ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート D・ヒルベルト著 中村幸四郎訳 「幾何学基礎論」 ちくま学芸文庫

2015年10月29日 | 書評
20世紀現代数学の夜明けを告げる公理論主義の記念碑的著書 第6回

第4章 平面における面積の理論

この章も前の比例の章と同じ公理(Ⅰ1-3,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ)で、前章の線分算を用いたパスカルの定理を採用する。任意の多角形を分割し、二つの多角形が有限個の三角形に分かたれ、対応する2つづつの三角形が合同な時、分解等積と呼び、元の多角形P,Qに分解等積であるP',P"・・・、Q7,Q"・・・を付加してΣPとΣQが等しくなるとき、これを補充等積と呼ぶ。定理44-46の等積性は容易に証明できる。
定理44: 同底、同高の平行四辺形は互いに補充等積である。
定理45: 任意の三角形は同底、高さが半分なる平行四辺形と分解等積である。
定理46: 同底、同高の三角形は互いの補充等積である。
しかしこれだけでは面積測度はできない。任意の三角形の頂点(A,B,C)から対辺(a,b,c)に降ろした垂線(ha,hb,hc)が作る分割三角形(直角三角形の対応内角がすべて等しい)の相似性から、比例関係a:hb=b:haが得られ、a・ha=b・hbすなわち底辺と高さの積はどの辺においても同じである。正の回転方向(線分ABの右側)を持つ三角形ABCの面積測度[ABC]に関する定理が得られる。
定理49: 三角形ABCの外に点Oを取るとき、三角形の面積測度[ABC]=[OAB]+[OBC]+[OCA]
こうして補充等積なる多角形は同一の面積測度を有する。ガウスは体積の理論は平面面積論のようにはゆかないことに注意を促している。私にはこの面積理論は少しばかり不満足である。多角形を分解して三角形に分割し2つの多角形は等積性であるということが証明できても面積を求められるかどうかは分からない。

(つづく)