株式会社パワーランド社長のブログ

日々変化する内外の経営・経済・社会環境に対し、自分の意見を適宜適切に表明したい。もちろん社業の宣伝も行います。

株式会社パワーランド

2010年03月24日 | Weblog

株式会社パワーランド
代表取締役 武田晴夫
(再開発コーディネーター)
               
ロンドン不動産紀行                      

はじめに
 
 写真や絵で見るイギリスの街並みにかねてより一種の憧れを持っていた。 当社の取引先でイギリスに長期滞在された方が、「ロンドン郊外のフィンチリーという場所に住んでいたが、居住環境が実に良かった」と話しておられたのを聞いて、数年前のその方との等価交換事業で、分譲マンション名を「フィンチリーコート」と命名した位である。
 この度、不動産鑑定士第3回実務修習を1年コースで終えた。鑑定評価の基本的事項の一つに対象不動産の確定があるが、実地確認することは鑑定評価の基本であり、その重要さを23類型の評価の実地演習を通じて履修した。そして、終了と同時に「どうしてもイギリスの街並みや不動産を鑑定評価の観点から今すぐ実地検分したい」という強い衝動に駆られてしまった。衝動は衝動として、現地の事情によっては、当社の企業経営の発展に寄与できるかの視点ももちろん持った判断である。
 短期間の初訪英で日本の鑑定評価基準に記載されている必要な情報をすべて収集することは不可能である。そこで、今回は体験した事柄を次の順序で取り纏めることとした。読者のご参考になれば幸いである。
  (Ⅰ)ロンドンへの馴化    
  (Ⅱ)変貌する街並み
  (Ⅲ)不動産業者
  (Ⅳ)居住用不動産の価格・賃料
  (Ⅵ)日本の不動産鑑定評価の手法の適用の検討


(Ⅰ)ロンドンへの馴化
 英国の政治・経済・教育活動の原点となる地域や施設を観ることを重視したが、一方では、宿泊ホテルを鑑定評価の対象不動産と想定し、可能な範囲で情報収集することを試みた。以下に、現地時間を標準として馴化のプロセスを追ってみた。                                
月/日、気候 午   前 午   後
2/24
小雨 (機内) 3:20 ヒースロー空港着
4:40 「ヒースローエキスプレス」で   
   パディントン駅へ
5:10 宿泊ホテルチェックイン
  (以後、5連泊。ホテル名は
   評価情報の関係で不記載) 
2/25(木)
小雨後曇
後雨
2:00 宿泊室の内装・仕上げ・
   間取り・面積・方位等
   メジャーと磁石でチェック
5:10 地下鉄の通過音(始発)
6:00 シャワー浴
7:30 コンチネンタルミール
8:30 ホテル界隈散策(境界標、 
   近隣地域、同一需給圏に
   留意)。電柱は無い。曇天に
9:30 トイレなくホテルに戻る。
10:00ハイドパーク方面に散策
11:30ナイツブリッジ高度商業
   地域に到着  1:00 トイレなく百貨店「ハロッズ」 
   入店、用足し、チップ忘却
2:30 商業地域散策終了。地下鉄  
   カード(oyster)£20分購入
   1万円両替(£1.00≒145円)
3:30 パディントン駅帰着。駅トイレ
   有料を確認しホテルへ
5:00 ロンドンビジネススクール
   (LBS)所在確認のためベーカー  
   ストリート駅へ
7:30 ペットボトル水2L購入後
   ホテルへ
8:00 夕食(ステーキハウス)
9:30 ホテル帰着
2/26(金)
曇夕刻小雨 ウエストミンスター駅から  
国会議事堂、最高裁判所等官庁街散策 アポにより、LBS訪問。施設管理責任者と面談。協議内容は守秘義務のため非公開。LBSからの帰路、駅前日系不動産業者訪問(物件情報は入手不可)
2/27(土)
小雨後曇後夜半大雨 土曜のため、地下鉄環状線運休。別の路線でフィンチリーセンター駅へ。周辺住宅視察。いずれも境界標が存しないことを確認。駅前不動産業者2軒訪問。
物件情報入手。売買・賃貸等契約条件聴聞。他の不動産業者は休業 シティの「バンク」駅へ。ビジネス街、王立裁判所、ロンドン大学等視認、司法専門書店にて数冊購入。王立鑑定協会(RICS)のレッドブックガイド購入。
帰路ハロッズでショッピング。

