朝日新聞 2009年6月27日0時18分
労働者派遣法改正案 民主・社民・国民新が衆院に提出
民主、社民、国民新の野党3党は26日、労働者派遣法改正案を衆院に提出した。仕事がある時にだけ雇用契約を結ぶ不安定な「登録型」派遣を通訳など専門職種に限り、製造業派遣も免許や資格が必要な専門職種を除き禁止。派遣労働者の権利保護や正社員との均等待遇に努めるよう派遣先企業に求める規定も盛り込んだ。政府案との隔たりは大きく、今国会での成立は困難な見通し。
「派遣」の歴史
日本では1985年までは職業安定法第44条と45条で「労働者供給事業」は原則禁止されていた。しかしその前にはアメリカの人材派遣会社「マンパワー」が事務の請け負い事業で外資系会社に進入していた。1986年には特殊16業種で「労働者派遣法」が成立した(ソフト開発、通訳、翻訳、財務、機器設計、放送番組政策など)。スキルの高い業種に限り一定の歯止めがかかっていたが、バブル崩壊で業況が一変した。遂に1999年「改正労働者派遣法」では派遣業種が原則自由化された。規制緩和(撤廃)の流れは労働者の生活を一変した。派遣期間は1年が3年まで可能となった。製造業や医療関連業務も派遣が認可された。2000年以降不況を脱した企業では、長期にわたって雇用を保障する正規社員を抱え込むことを嫌がる傾向が続くのである。いまや人材派遣業界の売り上げは約4兆円に急成長したが、派遣会社乱立によって1事業所あたりの売り上げは2000年より低下の一途である。米国でも人材派遣業は90年以降拡大してきたが2001年9.11事件で縮小に転じた。米国では同一労働・同一賃金の原則が確立されているが、正社員より給料が低い現実は日本と変らない。イギリスでは派遣労働者数は120万人(全労働者の5%)で、派遣会社が人材育成に力を入れており、派遣社員のスキルアップが急速に進んでいる。正社員より高い給料を得ている場合も多い。特殊技能の派遣社員を好んで迎える企業も多い。
ではどうしたらこの蟻地獄から派遣社員は這い出せるのか。それには自助努力も大切である。厚生労働省は「紹介予定派遣」制度の充実に力を入れることになった。英国のように派遣会社が人材育成に力を入れ派遣社員のスキルアップに伴って派遣賃金が上昇する仕組みが大事だ。派遣会社では無料でOJT、OFF-JT教育訓練を実施しているのでこれを利用しなければ損だ。又企業側の努力も大切である。少子化と団塊世代大量退職を背景として、労働力不足問題が忍び寄っている。ユニクロやスーパーなどでは正社員化を積極的に進めているところもある。日本や米国の人件費削減対策はダウンサイジングによってマイナス面が目立ってきた。目の前の利益だけで人材を切ってゆけば企業の活力、開発力、国際競争力も削がれてゆくだろう。こうした安易な道は「ロー・ロード」と呼ばれる。
労働者派遣法改正案 民主・社民・国民新が衆院に提出
民主、社民、国民新の野党3党は26日、労働者派遣法改正案を衆院に提出した。仕事がある時にだけ雇用契約を結ぶ不安定な「登録型」派遣を通訳など専門職種に限り、製造業派遣も免許や資格が必要な専門職種を除き禁止。派遣労働者の権利保護や正社員との均等待遇に努めるよう派遣先企業に求める規定も盛り込んだ。政府案との隔たりは大きく、今国会での成立は困難な見通し。
「派遣」の歴史
日本では1985年までは職業安定法第44条と45条で「労働者供給事業」は原則禁止されていた。しかしその前にはアメリカの人材派遣会社「マンパワー」が事務の請け負い事業で外資系会社に進入していた。1986年には特殊16業種で「労働者派遣法」が成立した(ソフト開発、通訳、翻訳、財務、機器設計、放送番組政策など)。スキルの高い業種に限り一定の歯止めがかかっていたが、バブル崩壊で業況が一変した。遂に1999年「改正労働者派遣法」では派遣業種が原則自由化された。規制緩和(撤廃)の流れは労働者の生活を一変した。派遣期間は1年が3年まで可能となった。製造業や医療関連業務も派遣が認可された。2000年以降不況を脱した企業では、長期にわたって雇用を保障する正規社員を抱え込むことを嫌がる傾向が続くのである。いまや人材派遣業界の売り上げは約4兆円に急成長したが、派遣会社乱立によって1事業所あたりの売り上げは2000年より低下の一途である。米国でも人材派遣業は90年以降拡大してきたが2001年9.11事件で縮小に転じた。米国では同一労働・同一賃金の原則が確立されているが、正社員より給料が低い現実は日本と変らない。イギリスでは派遣労働者数は120万人(全労働者の5%)で、派遣会社が人材育成に力を入れており、派遣社員のスキルアップが急速に進んでいる。正社員より高い給料を得ている場合も多い。特殊技能の派遣社員を好んで迎える企業も多い。
ではどうしたらこの蟻地獄から派遣社員は這い出せるのか。それには自助努力も大切である。厚生労働省は「紹介予定派遣」制度の充実に力を入れることになった。英国のように派遣会社が人材育成に力を入れ派遣社員のスキルアップに伴って派遣賃金が上昇する仕組みが大事だ。派遣会社では無料でOJT、OFF-JT教育訓練を実施しているのでこれを利用しなければ損だ。又企業側の努力も大切である。少子化と団塊世代大量退職を背景として、労働力不足問題が忍び寄っている。ユニクロやスーパーなどでは正社員化を積極的に進めているところもある。日本や米国の人件費削減対策はダウンサイジングによってマイナス面が目立ってきた。目の前の利益だけで人材を切ってゆけば企業の活力、開発力、国際競争力も削がれてゆくだろう。こうした安易な道は「ロー・ロード」と呼ばれる。