ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 白井 聡著 「戦後の墓碑銘」 (金曜日 2015年10月)

2017年03月06日 | 書評
永続敗戦レジームのなかで対米従属路線と右傾化を強行する安倍政権の終末  第7回

1) 「戦後の墓銘碑」 2014年2月から2015年7月までの出来事 (その5)

⑬ 桑田圭祐氏とともに闘う手段を見つけ出す
2014年大晦日の「紅白歌合戦」においてサザンオールスターズ桑田佳祐氏が「ピースとハイライト」という歌で政権批判を行って、大騒動になった。これにネトウヨ(ネット上の右翼)が「反日」だと言ってアミューズ事務所前で30人のデモをかけた事件が起きた。2015年1月15日桑田氏が反省と謝罪の声明を出し一件落着した。桑田氏にとってこれが初めてのゲリラ的パフォーマンスではなく、2010年桑田氏が食道がんを患っていらい、彼は被災地支援に尽力する中で時の政権に批判的なスタンスを明確に出してきた。桑田氏の音楽は「社会派」なのである。社会派のシングソングライターは多数いる。1996年沖縄米兵少女暴行事件を契機とした「平和の琉歌」、2002年対米従属政権を痛烈に批判した「ロックンロールヒーロ」などに見られる彼の批判精神は継続していた。皮肉では伝わらない国民の文芸的リテラシーの低下によって、彼の言葉がより直接的になっただけのことである。

⑭ 70年談話が出現させうる「敗者なき光景」
2015年3月21日ドイツのメルケル首相が来日し講演した中で、「過去に目を閉ざす者は、現在に対しても盲目である」といった。歴史修正主義者の安倍首相には耳の痛い話であった。さらに3月21日に行われた日中韓外相会議の共同声明にも「歴史を直視し、未来に向かう」の文言が盛り込まれた。こうして安倍首相の歴史修正主義(日本は侵略していない)は国際的な包囲網で監視されている。戦後70年記念安倍談話作成の諮問会議の有識者会議座長代理の北岡伸一(国際大学学長)は3月9日「私は安倍首相に日本が侵略したといってほしい」と発言した。大東亜協栄論の日本がアジアの解放のために闘ったという論は徹底的に間違っている。日本は、英米蘭仏の植民地をかすめ取り、日本の植民地にしたかっただけの事である。首相の歴史認識はほとんどネトウヨレベルで誰の理解も得られていない。もし70年談話が安倍の歴史修正主義的主張が露骨に現れたら、国際的な壊滅的悪影響は避けられなかったが、これらの包囲網にかろうじて避けられた(ただし安倍自身の言葉での謝罪はなかった。歴代政府見解で解決済みと他人事のように言っただけ)。それに代わって強調されたのが「積極的平和主義」であったとは、安倍首相も懲りない奴だ。

⑮ 戦後清算のために原爆投下の意味を考え直す
2015年4月10日に、クリミア半島併合の際にロシアが核兵器を用意したというデマとも謀略ともわからない情報が世界を流れ、広島と長崎の両市長がロシアに抗議したことにたいするロシアの見解が発表された。「ロシアはNPT体制の擁護者であり核兵器のない世界を目指している。米国のミサイル防衛システムの脅威に対してロシアが国際社会の注意を喚起していたことを日本は見落としている。先の大戦で3000万人が犠牲になったロシアはどれほど平和が大事かを熟知している。広島・長崎に原爆を落とした国はアメリカです。」という内容だった。ロシアに抗議することは被曝の経験という抗弁困難な錦の御旗によって米国の破壊的核戦略に協力するものとして機能することを見抜いていた。日本は100%米国の核の傘の下にいて、核兵器を嫌悪すると言いながら米国の核戦略を支持してきたではないかというロシアの指摘は的を得たものだった。3月初旬米国のABC放送は「2009年11月オバマ大統領訪日時に、米側が広島を訪問し原爆投下を謝罪することを打診したが、日本の外務省薮中事務次官はこの提案を時期尚早として断った」とニュースで報じた。米国の広島・長崎原爆投下に際して当時の米内海相はこの事態を「天祐」と叫んだという。次元を超えた兵器によるによる攻撃は日本を犠牲者にして、国体を維持したまま敗戦受諾を可能にすると読んだのである。「原爆を落としてくれてありがとう」という権力勢力を戦後ずっと日本人は支持してきた。この国民の愚かさ、哀れさはやはり情報を知る能力に格差がありすぎることからきている。都合の悪い真実は権力側は徹底して隠匿するのである。

(つづく)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加