ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

医療問題  「東大医科研ガンワクチン」朝日新聞報道に対する反応

2010年11月04日 | 時事問題
「絶望の中の希望ー現場からの医療改革レポート」 第69回(2010年11月3日)「朝日新聞 東大医科研がんワクチン事件報道の波紋」  東京大学医科学研究所 上昌広 より要約
 
 10月15日の朝日新聞報道後の2週間の経緯を紹介する。15日以来医学界から朝日新聞報道に対する多くの抗議がなされた。18日東大医科研の清水所長はメルマガMRICに「事実の歪曲」を寄稿した。20日に41のがん患者団体が「ガン臨床研究の適切な推進に関する声明文」を発表し、不適切な報道で迷惑しているのは被験者であると朝日新聞に抗議した。22日には日本ガン学会、日本ガン免疫学会、オンコセラピー・サイエンス社が抗議声明を発表、23日には日本医学界会長高久史麿氏は事実を歪曲した朝日新聞報道を批難した談話を発表、27日には帝京大学小松教授らを発起人とする「医療報道を考える臨床医の会」が発足し、署名活動を開始した。27日には東大医研の中村祐輔教授は朝日新聞社長に抗議文を送り、名誉毀損の訴訟の準備をしている事を明らかにした。29日には日本医学界が「事実を歪曲した朝日新聞報道」との公式見解を発表、30日にはガンワクチン臨床研究ネットワーク76施設の連名で抗議した。朝日新聞の取材を受けた施設は無く、記事は捏造の疑いが濃いと主張した。11月1日には東京都保険医協会が抗議声明を発表した。これに対する朝日新聞の対応は20日の41のがん患者団体の声明を報じたが、自らの都合のいい形で捻じ曲げて報道した。22日の日本ガン学会などの抗議については、「取材は確か」という手続きを自己弁護に努めた。それ以外の抗議活動については朝日新聞は一切無視している。今回の報道に関して他のマスメディアはトクオチを愧じてか目立った動きは無く静感しているが、週刊誌や「日刊ゲンダイ」は「一面でかでか記事に抗議殺到」という記事を書いた。医療界のメデイア・ネットワークのメデイファックス、メディカルトリビューン、日経メディカルオンライン、エムスリー,MRICなどは連日問題を報じていた。今回の朝日新聞の特種記事は出河編集委員、野呂論説委員らのスター記者が書いた。出河氏は著書「ルポ医療事故」(朝日選書)で2009年科学ジャーナリスト賞を受賞した医療関係専門記者である。医療機関の隠蔽体質を糾弾し情報公開を訴えたことは敬服に値することであり、今後も活動を期待したいところであるが、今回の報道はストーリー重視の憶測と断罪精神で書いたものではなかろうか。大阪地検特捜部の証拠捏造をスクープした朝日新聞大阪支局の功名に刺戟された勇み足ではなかろうか。

読書ノート 正田 彬著 「消費者の権利」新版 岩波新書

2010年11月04日 | 書評
消費者庁施行時点で、消費者の権利を検証する 第3回

 現在消費者の権利を巡る状況は楽観視できるものではない。今日先進国では市民社会の人権を前提として社会が形成されている。市民社会の基本的な原則は、個人の権利の保障とくに人間の自由・平等の保障を中心としている。この観点が消費者の権利を考える原点であると著者は宣言するのである。一方商品・サービスの取引を提供する事業者(サプライヤー)の活動は、利潤の獲得を目的として、市場経済体制の原則に対応しながら高度な発展を遂げている。膨大な規模の商品の種類・生産力と巨大な流通機構、複雑な国際的取引などに消費者も組み込まれている。そして事業者と取引を行う消費者は、生活を営んでいる生身の人間であることが基本的な特徴である。消費者は自分の健康で文化的な生活を営むために商品・サービスを購入するのであって、事業者間の取引関係とは全く性格が違う。食品の場合典型的に現れるが、商品・サービスの問題で人間の生命・健康に影響を与えるということだ。簡単な日常品なら消費者も社会通念上商品の内容を理解している。石油ストーブが危険なことは承知して使っている。ストーブの上に洗濯物を干すことが火事につながることは十分理解しているので、その類の事故は石油ストーブのメーカーの責任ではない。しかしいまや商品の種類、変遷のスピードが著しく、消費者が危険性を十分理解していない商品に囲まれている。したがって、その商品が持つ危険性についてメーカー販売者は明確な表示が求められるのである。
(つづく)

文藝散歩 永井荷風 「断腸亭日乗」

2010年11月04日 | 書評
永井荷風42年間の日記 個人主義者の孤独な生 第27回

永井荷風著 磯田光一編 摘録「断腸亭日乗」岩波文庫 第10回 

「断腸亭日乗」(1917年ー1958年、大正6年ー昭和33年)(3)

1920年(大正9年 荷風42歳)
正月3日麻布の新居にいれるベットなど家具を買いつけた。 
3月明石町、愛宕山を散歩。 
5月23日麻布の新築の家にペンキを塗って新居に移転し、「偏奇館」と名づけた。この頃痔を患い、俳句の木曜会にも行けず。 
6月虎ノ門でバラの木を買って庭に植える。 
8月20日新聞記者の来訪を避けるため、新聞社に訪問や写真撮影には金をいただくという通知を出すような、変人ぶりを発揮。 
9月23日偏奇館に西日の差し込みがひどいので庭にプラタンを植える。 
12月小説「雨蕭蕭」を執筆し脱稿。チューリップや福寿草を植えるなど庭の整備に精を出している。
(つづく)

筑波子 月次絶句 「秋宿山寺」

2010年11月04日 | 漢詩・自由詩
香閣東山月皓然     香閣東山に 月皓然たり

幽庭紅葉落吟邊     幽庭の紅葉 吟邊に落つ

空蒼塔聳明秋壑     空蒼く塔聳え 秋壑明かに
   
晩気鐘鳴飲碧川     晩気鐘鳴り 碧川に飲む


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(韻:一先 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)