2/28(日)
大雨後午後曇夕刻小雨 朝食後、大雨の中、市役所経由バッキンガム宮殿訪問のため、ウエストミンスター駅へ。宮殿最寄りのグリーンパーク駅のトイレは清潔で無料。 キングズクロス駅で昼食後、列車でケンブリッジ地域へ。大雨で列車が途中駅から折返し運行。折返し地点からバス(Rail Replacement)でケンブリッジへ。列車なら片道60分のところ、100分所用。帰路を心配しながらの往路。不動産業者はすべて休業。店頭情報収集のみ。20ペンスの有料トイレで用を足し、バスで帰路に。9時頃ギリシャ料理店へ。
3/1(月)快晴 ホテル近辺の不動産業者訪問。不動産情報収集。地代、店舗開業時の法手続きを聴聞。
10:45ホテルチェックアウト。 「地下鉄」で、ヒースロー空港へ。
7時、時間通り、離英。
                                   
 馴化の過程は端的に地下鉄利用状況に表れている。日常活動においてもトイレ探しに相当苦労した。不動産業者への聴聞は2月26日と3月1日とでは聴聞内容の具体性が違った。 flat(集合住宅の一部) house(外観は戸建的な住宅) property (一般的な不動産全体を指す) ground rent(地代) solicitor(事務弁護士) chartered surveyor(不動産鑑定士) leasehold(借地権) freehold(所有権) estate agent(不動産業者) deposit(預託金) refundable(返してもらえる) 等を意識しながら聴聞し精度を高めている。 惜しむらくは、行動に慣れてきたのが土日で休日ゆえ、業者面談が少なかったことである。
 当初は、地下鉄内の治安を警戒したが、人種や出身国を問わず乗客は饒舌で温厚なことが車内の雰囲気で分った。電車内の携帯電話での無作法な会話はいずこも同じである。雑誌・新聞の置き降りも多く、当然のように拾って読む風習があるようだ。カードの残高不足で出口が開かない乗客にも出会った。ラッシュ時は東京程ではないが相当混雑する。土・日には地下鉄環状線等運休路線があり、移動には駅の放送をしっかり聴く必要がある。その意味で、地下鉄の路線図は必携といえる。
 ケンブリッジ中心地から駅までの復路、道に迷ったが通り掛りの婦人に声をかけ、教えてもらった。日本的な温か味を感じた。



(Ⅱ)変貌する街並み


(写真 1)
(左手前)ナイツブリッジ駅近くの新築現場
(右奥) 隣接した従来の街並み
 

(写真 2) 
正面の搭状建物はナイツブリッジ駅近くの百貨店「ハロッズ」
左手前は歴史的建物が連担する従来の街並み
 
(写真1)と(写真2)は最寄り駅がナイツブリッジ駅であり、距離的には近接している。いずれも高度商業地域に存する建物であるが、注目したのは(写真1)の新築建物の意匠、構造、規模、高さである。意匠・構造は日本では見慣れた鉄骨造のビルである。規模だが、2棟の建物が一つの敷地に建てられている。  2棟とも従来の建物と同じ高さと思われる。周辺環境にはどちらかといえば適合していない。(写真2)は、中央のハロッズは1つのブロックに1棟の建物が建っており、建物は敷地に適応し、環境にも適合している。ハロッズだけ顕著な優位性を保っている。
 (写真2)の街並みが、(写真1)のような街並みに変貌しつつある地域が、シティ等でも見受けられるが、(写真2)と同じ街並みを維持するための改修現場が圧倒的に多かった。街の不動産業者との会話では、新築現場では境界問題があるが、解決するのは業者ではなく、solicitor とsurveyor であるとのことであった。 


