ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 堤未果著 「(株)貧困大国アメリカ」 岩波新書 (2013年6月 )

2014年01月28日 | 書評
グローバル資本による寡占支配が生み出す、食産業・行政・マスコミの株式会社化 第4回

1) 独占アグリビジネスに支配される契約農家の悲劇 (1)

 第1章から第3章まではアメリカの食ビジネスの株式会社化が行き着く姿を描いている。第1章は独占アグリビジネスに支配される契約農家の借金漬けの姿である。この姿は日本でいえば地方の農家が大手不動産建託資本と契約して、自分の土地と借金でアパートを建てることに近い。不動産会社がアパート経営と管理を行うというシステム同じである。多くの企業が外国へ拠点を移した今日、地方にそれほどアパート需要がるとも思えないのに、働き手をなくして耕作を縮小している農家の余った土地に目をつけ、大手建託業者がアパートの建設業者から銀行まで紹介して農家にお客が入るかどうかのリスクや借金返済の負担を負わせるものである。近在のどこのアパートもがら空きである。本書では上位5本の指に入る大手養鶏加工会社サンダーソン社(年商100億円、従業員8300人、契約生産者600世帯)による契約養鶏者の募集から話が始まる。ある定年退職後の夫婦が申し込んだ養鶏事業は、初期投資として4棟で9000万円、ローンは農業事業者保証会社が間に入った。ほぼ建設が終わった頃契約書が送られてきた。飼育法のマニュアル(飼料など)に反する場合は契約を打ち切られるし、農家に契約不服申し立ての権利はなかった。1年目は300万円ほどの収入があったが、2年目から燃料費が高騰したが経費は契約農家持ちで卵1個の買い上げ金額は変わらなかったので、だんだん手取りが減少していった。3年目から年収入は100万円を切った。4年目に親会社は施設を新しくするか鶏舎を増やすかを要求してきた。生産効率が低下してきたからである。増設しなければ会社は契約を打ち切るという。こうして一度契約したら抜けられず雪だるま式に借金にからめとられてゆく。これを「デットラップ 借金の罠」というらしい。1950年ごろ養鶏場の95%は個人農家経営で地産地消が行われていた。1970年代から株式会社経営が急増した。今では4社が全米の養鶏の4割を支配し、生産者の98%が親会社の条件で働く契約農家になった。インテグレイターが鶏と飼料(抗生物質)の供給、運搬、と畜、加工、流通、ブランド所有を行う。契約者は鶏舎と労働力、糞尿処理、光熱費の維持経費を負担する。アメリカ中の農家が巨大な企業の下請け労働者となっている。1960年に農場数は4000、1農場の面積は300aだったのが、2000年には農場数2000に半減し、面積は500aに拡大した。つまり大規模農場でなければ生き残れなくなった。「最大限効率化された大規模農業こそが、世界を率いるアメリカの国力である」とピアス通商代表は述べた。レーガン大統領が独占禁止法を骨抜きにし、「強い農業、国際競争力」を掲げると農業の集中化(寡占化)はあっという間に進行した。1982年には養豚場数は49000、養豚場の平均出荷豚数470頭/年だったが、2007年には養豚場数は8700か所に減少し、平均出荷豚数は5000頭となった。低コスト、短期間生産という効率の良い工場式農業に変身したのである。豚や鶏はもはや生き物として扱われず、材料として追及された。家畜工場は動物保護法の適用から除外され、食品安全審査システムは食肉加工工程のみとして他の行程には徹底して規制緩和され、安全審査機関の予算は大幅に削減された。さらの2000年からはブッシュ大統領は家畜廃棄物被害の企業責任を免責した。動物保護団体の監視の目を工場内に入れないため、アメリカ州議会交流評議会ALECのロビー活動によって、反内部告発法を定めて、企業秘密漏えい罪を強化した。2013年オバマ大統領は養鶏場安全審査官を25%削減したので、安全検査技術向上と称して審査官の審査スピードを毎分175羽まで上げた。このスピードでは安全審査はほとんどギブアップ状態である。
(つづく)
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2 コメント

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読書ノート (林雄三)
2014-09-16 14:09:54
初めまして。興味深いブログなので読ませてもらいました。自分もこの本は買って読んでいましたが、ここまで詳細な内容をネットに公開してしまうのは問題ないのでしょうか?岩波に直接問い合わせた所、「著作権の問題もあり問題になっているが、インターネットに関してはまだグレーな部分が多いのをいいことに同様の行為が後を絶たず、法務部では困り果てている」との事でした。岩波の方もおっしゃっていましたが、一冊を書き上げるのに多大な時間とお金と労力をかけた著者の方と出版社に対して、私たち読者は本を購入するという形で対価を払います。ネット上では何をしてもよいというのは違うように思います。ご一考下されば幸いです。
読書ノート (ごまめ)
2014-09-16 16:55:18
この私の行為は読書ノートであって、筆者の意図を読解してゆく一里塚に過ぎません。私自身の見解も入れてあります。詳細かどうかは私の性格によるものであって、本文のデッドコピーではありません。私自身は筆者の言いたいことを確実に掴むことが目的です。他の人がこのノートを読んで本文を買いたくなるようになれば幸いです。大雑把な我田引水的な評論では失礼だと思いますので。

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