医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年2月10日) 「朝日新聞ガンワクチン報道事件 第4の権力の暴走(1)」 小松秀樹 虎ノ門病院泌尿器科部長 より
初めに
この事件についてはこのコーナーで何度も何人かの識者が発言している。今回の小松秀樹氏はメディアの報道の権利と義務について、さらに新たな見解を述べたもので傾聴するに値すると思われた。長くなる(前半と後半に二分して)が、丹念に氏の論旨を追って行こう。なお小松氏は「医療崩壊・立ち去り型サボタージュとは何か」、「医療の限界」、「慈恵医大青戸病院事件」などの著書として広く知られ、医療ガバナンス学会の論者である。2010年10月15日の朝日新聞のガンワクチン報道記事、翌日16日の朝日新聞社説「東大医科研 研究者の良心が問われる」に対して、12月8日東大医科研中村祐輔教授は、朝日新聞と出河雅彦編集委員、野呂雅之論説委員を名誉毀損を理由に損害賠償を求めて提訴した。朝日新聞は記事に対して抗議を表明していた団体のうち4団体に対して、「記事捏造」と非難したことが名誉毀損に当たるという申し入れを行なった。報道事件は当事者間の権利義務についての個別具体的な紛争である。それを朝日新聞は議論を日本の臨床試験のあり方という社会システムの問題にすり替えようとしている。従って事件の核心は医科研と中村教授の名誉を貶めたかどうか、オンコセラピー社の信用を傷つけたかどうかについて議論をする。
(つづく)
初めに
この事件についてはこのコーナーで何度も何人かの識者が発言している。今回の小松秀樹氏はメディアの報道の権利と義務について、さらに新たな見解を述べたもので傾聴するに値すると思われた。長くなる(前半と後半に二分して)が、丹念に氏の論旨を追って行こう。なお小松氏は「医療崩壊・立ち去り型サボタージュとは何か」、「医療の限界」、「慈恵医大青戸病院事件」などの著書として広く知られ、医療ガバナンス学会の論者である。2010年10月15日の朝日新聞のガンワクチン報道記事、翌日16日の朝日新聞社説「東大医科研 研究者の良心が問われる」に対して、12月8日東大医科研中村祐輔教授は、朝日新聞と出河雅彦編集委員、野呂雅之論説委員を名誉毀損を理由に損害賠償を求めて提訴した。朝日新聞は記事に対して抗議を表明していた団体のうち4団体に対して、「記事捏造」と非難したことが名誉毀損に当たるという申し入れを行なった。報道事件は当事者間の権利義務についての個別具体的な紛争である。それを朝日新聞は議論を日本の臨床試験のあり方という社会システムの問題にすり替えようとしている。従って事件の核心は医科研と中村教授の名誉を貶めたかどうか、オンコセラピー社の信用を傷つけたかどうかについて議論をする。
(つづく)