ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート ニュートン著 鳥尾永康訳 「光学」 (岩波文庫)

2016年11月07日 | 書評
太陽の白色光が屈折率を異にする色光の複合であることを発見した「ニュートンの光学」の集大成 第5回

3) 電子との相互作用(その1)

本章は光と電子の相互作用について述べるものであるが、最初からこのQEDは重力と原子核に働く力については論外であることを宣言している。前章で述べた事象を再度定義しなおすことから始まる。事象としては前章と重複する。できることはある事象が起きる確率を計算することである。前章で述べた反射の確率(直角に入射するときの反射率は4%であるが、斜めに入射するにつれ反射率は増加する)の考え方は、電子との相互作用でも通用する。これを「合成のルール」と呼びます。 ①事象がいろいろな経路を経て起こりうる場合には、その一つ一つの経路について出した確率を加える。 ②いくつかのステップにわたって起こる一連の事象の場合や、独立していくつものことが付随して起る事象の場合は、そのステップ(付随的な事柄)の一つ一つについて出した確率を乗じる。 QEDに成功の秘密は、確率を1本の矢印(最終矢印)の長さの自乗として計算することであった。矢印の長さが確率につながり、確率を乗じることを「矢印」を乗じるのである。矢印の角度をどう計算するかは本書には書いてないが、平面上の矢印は、頭と尻をつないでゆく行くことで「加える」ことができ、短縮と回転を続けてゆくことで「乗じる」ことができる。この矢印は大きさを持ち、代数の法則(A×B=B×A、A+B=B+Aなど)に従うことにより数学的には「数」とみなせる。大きさと方向を持つことから「複素数」と呼ぶことができ、「事象の確率は複素数の絶対値の自乗」である。つまり確率とは複素数の代数法則のことである。前章で論じた光学現象を光子と物質の電子の相互作用という観点で前章の結果を深めてゆこう。まず光子の性質のひとつ「干渉」について見ておこう。

干渉: 本論に入る前に、光の振る舞いのひとつ「干渉」という事象を考えてみよう。非常に弱い単色光が一度に一個光源Aより発射され、穴の開いたスクリーンの反対側の検出器Dに達する場合です。(A-Dの距離が1mなら穴の径は0.1mm程度、光子は1%の確率で穴を通過する) こうしてBの穴をふさいでも、反対にAの穴をふさいでも検出器はカチカチと音を立てます。すなわち光は直進するという考えは成り立たないのです。両方の穴を開放して測定すると、音を出す回数が予想されるより0-4%増加する場合もありますが、穴の間隔によっては音が出なくなります。両方の穴を開放した場合の干渉とは2つの振幅(確率)を加えることです。どちらの穴を光が通るかという問題ではないのです。ところがAとBに信頼できる検出器を置くと、干渉は全く観測出ません。これは観測系でしか現象を判断できないためによるものです。下の図の右に検出器Dの干渉を示す。両方の穴を開放した場合の光の量は0-4%の振幅を持つ(a)、AとBに信頼できる検出器を置くと干渉は消え振幅は2%一定(1%+1%)である。検出器の感度によってc,dのケースとなる。こうして振幅(最終矢印)の自乗を計算するということが干渉の確率を与えるということである。

粒子の量子力学的行動:3つの作用: 電子は1895年に粒子として発見された。1個の電子のマイナス電荷も測定され、電子の移動が電流であることもわかりました。1924年ルイ・ド・ブローイが電子に波の属性を発見し、X線と同様な波長をもつことが分かりました。前節「干渉」で、光の量が少なくなると光の直進説は破れ、干渉が現れることが分かりました。このことは電子についてもいえ、大きな空間(マクロ)では粒子として振る舞えるが、原子のような小さい規模(ミクロ)では空間が小さいため電子はいろいろな振幅(確率)でいろいろな方向へ動くようになり干渉という現象も重要になってきます。光子も電子も波のようにも、粒子のようにも振る舞うのです。光子・電子のみならず原子核の素粒子など自然界の存在する粒子はかならずこの量子力学的行動をとります。そこで光と電子に関するすべての現象の基になる3つの基本作用を次に示す。
① 光子がある場所から他の場所へと移動する。その振幅をP(A→B)とする  Pとはphotonのこと
② 電子がある場所から他の場所へと移動する。その振幅をE(A→B)とする Eとはelectronのこと
③ 電子が光子を吸収あるいは放出する。
①と②について、この作用は時間と空間という場(時空)において考えるのであるが、今は簡単に空間は一次元にしておき、横軸に空間(X軸)を、縦軸に時間軸とする。光が進むということはA(X1,T1)→B(X2,T2)と表し、(T2-T1)の間に(X2-X1)だけ移動することです。この振幅の大きさをP(A→B)と呼びます。アインシュタインは光が1メートル進むに要する時間を時間の単位とせず秒という時計を単位としたため、光速cという定数をやたら多く書かなければならなくなった。(どうもファイマン氏はアインシュタインをあまり良く評価しない。相対性理論はニュートン力学のごく小さな修正であるという) アインシュタインの相対性理論は4次元の距離I=(3次元空間の移動距離の自乗-移動時間の自乗)だけに依存すると教えてくれる。下図の右図に示すように、P(A→B)の最終矢印の長さに主として寄与するのはI=0の時(光の速度c)であり、I>0またはI<0は互いに相殺しあう場合が多い。光が光速に等しい速度で進むとき、振幅は最も大きく、光が通常の光速より早く進むとか遅く進む場合の振幅も存在する。光は直進する場合だけでなく、光速だけで進む場合だけではない。電子の移動の振幅はE(A→B)で表す。電子の移動する経路が直線的にA→Bと進む場合には、E(A→B)はP(A→B)と全く同じ式になる。ところが電子がさまざまな経路をたどってB点に行く時、経路のステップごとに振幅を加算する。2段階ならE(A→B)=P(A→B)+P(A→C)×n2×P(C→B)となる「n」という数をファイマン氏が導入した。

(つづく)

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