ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

文芸散歩 徳善義和著 「マルティン・ルター」 岩波新書

2012年10月08日 | 書評
キリスト教会の一元支配を改革し欧州の中世を終らせたマルティン・ルター 第2回

序(2)
 マルティン・ルター(1483-1546年)の活躍した16世紀前半とはどんな時代であったのか。日本では室町幕府の権威がなくなり、諸侯が入り乱れて覇を競う戦国時代に入った。封建諸侯の領土争いの中で自由商業都市や一向宗の自治都市が割拠し、ある意味では近代化への息吹きに満ちた活気ある下克上の世界であった。織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の天下統一へ向かって諸侯盟約がなったが、本質的には諸侯分割支配の封建時代で、国王の支配する官僚体制の近代国家(絶対王朝)ではない。欧州ではルネサンスと宗教改革の嵐により中世的な世界観にかわり、近世的な新しい世界観が生まれた。また、これまで天動説の体系が長らく信じられてきたが、ニコラウス・コペルニクスにより地動説が発表された。当初はなかなか支持を得られず、明確に賛同する天文学者もヨハネス・ケプラーやガリレオ・ガリレイの登場まで現れなかった。ポルトガル・スペインそしてイギリスの大航海時代における「冒険の時代」から「征服の時代」へと移行した。16世紀前半の主な出来事を年譜にすると(日本では室町ー戦国時代前半)、

1511年 ポルトガルがマラッカを占領する
1517年  マルティン・ルターの「95ヶ条の論題」(宗教改革の発端)。
1521年 マゼランが太平洋経由でフィリピンへ到達し世界一周を成し遂げる。
1524年  ルターの宗教改革がドイツを混乱させ、農民戦争を起こした。
1529年  神聖ローマ帝国の首都ウイーンがオスマン帝国に包囲される(第一次ウィーン包囲)。
1533年 インカ帝国、フランシスコ・ピサロにより征服される。
1534年  教皇クレメンス7世がイングランド王ヘンリー8世を破門。イギリス国教会がカトリック教会から分離。
1536年 ジャン・カルヴァンの宗教改革。
1543年  日本へ鉄砲伝来。 ニコラウス・コペルニクスが地動説(太陽中心説)を発表。
1544年   ルター訳聖書(新約聖書・旧約聖書全巻)の刊行。
1555年  アウクスブルクの和議。ルター派信仰認められる。
(つづく)

読書ノート 徳田雄洋著 「震災と情報」 岩波新書

2012年10月08日 | 書評
震災で情報はどう伝えられたか、情報空白から身を守るために 第10回

4)最初の1ヶ月ーどんな説明がなされたか (3)
原子力災害支援システムは200億円以上をかけて開発された、緊急時対策支援システムERSSで放射性物質の放出量を予測し、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムSPEEDIが放出量を初期値として、気象データに基づき核酸予測を行なう。しかし実際にはこのシステムによって住民はどの方向へ逃げたらいいのかという情報はついに提供されなかった。同様な拡散シュミレーションはオーストリアのZAMGが3月12日から発表しており、ノルウエー、ドイツ、フランスも福島原発からの放射性物質拡散シュミレーションを世界に向けて3月19日から発表している。丁寧にも日本語版も流していた。御用学者の判でおしたような「安全」のご神託を聞くより、なかなか出てこない政府発表を待つより、海外の速報を見る方が合理的な情報が得られたようだ。これぐらい大規模な事故となるといくら政府が隠そうと、世界中の機構が衛星を使って、航空機を飛ばして、船舶で福島沖まで出かけて測定し、解析し、汚染状況を予測しインターネットで刻時公表する世の中である。こちらに調べようとする意思があるかぎり、政府は隠せない事を悟るべきである。まして外国政府に公開しないように要請するとか、海外機関のロボットや原子力工学者の援助を拒むということは世界に恥じをさらすようなものだ。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「秋夜聞雁」

2012年10月08日 | 漢詩・自由詩
孤雁一聲愁殺人     孤雁一聲 人を愁殺し

秋宵蕭瑟酒行頻     秋宵蕭瑟 酒行頻なり

西窓庭樹黄昏迫     西窓の庭樹に 黄昏迫り
 
東際氷輪白髪新     東際に氷輪 白髪新なり


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(韻:十一真 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)