ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 豊下楢彦著 「集団的自衛権とは何か」(岩波新書2007年7月)

2014年05月16日 | 書評
集団的自衛権という日米安全保障体制の強化は、さらに日本を危険な道に誘い込む 第9回

第3章 政府解釈の形成と限界 (2)
 2000年10月アーミテージやナイをはじめとする米国の「知日派グループ」は、特別報告を発表し「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟関係を制限している。この制約が取り除かれならさらに効果的な安保協力が可能となる」といった、内政干渉的要請を発した。2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件は日米関係に重大な影響を与えた。小泉政権は10月に「テロ対策特別措置法」を提出し、イージス艦のインド洋派遣を根拠づけた。「武力行使はしない、戦闘行為には参加しない、戦場となっていないところで支援活動を行う」といった論理でテロ戦争に大きく踏み込んでいった。さらに2002年4月「武力攻撃予測事態法」案をまとめた。具体的な「日本有事」から「武力攻撃予測事態法」は予想される事態を想定して、総理大臣は自衛隊の出動を命じることができ、さらに地方自治体や民間には協力することを義務とするという内容である。アフガニスタン戦争でアルカイダ壊滅ができない状態で、ブッシュ政権は2003年3月からイラク戦争を始めた。小泉政権は直ちに協力を約し、「イラク特別措置法」を提出した。自衛隊の活動は非戦闘地域に限るが、米軍の養成があれば外国へ踏み込むことができるのである。こうして自衛隊は2004年1月から非戦闘地域とされるサマワに派遣された。イラク特別措置法はあくまで復興支援の活動が目的であって、武力行使と一体化しない措置が前提となっているので、州っ男的自衛権の中核には踏み込んでいない。イラク戦争は世界的な規模で「海外駐在米軍の再編」と密接に関係している。日本の米軍基地と自衛隊司令部との一体化が図られた。自衛隊は米軍基地の統括下に入った模様である。「軍事的一体化」は「国家戦略それ自体の一体化」につながっている。日本は完全に米軍の命令下に組み込まれているのである。2005年2月日米両国の外交・防衛責任者によって共同声明が発せられた。「共通の戦略目標を追求するため緊密に協力する必要性」が確認され、「共通戦略目標」が設定された。これに基づき「部隊戦術レベルから国家戦略レベルに至るまで情報共有および情報協力をあらゆる範囲で向上させる」とされた。米軍再編成は2004年になって本格化したが、自衛隊の軍事的約賄強化を求める米国に対して、福田官房長官は難色を示し、細田官房長官と川口外相と石破防衛庁長官の3人は「申し入れ書」をまとめて米国に提出した。米国の国家戦略に巻き込まれる危険性と米軍再編成が国民の理解が得られない場合もあることを懸念したものである。2004年12月には防衛計画大綱が閣議決定された。それを乗り越えた形で2005年2月には日米の共同声明に至った。こうして米国の世界戦略に巻き込まれる危険性を孕みながら、日米軍事関係の再編成が進行しつつある。アーミテージは「憲法9条が日米同盟関係の妨げになっている」と言明した。とんだ内政干渉だが、集団的自衛権の課題は国家戦略の一体化のなかで実現一歩手前まできている。そのアーミテージの代理人となっているのが安倍首相である。
(つづく)