ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 山岡耕春著 「南海トラフ地震」 (岩波新書2016年1月)

2017年03月20日 | 書評
M8-9規模の南海トラフを震源域とする巨大地震をどう予測し、何が起きるか、どう備えるかを考える  第6回

2) 最大クラスの地震とは (その1)

南海トラフで発生する巨大地震は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とどのように違うのだろうか。南海地震はフィリッピン海プレートが沈み込む場所南海トラフ付近に震源域を持ち、太平洋東北地方は太平洋プレートが沈みこむ日本海溝付近に震源域を持つ地震である。プレートの年齢も暑さも自然条件もさらに社会条件も違いができる。地震発生様式えは、一言で言うと複雑さがまるで異なる。東北地方のプレート域では普段から地震活動が活発である。3.11の余震活動が非常に活発であり、その前からも多くの地震が発生していた。一方南海トラフ沿いでは普段の地震活動は穏やかである。南海トラフ沿いと日本海溝沿いの1930年以降におけるマグニチュード8以上の巨大地震発生頻度は南海トラフ沿いでは2回、日本海溝沿いでは3回とそれほど変わらないが、それより小さな地震の頻度圧倒的に日本海溝沿いの方が多い。日本海溝沿いの東北地方の地震の発生様式を見てゆこう。マグニチュード7.5前後の地震では東北地方三陸沖北部では、1968年5月十勝沖地震、1994年12月三陸はるか沖地震、マグニチュード7の地震は東北地方で8回も起きている。三陸沖中部では1896年に明治三陸地震、1933年に昭和三陸地震(M8.1)は沈みこむまえのプレートで発生したいわゆる「アウターライズの地震」であった。三陸沖南部から宮城県沖ではマグニチュード7.5から8クラスの地震が数十年おきに発生している。福島県沖では比較的地震活動は低調で、1937年のM7の地震だけである。茨城県沖ではマグニチュード7前後の地震が頻発して発生している。1943年、1961年、1965年、1982年、2006年の地震発生があった。2011年3月11日にこれらのすべてが震源域となった。つぎに南海トラフ地震の発生様式を見てゆこう。南海トラフ沿いでは普段の地震活動は低調であるが、100年から150年ごとにマグニチュード8クラスの巨大地震が発生している。1945年以降ではマグニチュード7クラスの地震は3つしかない。1948年、2004年に三重県沖で2回(M7.1M7.4)の地震発生である。この地震はプレート境界ではなくトラフ軸のプレート内部で発生した地震であった。南海トラフ沿いで地震が発生してもプレート境界面で発生するものは少ない。その理由はプレート境界の固着力が強く摩擦力に打ち勝っているからであるとされている。しかしずれるときには一気に巨大地震に成長してしまう。日本海溝東北地方と南海トラフ沿いの地域の自然条件によって、地震の揺れや津波被害が異なる。地震による揺れ(震度)の強さは主に二つの条件できまる。人遊は震源域との距離、二つは地盤などの地質構造である。3.11東北地方太平洋沖地震の震源域は南北500Km、東西200Kmの長方形であった。震源域の東側はプレートが沈みこむ日本海溝が限界になっている。西側は地殻温度が高くなってずれを起しにくくなる深さが限界となり深さは約50Kmであり、太平洋側の海岸線付近である。岩手県から茨城県にかけての500Kmで震度6強を記録した。南海トラフで発生する地震は伊豆半島から四国沖を通って日向灘までである。震源域は最大長さで700km、トラフ軸の直角方向に幅は100Kmである。限界は海側(南側)のトラフ軸まで、陸側は深さ30Kmとされている。東北地方に較べて浅いのはプレート年齢が若いためである。深さ30Kmはすでに陸の下にある。つまり陸地と震源域との距離は、南海トラフの方が東北地方よりも近い。その分だけ地震の揺れが強くなる。津波についても揺れと同様に震源域と陸地との距離が重要なポイントである。3.11東北太平洋地震では震源地が陸地から離れていたため、津波が届くのに時間がかかった。一番早かったのは岩手県釜石で30分後、福島県相馬では50分かかった。南海トラフ地震では時間的余裕はない。最短距離で3分、他の地域では20分後には津波が到着する。社会的条件の最大要素とは人口と産業の規模である。青森県・岩手県・宮城県・茨城県の人口の合計は約980万人である。一方南海トラフ地震で津波被害を受ける県としては、静岡県から鹿児島県までその人口は約3500万人である。産業規模は先の東北域4県のGDPは34兆円、南海トラフ域のGDPは136兆円である。南海トラフ巨大地震はいわゆる太平洋ベルト地帯と呼ばれる東西交通の要と大都市を地震と津波が直撃すると、政治的社会的な影響は甚大である。

(つづく)
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