ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 矢部宏冶著 「日本はなぜ、基地と原発を止められないのか」 (集英社インターナショナル)

2017年07月12日 | 書評
憲法9条に外国軍基地撤去を謳うことから戦後を再スタートしよう 第9回

4) 安保村の謎2-第2次世界大戦後の世界  (その1)

 日本は第2次世界大戦における敗戦国であることは、まぎれもない事実です。自虐史観でも何でもありません。ここの認識を忘れると国際社会においてとんでもない摩擦を引き起こします。戦後世界の覇者となったアメリカに対して、徹底した軍事・外交面での従属路線をとることで、大戦後の敗戦国から、冷戦における勝者(世界第2位の経済大国に上がった)になった。これが戦後の日本の姿でした。1989年に冷戦が終了し、昭和天皇が亡くなったことで戦後の日本の社会構造の一つのエポックとなった。そもそも国連の本質は「第2次世界大戦の戦勝国連合」であり、冷戦中はこの世界の構造はずっと維持されてきた。米英は第2次世界大戦中から戦後世界の構図を描いてきた。ポツダム宣言が「戦後日本」の原点なら、1941年8月14日の大西洋憲章は「戦後世界」の原点です。大西洋憲章(正式名は米英共同宣言)の内容をよく読むと、第2次世界大戦後世界の枠組みがほとんど全部書かれている。アメリカ合衆国フランクリン・ルーズベルトとイギリス王国首相ウィンストン・チャーチルの二人は、次のような共同声明に合意したに始まる大西洋憲章を次にまとめます。
① (英米は省略する)領土その他の拡大を求めない。
② 当事国の国民が自由に表明した希望と一致しない領土の変更は認めない。
③ すべての民族が、自国の政治体制を選択する権利を尊重する。強制的に奪われた主権と自治が、人々に返還されることを望む。
④ すべての国家が経済的繁栄のために必要な商取引と原料の確保について平等な条件で利用できるよう努力する。
⑤ 改善された労働条件、経済的進歩、社会保障をすべての人に確保するため、経済分野におけるすべての国家間の完全な協力が達成されることを希望する。
⑥ ナチスによる暴虐な独裁体制が最終的に破壊されたのちも、すべての民族が恐怖と欠乏から解放されてその生命を全うできるような平和が確立されることを望む。
⑦ このような平和は、すべての人が妨害を受けることなく、公海・外洋を航行できるものでなければならない。
⑧ 世界全ての国民が、現実的・精神的理由から、武力の使用を放棄するようにならなければならないことを信じる。もし陸海空の軍事力が自国の国外への侵略的脅威をあたえるか、または与える可能性のある国(日独)によって使われ続けるならば未来の平和は期待できない。そのため一層広く永久的な一般的安全保障制度(後の国連)が確立されるまで、そのような国の武装解除?不可欠であると信じる。

 この大西洋憲章の理念が後の国際聯合憲章となり、第2次世界大戦後の国際社会の基礎となりました。その流れの中で日本国憲法の前文にも使われています。1941年12月8日日本は事前通告なしに真珠湾を奇襲し、英米は日本に宣戦布告をしました。英米は連合軍を募り、1942年1月1日「連合軍共同宣言」を発して、26か国が署名し日独伊を敵とする第2次世界大戦がはじまりました。連合国共同宣言には、大西洋憲章の共同綱領に賛成し、
①日独伊三国条約締結国に対し、政府の軍事的または経済的な資源のすべてを使用することを誓う、
②各政府は、この宣言に署名した政府と協力すること、また敵国と単独で休戦または講和を行わないことを誓うという内容です。
枢軸国側の三国同盟が軍事的には何の連係プレーもできないままに終わったことを考えると、政治的には大人と子供のほどの違いがあったと言わざるを得ません。1944年8月から英・米・ソ連・中国の四か国の協議「ダンバートン・オークス会議」は後の国連憲章(1945年6月)よりももっと理想主義的s鬼才が強く「一般の加盟国に、独自に戦争をする権利を認めていなかった」という点で、日本国憲法により近い内容を持っていました。国連憲章に入った「個別的自衛権」や「集団的自衛権」という概念は、ダンバートン・オークス会議提案には存在しなかった。国連安全保障理事会だけが「世界政府」として軍事力の使用権を独占し、他の国はそれを持たないというダンバートン・オークス会議提案に遭った理想主義的構想が、後の日本国憲法9条第2項の大きな前提となっていた。1946年2月1日に五大国の参謀総長がロンドンで第1回国連総会中に集まり国連軍について具体的に検討を開始するまで、世界政府構想の核心である国連軍構想は、GHQが日本国憲法草案を書く2月の時点でまだ生きていたのです。

(つづく)


『本』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 読書ノート 矢部宏冶著 「... | トップ | 読書ノート 矢部宏冶著 「... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

書評」カテゴリの最新記事