ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

東日本大震災と医療問題: 原発作業員の幹細胞採取は本当に必要ないのか

2011年04月10日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年4月7日) 「原発作業員の幹細胞採取は本当に必要ないのか」 谷口修一 虎ノ門病院血液科より

 原発復旧最前線で働く作業員の事前の幹細胞採取を提言したが、原子力安全委員会は「現時点で必要ない」という解答であった。原子力安全委員会は造血機能障害や生殖機能破壊の心配をどういう風に考えているのだろうか。彼らは医学上の検討をしたのだろうか、それとも緊急時の行政上の判断を優先させたに過ぎないのだろうか。原発作業員に対しては、4月1日現在で今から医療隊を送る事を検討しているらしい。線量計もつけず過去の累積被ばく線量も把握せず、白血球数も事前にチェックしていないで作業させているとすれば、人命軽視も甚だしいといわざるを得ない。幹細胞採取のメリットデメリットは明確にメリットの方が高い。現場作業員には現場の作業の危険度と幹細胞採取の情報がすべて正確に提供された上で、作業員自身の判断を待つべきである。また企業者はその判断をサポートする情報提供を行なわなければならない。虎ノ門病院では倫理審査を受けた説明文書と実施計画書を事業体(東電、防衛省、警察、消防庁、作業事業所)に提供する用意がある。

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4月10日午前8時 茨城県空間線量率データ(茨城県放射線テレメータより)
http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html
測定局    NaI線量率nGy/h   風向    風速m/s
日立市大沼     297       北東    3.9
東海村石神     220       東北東   3.7
水戸市吉沢     125       東北東   3.4
鉾田市徳宿     173       東北東   4.4
(22年度測定値の統計はほぼ30-50nGy/hの範囲にあった。1年間の総量被爆線量は0.43mSv以下であった)


読書ノート 吉田武著 「オイラーの贈り物」 東海大出版会

2011年04月10日 | 書評
「博士が愛した数式」オイラーの公式を理解するために 第1回

物理学者ファイマン(「ご冗談でしょう ファイマン先生!」の著書で知られている)がこういっている。
"We summarize with this,the most remarkable fomula in mathmatics: eiθ=cosθ+i・sinθ    this is our jewel"
 数学、特に複素解析におけるオイラーの公式とは、上に示される指数関数と三角関数を虚数が媒介して成り立つ等式をいう。 θ = π のとき、eiπ = -1 というオイラーの等式と呼ばれる式が得られる。この公式は複素解析をはじめとする純粋数学の様々な分野や、電気工学・物理学などであらわれる微分方程式の解析において重要な役割を演じる。物理学者のリチャード・ファインマンはこの公式を評して「我々の至宝」かつ「すべての数学のなかでもっとも素晴らしい,そして驚くべき「方法」」だと述べている。
 私はこの本を題名だけで判断して、恐らく科学読み物か数学史くらいに考えて本屋に注文した。そして入手した本をぱらぱら見て驚いた。本格的な数学の専門本ではないかと疑った。ただし本格的な専門書は、この本のように内容的に間口はひろくないし、装丁も紙の質ももっと上質であるが。第1部でオイラーの公式を導くための数学の基礎全般を概説し、数論、級数、代数方程式、関数論、微分、積分を概説する。準備が整ったところで、第2部ではオイラーの公式の骨格をなすテイラー展開、指数関数と三角関数の特徴を概説する。そして第3部でオイラーの公式を導き、ベクトルと行列に応用して物理学への展開を述べる。付録としてアドバンスコースを設け、オイラーの公式の利用のすごさを実感してもらう過程となっている。
(つづく)

文藝散歩 坪内稔典著 「柿への旅」 岩波書店「図書」

2011年04月10日 | 書評
「図書」2011年1月号 「柿への旅」(21) 「柿の団子とシャーベット」

 水上勉氏が書き残した柿の食べたかたに「柿団子」というものがある。柿を潰して、はったいの粉(麦を炒った粉、麦こがし)を混ぜこねてできた団子状の菓子である。水上氏が食べた柿は若狭の柿で、京都の代表的な渋柿「大四郎柿」であろう。江戸柿ともいう。もうひとつの柿の食べ方に、信州下諏訪の老舗旅館「みなとや」の「凍柿」(熟し柿を凍らせてシャーベット状になったもの)がある。この熟し方に熟練と歩留まりの悪さがあって、なかなか市中には広まらない。佐藤隆介氏はこの「凍柿」の事をエッセー「小口惣三郎の、凍柿」に書いて紹介した。老舗旅館「みなとや」の名物が馬肉料理とこの「凍柿」である。温泉上がりにテーブルに出されたシャーベット菓子のなんという味わいであったこと。この老舗旅館には多くの有名人が訪れているそうな。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「亡国民」

2011年04月10日 | 漢詩・自由詩
去国流浪怨思長     国を去り流浪 怨思長く

登楼碧葉已三春     楼に登れば碧葉 已に三春

梨花淡白非吾土     梨花淡白 吾土に非らず
 
四月江城亦異郷     四月江城 亦異郷


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(韻:七陽 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)