にあります。近くにはニューサンノ―米軍センター(米軍のホテルと会議場)、そしてアメリカ大使館が車で5分の位置にあります。横田基地や横須賀基地からヘリコプターで米軍関係者やCIA諜報員がやって来ることを日本側はどうしょうもないのです。自国内の米軍基地からやってくる米軍関係者にほとんど無制限に都内での行動の自由を許可しているのです。これは民主的な法治国家にとって許せなない矛盾です。この矛盾を隠すため国家の最も重要な部門には分厚い「裏マニュアル」が存在します。
①最高裁の「部外秘資料」(刑事特別法関係)、
②検察の「実務資料」(外国軍に対する刑事裁判権)、
③外務省の「日米地位協定の考え方」です。
これらは米軍に治外法権を与えるための裏マニュアルです。1957年米兵の犯罪であった「ジラード事件」が起きたとき、日本官僚は非公開でで協議し、その方針が法務省経由で検察庁へ送られ、検察庁は軽めの求刑を行う十同時伊裁判所にも軽めに判決をするように働きかける。裁判所は信じられないほどの軽い判決を出す。事件は米兵が日本女性を射殺したにもかかわらず、検察は殺人ではなく傷害致死で起訴し、懲役5年を求刑しました。裁判所はさらに「執行猶予4年、懲役3年」の判決を出しました。二週間後にはジラードはアメリカに帰国しました。これは役所間の連係プレーによって事実上の無罪の取り扱いとなった例です。

(つづく)
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