ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 矢部宏冶著 「日本はなぜ、基地と原発を止められないのか」 (集英社インターナショナル 2014年10月)

2017年07月08日 | 書評
憲法9条に外国軍基地撤去を謳うことから戦後を再スタートしよう 第5回

2) 福島の謎ー原発村 (その2)

 砂川裁判で最高裁が「憲法判断をしない」としたのは安保条約そのものを対象としたのではなく、「安保条約のような我国の存立の基礎になっている重大な関係を持つ高度な政治性を有する問題」という曖昧なかつ無限大拡大が可能な根拠でした。「国家レベルの安全保障」については最高裁が憲法判断をしないことが確定したわけです。問題は2012年6月に改正された「原子力基本法」第2条第2項に「原子力の安全の確保については、我国苧安全保障に資することを目的として行うものとする」といった文言が挿入されていました。国会では議論にもならなったようですが、実は恐ろしい企てが官僚の手によってなされていました。この条文によって今後、原発に関する安全性の問題は、安全保障に移して法のコントロール外に置くことになります。この考えは1978年の「伊方原発訴訟」で柏木裁判長は「原子炉の設置は国の高度の政策的判断に関連するので、原子炉の設置許可は国の裁量行為である」と述べています。またその裁判の1992年最高裁判決で小野裁判長は「原子力員会の科学的・専門的知見を基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的判断にゆだねる」と述べました。こうした裁判所の判決に圧力をかけているのは最高裁事務総局であることが、新藤宗幸著 「司法官僚ー裁判所の権力者たち」(岩波新書 2009年)で指摘されています。官僚たちがその裁量権をフルに使えば、「我国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ」と考える問題については、自由に法のコントロールの外におくことができる法的構造が生まれつつある。首相が大統領を超える非常大権を持つようにすると、ヒトラーの「全権委任法」が生まれてくる。現実の海や空に放射欧汚染が進行し、多くの国民が被曝し続けている中での原発再稼働という狂気の政策なのです。現在の日本の現状がナチスより恐ろしいのは、法律どころか官僚が作った政令や省令でさえ憲法を無視できる状況になっていることです。大気汚染防止法、土壌汚染対策法、水質汚濁防止法の環境法では、放射性物質はその適用外になっています。環境基本法では放射性物質による汚染防止の基準は「原子力基本法その他の関係法で定める」第13条と匙を投げています。そして実は国は何も定めていないのです。適用される法律がないことを環境省は「当方としては違法性はない」と割り切っています。2012年6月の「原子力基本法」の改正では第13条は丸ごと削除になっています。放射性物質環境基準を決めろという世論の圧力から逃げるためです。第13条が削除されると基準作成の責任は政府になりますが、今もなお何も決められていません。放射線汚染に対しては日本は無法地帯なのです。どこが科学立国なんでしょう。そのウソには空恐ろしくなります。そして「日米原子力協定」という協定が「日米地位協定」と同じ法的構造を持つことが判明しました。日本側だけでは何も決められないのです。アメリカの了解なしに決められることは電気料金だけです。日米原子力協定は「日米政府は、どちらかが協定を停止したり、終了したり、核物質の変換を要求する行動をとる前に、是正措置を協議しなければならない。その行動の経済的影響を慎重にけんとうしなければならない」と規定しており、アメリカの了承なしには絶対にやめられない義務があります。また「その終了の後において、第14条までの規定第10条と第2条の一部を除いて引き続き効力をゆする」なんとほとんど全部の条項は止めることはできないことです。こんな条約は世界中のどこにあるのでしょうか。正規の協定以外にも多くの密約が存在するでしょう。2012年9月当時の野田内閣は「2030年までに原発の稼働をゼロにする」という閣議決定をしようとしたところ、外務省が米国国家安全保障会議とエネルギー省の高官と会談し、米国はこの内閣の方針に「強い懸念」を表明し、その結果閣議決定は見送られました。これは鳩山内閣の辺野古移転問題問題と全く同じ構造です。日本の内閣は方針を決めてもアメリカの反対で簡単に潰されるのです。日米原子力協定が日本国憲法の上位に在って日本政府の行動を許可する権限を持っているのは米国とそのエージェンシーである外務省なのです。この現実に日本人は答えなければなりません。
①原発を推進し人類最悪の事故を起こした自民党の責任を問わず、2012年の選挙で大勝させた日本人の責任
②子供の健康被害に怯えながら避難を続けているにもかかわらず、福島県も含めて原発再稼働を許すのか
③ナチスの民衆を屈服させるテクニックに酔いしれた安倍内閣に真正面からなぜ戦わないのか。

(つづく)


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