ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 白井 聡著 「戦後の墓碑銘」 (金曜日 2015年10月)

2017年03月07日 | 書評
永続敗戦レジームのなかで対米従属路線と右傾化を強行する安倍政権の終末 第8回

1) 「戦後の墓銘碑」 2014年2月から2015年7月までの出来事 (その6)

⑯ 本来の敵を見定め真っすぐに憤る生業訴訟
2015年5月半ば著者は「生業を返せ、地域を返せ」福島原発訴訟の口頭弁論のために福島県を訪問した。浪江、双葉町など帰宅困難区域を視察したそうである。この訴訟の特徴は、政府と東電に責任の所在を明確して、謝罪させることにあるという。賠償請求の前に原状復帰がなければならないという論理である。だから原子力損害賠償法ではなく普通の民法が選ばれた。2014年6月廃棄物中間貯蔵施設建設を巡って、石原伸晃環境大臣は「最後は金目でしょう」と言って物議をかもした。政府の原発行政の原則は従来通りのままであった。札束で相手の頬をたたく路線である。この屈辱に対して、本来の敵を見定め、真っすぐに憤り、「侮辱の中で生きる」ことを断固として拒否する人が確かに存在している。四大公害訴訟では政府と企業は最終的には責任を認めざるを得なかった。しかし原発訴訟はいつも敗訴であった事実を認識し、敵の砦原発に向かう訴訟は始まったばかりである。

⑰ 卑屈・矮小な為政者への我慢を止められるか
2014年7月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定、そして2015年9月19 日 安全保障関連法が参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決され、成立した。国民の反対の声には一切耳を傾けず、全く内容の無い質疑応答に終始したうえ強行採決された。国会参考人3人が新安保法制を違憲と断じたにもかかわらず、立憲主義も無視して権力はブルドーザーのように反対意見を踏み倒した。どうしいてこんな暴挙が可能かというと、日本国憲法という最高法規がある中、日米間の無数の密約の非公然(裏)の法体系が存在するためである。アメリカの言うことを守るためには、憲法などどうでもいいという構造を赤裸々に露呈した。ほとんど日本はアメリカの州のひとつになったようである。日本国憲法と停止あるいは冬眠させたようだ。世界中にアメリカの傀儡政権は多く存在し、対米従属政権も数多いが、日本の対米従属の異様な様相は、この従属が温情主義のパートナーシップの夢想によって隠そうとする点にある。このなんという情緒的な夢の中に居るように国民に偽装しているのである。ネオコンのアーミテージは2013年に「私は米国の国益に沿って、日米同盟の仕事をやってきた」といった。米軍駐留基地への「思いやり予算」などは笑ってしまうような甘いオブラートで包まれているではないか。日本の対米従属の特殊性が戦後の国体になっている。それが冷戦の終了後もかえって強化されてきた。安倍首相の米国に対する約束は「朝貢外交」そのものであった。金銭面のみならず、軍隊までどうぞお使いください、殺されても文句は言いませんというイデオロギー面での完全屈服であった。

(つづく)
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