ブログ 「ごまめの歯軋り」

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和田純夫著 「プリンピキアを読むーニュートンはいかにして万有引力を証明したか」(講談社ブルーバックス2009年)

2016年10月25日 | 書評

近代科学の出発点となった運動の法則や万有引力を確立したニュートンの金字塔 第20回 最終回

3-3) 第Ⅲ編後半

話題1: 「地球の形」
 天体が完全な球体であれば、セクション12で示した重力の性質は簡単になる。実際には惑星は完全な球ではない。例えば地球の両極間の距離は赤道の直径よりも1/300 ほど短い。つまりわずかに扁平である。ニュートンの時代には地球の形は計測されていなかった。1736年モーペルチュイが極地探検で地球が扁平であることを明らかにした。地球は自転のため遠心力が働いて赤道方向へ膨らみ扁平となる。ニュートンは重力理論を用いてどの程度扁平になるのか計算した。扁平になったため場所によって重力がどの程度変化するかも検討した。
命題18: 「惑星は自転軸方向に潰された扁平な形をしている」 
命題19: 「惑星の自転軸の長さとそれに直角な方向の直径の比を求めよ」
(地球の北極Pから中心Cまでと赤道上の点Aから中心までが細い管まで連結されていると想定する。赤道の直径をAB、北極と南極を結ぶ自転軸上のPQの細管内の力を重力と重さによる圧力がバランスしているとして、次の3段階で考察を進める。①ACとPCの上に働く重力の違い、
②ACとPCの長さが違うことによる総質量の違い、
③AC方向にのみ遠心力が働くことである。出発点として仮にAC/PC=101/100としたら重力がどれだけ違うのだろうかを考える。
「第1段階」: 長さPCを半径とする地球に内接する球S1を考え、球と扁平楕円上のPでの重力を比べる。第1編命題91系2の定理を使えば、離心率e^2=1-(PC/AC)^2=2/100 となるので、Pでの重力/内接球上S1の重力=126/125となる。
「第2段階」: 赤道上のAで外接する球体S2を考え、扁平な楕円体との重力とに比較は、S2上での重力/Aでの重力=126/125.5
「第3段階」: 命題72より相似関係にある球の重力の比は半径の比に等しい。S1上での重力/S2乗での重力=100/101 以上の3段階の結論をすべて掛け合わせると、極Pでの重力/赤道Aでの重力=(126/125)・(100/101)・(126/125.5)≒1.002(501/500)
要素①の結論:極の方が1%短い場合には、極での重力が0.2%大きいことになった。
要素②の結論:重力が違うことによる単位質量あたりの重量比=質量比×半径比=(100/101)・(501/505)=501/505≒0.992 
要素③の結論:遠心力は=速度^2/半径であるので、赤道上での重力/遠心力≒9.8:0.0337≒1:0.0034 となる。赤道上では重力は0.8%少ないのに、遠心力は0.34%しかない。つまり重力差が生じている。木星では扁平率は1/12(赤道と極方向の半径の差の、赤道方向の半径に対する比率)であった。地球が扁平なら緯度によって重力が異なり、振り子時計の進み方も違う。
命題20 地表上での緯度の違いによる重力の変化
(地表上の各緯度での重力はその位置での、地球の中心からの距離に反比例する。楕円曲線論から緯度の角度をθとすると、離心率eはゼロに近いとして、楕円長軸半径a、球半径rとすると、(1/r-1/a)∝(sinθ)^2

話題2: 「潮汐」
 ニュートンは惑星を動かしている万有引力という作用によって、潮汐という現象も説明できることを示した。3体問題第1編命題64以降の議論が出発点になる。月が地球と太陽を結ぶ線上にあるときは、力の差は月を地球から遠ざける。月が地球と太陽を結ぶ線と直角の位置にあるときは、力の差は月を地球に近づけるように働く。ここで地球から見て潮を月に見て、太陽を月に見ると、地球の月側の海水は膨らみ(満潮)、反対側の海水は干上がる(干潮)。月が及ぼす干潮力は距離の3乗に反比例し、万有引力の大きさに比例する。干潮力∝天体の質量/天体までの距離^3、月の干潮力/太陽の干潮力=(月の質量/太陽の質量)×(太陽までの距離/月までの距離)^3である。太陽と月と地球が一直線上にある時(満月または新月)、二つの潮汐力が一致し大潮となる。半月の時小潮となる。大潮/小潮=(月の潮汐力+太陽の潮汐力/月の潮汐力ー太陽の潮汐力)=9/5(観察値) すなわち月の潮汐力/太陽の潮汐力)=7/2、月の質量/地球の質量≒1:40である。)
題Ⅲ編には命題は45あるが紹介しきれないので、テーマだけでも紹介する。
①地球や月の自転軸の動き、
②月の楕円軌道からのずれ、面積速度の変化、
③月の赤道面と地球の公転軌道面の傾きの動き、その交差点の動き、
④彗星の軌道計算 などである。

(完)

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