ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

阿久根市長・名古屋市長 迷走は何のため?

2011年01月17日 | 時事問題
asahi.com 2011年1月17日1時40分
名古屋トリプル投票17日告示 知事・市長・議会解散
 名古屋市議会解散の是非を問う住民投票が17日、告示される。河村たかし市長が署名運動を主導した市議会解散の直接請求(リコール)によるもので、政令指定都市での実施は全国初。投開票日は2月6日で、愛知県知事選、名古屋市長選と同日の「トリプル投票」となる。

asahi.com 2011年1月16日23時49分
竹原氏「市職員たちが勝った」 阿久根市長選落選
 竹原流に「NO(ノー)」――。鹿児島県阿久根市の住民投票で解職された竹原信一前市長(51)の返り咲きはならなかった。16日投開票の出直し市長選。解職運動の中心人物だった養鶏会社経営の新顔西平良将氏(37)が、竹原氏との一騎打ちを制した。この2年半で3度目の市長選。市議会を無視して専決処分を繰り返した竹原氏の政治手法が争点になったが、市民は受け入れない判断を下した

独断専行を繰り返すポピュリズム市長とそれに反抗する議会との収拾のつかない混乱。民主党も独断専行で行きたいところだが、民主主義を標榜するが故の政権の立ち往生。戦前なら対立点は武力で解決するか、第3の象徴的権力者天皇の裁定に持ち込むことが政治であった。それよりはましな現状であるが、何も出来ないことは時代の閉塞感を加速している。といって阿久根や名古屋市長のような小泉元首相のポピュリズム手法(市民の支持が第1で、やり方を問わない)では、こと志と違って悪い方向へ行くことは必至。さてどうしたらいいものやら?

読書ノート 中村桂子著 「自己創出する生命」 ちくま学芸文庫

2011年01月17日 | 書評
生命の普遍性と多様性の源としてのゲノム論 第5回 

1) DNA分子遺伝学の進歩

 第1章はDNAを暗号として、物質として、全体として理解しようとした第1期(1960年代)、第2期(1970年代)、第3期(1980年代中頃)を手短に総覧している。とはいえ分らない人にはやはり分らないし、分っている人にとってはつまらない。科学の経過を概説することは難しいのである。そこでDNAの二重ラセン構造の発見者ワトソン氏の著書「DNA」を読んでいただくことにしよう。メンデルの遺伝法則からヒトゲノム解析終了までのDNA研究の歴史がレビューされている。多少分厚い本であるが読みやすい。本書は1952年のワトソン・クリックのDNA二重ラセン構造発見から分子生物学が始まったとしている。DNAの3塩基暗号から蛋白質のアミノ酸が指定され、モノーのオペロン説などの蛋白翻訳調節機構をへて遺伝子が指定する蛋白質が必要な時に生合成される機構が解明された。DNAセントラルドグマの誕生である。ウイルスの細胞侵入機構を利用してヒト遺伝子断片を大腸菌の遺伝子に組み込む遺伝子組み換え技術が各種制限酵素の発見によって自由自在に出来るようになった。ここから「遺伝子工学」という思い上がった言葉が出来た。ヒト遺伝子ライブラリ(断片のよせあつめ)が大腸菌で増殖できるようになって、ヒトゲノムを全体で構造解析する「ゲノム解析」がスタートした。同時に稲や、酵母などのゲノム解析プロジェクトが立ち上がった。その結果ゲノム全体の構造は、意外とスカスカで意味ある遺伝子は全ゲノム(30億塩基配列)の1-2%に過ぎなかった。スぺーサー、イントロン、偽遺伝子φ、繰り返し配列、トランスポゾン、ファミリーの遺伝子構造の共有関係などがわかって、かえってゲノムの謎が深まった。ゲノム構造が一番面白いのはノーベル受賞者の利根川進氏が解明した抗体可変部分の遺伝子メカニズムであろう。2003年米国のブッシュ大統領が「ヒトゲノム解析終了宣言」を出してから、次は蛋白質の世界へという流れが生まれた。ところが構造配列が分ったといってもゲノム調節のメカニズムと、膨大な無意味な配列の意味(恐らく進化のための予備軍)など、謎は深まるばかりである。
(つづく)

文藝散歩 永井荷風著 野口富士夫編 「荷風随筆集」 岩波文庫

2011年01月17日 | 書評
永井荷風の江戸文学趣味と淫靡な世界 第35回

Ⅲ) 芸術・文藝論 (4)
正宗・谷崎氏の批評に答う(昭和7年3月)

 昭和7年3月正宗白鳥氏が「中央公論」4月号に「永井荷風」を掲載した。谷崎潤一郎氏はさきに、西鶴と元禄時代の文学を論じ、荷風を以って尾崎紅葉先生と趣を同じくする作家のようだと言う。そこで荷風先生は大正7年に雑誌花月に連載した「かかでもの記」の後編のような自己の文学遍歴の筆を取る気になって、なったのが本小文である。荷風は尾崎紅葉先生には最も馴染が薄く、「金色夜叉」さえほとんど読んでいないという。むしろ唖々子の影響で柳浪先生の教えを乞うたのである。大正7年ごろ硯友社作家の批評のため読んだ幸田露伴、樋口一葉の諸作に深い感銘を受けたという。明治41年のさく「すみだ川」以来過去の東京を再現させようと試みたが、荷風には二葉亭四迷「浮雲」、森鴎外「雁」のような人物の心理を描く才能がないことに気がついたらしい。それから江戸趣味者という風評・虚名が確立したようだ。江戸時代の戯作者が人情本や春画のような淫猥な本を作っていたことに刺戟を受けて、「新橋夜話」、「戯作者の死」の如きもっぱら花柳小説にのめりこんだ。大正4年の慶應義塾大学を退職し、三田文学を井川氏に任せて、自由な身となった荷風先生は花柳小説「腕くらべ」(一葉女史の「たけくらべ」のもじりか)、「つゆのあとさき」を発表した。江戸時代の文学を見るに、好んで市井の風俗を描写した文学者が現れた、太田南畝、曲亭三馬、為永春水、寺門静軒、明治時代になって仮名書魯文、服部撫松、尾崎紅葉の流れに荷風が付け加えられた。「・・意外の名誉であり既にわが事は終われり、老と病は我を死の門に連れ去りたり」と締めくくった。しかし荷風先生はなかなか長命でありまして、これから20年以上も人生を楽しまれておられます。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「冬 暁」

2011年01月17日 | 漢詩・自由詩
五更過雁報暁聲     五更過雁 暁を報ずる聲

万里霜風寒意生     万里霜風 寒意生ず

東麓星疎晨却暗     東麓星疎に 晨却て暗く

西天月残夜還明     西天月残り 夜還て明なり

 
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(韻:八庚 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 カール・ニールセン 「交響曲全集」

2011年01月17日 | 音楽
カール・ニールセン 「交響曲全集」 交響曲第1番ー第6番 (CD3枚組)
ブライデン・トムソン指揮 王立スコティッシュ管弦楽団
DDD 1992 CHANDOS


ニールセン(1865-1931年)とは童話作家ではありません、デンマーク生まれの作曲家です。日本人にはあまり馴染はありませんが。