ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 大畑末吉訳 「アンデルセン童話集」 岩波文庫

2013年07月12日 | 書評
デンマークの童話の父が語る創作童話集 156話 第62回

136) 木の精ドリアーデ
 1867年パリ万国博覧会のお話です。命と引き換えにしてまで都会にあこがれる木の精ドリアーデの夢と破滅を描いていますが、ちょっと複雑な心境です。近代文明の都パリの栄光と賑わいに夢中になっていいのか、それとも田舎暮らしがいいのかよくわからないからです。田舎からマロニエの木がパリの公園に移植されました。マロニエの木には木の精ドリアーデが住んでいました。田舎にいるときは大きな樫の木のそばに立っていました。樫の木の下では年取った神父さんがこどもたちにいろいろなお話を聞かせていましたが、ドリアーデも隣で聞いていて人の話が分かりました。フランスの地理や歴史のお話を聞いて、ドリアーデはパリの近代都市文明にあこがれました。話を聞いていた女の子マリーもパリにあこがれましたが、神父さんは、「あんなとこへ行ってはいけない。お前の身を亡ぼすよ」といいました。そのころパリの練兵場敷地に、芸樹と工業の新しい世界の奇跡が咲き出でたのです。「パリ万国博覧会」に木の精ドリアーデと女の子マリーは夢中になりました。木の精にとって、パリの地に根を下ろすと、命は短くなるという宿命がありました。そこで欲望はもっと強くなり、木の精を飛び出して人間に交わると命はカゲロウのように一夜に縮まるのです。田舎にあったマロニエの木はパリに移植されることになりました。ドリアーデはパリの喧噪に酔い、人間の列に加わりたいと熱望するようになりました。自分の命と引き換えに、ほんの短い間でも女の姿をして生きたいと思ったのです。ドリアーデはパリの大聖堂や下水道、街明りとダンス、娯楽場の華やかさ、博覧会場の世界館などのパリの栄光と文明を満喫しますが、命は露のはじけるように亡くなりました。パリに行った女の子マリーも、いまでは派手ななりをしていますが、踊り子としてカンカン娘になっていました。人の命を飲み込むの、それが都会なのです。

137) にわとりばあさんグレーテの一家
 昔貴族のグルッペという騎士がいた館は今では領主の館と呼ばれ、そこに住むニワトリやアヒルの世話をするニワトリばあさんグレーテの一家のお話です。お話は昔にいた騎士グルッペの娘マリーのことから始まります。騎士グルッペの娘マリーはお父さんと一緒に小さい時から狩り遊びをし、女の子らしいしつけのない、傲慢な娘に育ちました。近くにいる百姓の息子セレンを家来と呼び、鳥の巣を荒らしたりして遊ぶというわがままな女の子でした。マリーが12歳のころグルッペ夫人が亡くなり、館の庭は荒れ放題になりました。マリーが17歳になった時、国王の腹違いの弟の領主フレデリック・ギュルレンレーヴがマレーに結婚を申し込みました。マリーはこの人を好きではなかったのですが、拒み切れずコペンハーゲンへ嫁入りいましたが、侍女と一緒にすぐ里に出戻ってきました。里帰りして1年経ったとき、父グルッペはいうことを何としても聞かない娘マリーを館から追い出し、娘と侍女を一族の昔の館に移しました。その昔の館というのが今のニワトリばあさんグレーテのいる館です。マリーは鉄砲を持っても森に狩りに出かけ、ネレベックの領主で大男のパルレ・ヂューレに出合って結婚しました。彼との生活にも嫌気がさしたマリーは、館を逃れ馬に乗ってドイツ国境までやってきました。指輪や宝石を売って飢えをしのいだのですが、次第に衰弱して気を失って倒れているところを、船乗りの荒くれ男に救助され、船に乗せられました。何年か過ぎ、学生がペストの流行を避けるためコペンハーゲンを逃れ、ファルスダー島の渡しにつきました。渡し守のセレン・メラーのおかみさんというのがマリーのなれの果てでした。気性の激しい亭主はふとしたことで人をあやめ、3年間造船場で強制労働をしています。この亭主は今でいうDVで、妻に暴力を振るいましたが、おかみさんは「いっそ小さいころに打たれたら効き目があったでしょうが、今は私の犯した罪のために打たれているのです」と、暴力に甘んじています。このマリー・グルッペは1716年に亡くなりました。全く身寄りがなかったわけではなく、マリーの孫がニワトリばあさんグレーテだったのです。運命の巡り会わせは不思議なものですね。そしてわがままに育てられた傲慢な性格はいつかは身を亡ぼすので、若い時に矯正しなければダメということです。

(つづく)
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1 コメント

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Unknown (ヘイ)
2014-08-31 12:06:02
はじめまして。この項目で紹介されている2編は私もとても好きな話です。日本のアニメ界はこういうのをアニメ化してみては?と思います

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