(Ⅲ)不動産業者
 最初に出会った業者は、LBSの応接室においてであった。名刺は「Consultant」となっていたが、英語では通常「Estate Agent」という。LBSでの2時間に亘る面談の後、アポ無し業者飛込み訪問で得た名刺にはどれもそのように表示されていた。滞英中に5業者と面談できた。街の不動産業者の役割は、顧客に物件を紹介し案内するまでで、実際の価格・賃料のネゴや契約業務はsurveyor とsolicitorが行なうとのことであった。   
 店頭訪問では、「始めて日本からやってきた。今回は当地域の不動産情報を勉強している。Property の売買情報、flatの賃貸情報があったら戴きたい」と、英語でしゃべったら、どの店舗も門前払いすること無く、物件の規模、権利の内容、地代の要否、価格や家賃、取得経費、敷金や権利金、保証人の要否等教えてくれた。Propertyに関し、敷地の「境界標」の有無を尋ねたら、「境界」という言葉に首を傾げられた。
 「敷地」の概念や「一定規模の敷地に建蔽率・容積率の制約の下に一定規模で建築される建物」という考えは通じ難く、「建物の中の空間がProperty であり、また、flatやhouseであり、売買賃貸借の対象である」と考えると、話が一気に通じる。敷地というより、site=場所と理解すれば話が早い。そこで、「登記簿は存在するか」「どこに行けば閲覧できるか」と尋ねると「存在するが、実際の契約当事者かsurveyorかsolicitorでなければ閲覧できない」と、ある業者から聞いた。そして、「個別の物件は開示できないが、登記の一例に関しコピーを上げる」と告げられ、A4の大きさのコピーを一部受領した。
 機密でない部分は次の通りである。
「H.M.LAND REGISTRY」の表題があり、「TITLE NUMBER」欄で対象不動産番号が特定されている。欄外に「This official copy is incomplete without the preceding notes page」と朱書されていることから、得たコピーは数枚の内の一部であり、当紙片一枚だけでは不完全であることが分る。スタンプとサインから判断して、「GREATER LONDON」というCOUNTY内にある役所の管轄であろう。当紙片とは別の紙片に建物の詳細が記載されているものと思われる。
 私が短期に知り得た街の不動産業者及び開発業者のHPは次の通りである。公開された情報だから自由にアクセスして情報を取捨することができる。
http://www.はいずれも同じ。  

abenabo.co.uk  goandco.co.uk  davidharris.co.uk rightmove.co.uk
haart.co.uk russellres.co.uk abbotts.co.uk  knightfrank.com
savills.co.uk

 
 また、賃貸住宅協会はARLA、 代理店協会はNAEA で検索すると、その詳細を入手できる。これらを通じて不動産業者にアクセスすることは可能であり、その情報量は厖大である。得た情報を見ながら時差を意識し電話すると詳報が得られる。  


(Ⅳ)居住用不動産の価格・賃料
 一般に、不動産はPropertyと呼ばれる。売買価格は資料に表示されているが、物件の特定は日本のように土地何㎡建物何㎡とは表記されず、寝室等室内の概略面積と駐車場の有無等が表記されるだけである。地代は概ね低位である。不動産取得税は売買価格により税率が相違する。固定資産税に当る保有税は、売買価格により区分され、Council(市役所)宛に毎年支払う。維持管理費用として、サービスチャージ名目で毎年£1,000を超える金額が必要である。 なお、値引きのネゴが行なわれることもある。これはRICSのレッドブックガイドにもQ&A方式の中で記載されている。ネゴは、代理店ではなくsolicitorやsurveyorに対して行なわれる。仲介手数料は、売主から代理人に支払われるだけで、買主には請求されない。売買価格に市場参加者の地域的選考性が反映される。これらは業者訪問で聴聞したことであり、聴聞先業者はフィンチリー、ベーカーストリート、パディントン、ケンブリッジ(こちらは電話)等区々の地域に亘る。
 賃貸用は、日本のマンションに当るのがflatと呼ばれる。賃料は週単位での表示が多いが、ケンブリッジは月単位が多い。預託金額は地域や物件により差がある。退去時返戻されるので日本の敷金と解してよい。保証人は、普通は不要。仲介手数料は、貸主が支払う。方位は賃料に影響を与えない。
 標準的な価格・賃料水準に言及するには、もう少し市場分析の時間が必要である。個別的な売買賃貸情報は、先述の不動産業者HPにアクセスして入手されたい。


(Ⅴ)日本の不動産鑑定評価の手法の適用の検討 
 日本の不動産鑑定評価制度は、昭和38年7月16日公布の「不動産の鑑定評価に関する法律」に端を発する。現在の日本の不動産鑑定評価基準に拠れば、価格に関する鑑定評価は、「土地」、「建物及びその敷地」、「建物」に関して行なうことができる。宿泊したホテルは「建物及びその敷地」で、その状態を所与としての評価は可能か。宿泊料は把握しているし、5連泊もすればそれなりの経営情報も収集できる。だが、資料の収集では確認資料、要因資料、事例資料のいずれも充分に収集できない。鑑定評価の観点からアプローチすることは私の興味をそそるし、アプローチしてこそ次の展開が期待される。しかし、solicitor やsurveyorでなければ、聴聞・調査できない。宿泊料は1泊朝食付6,500円、部屋の広さは10.41㎡である。宿泊料は不動産と経営の対価として把握できる。敷地の再調達原価は把握できないので、原価法の適用は不可だが、建物及びその敷地に帰属する純収益の査定は可能で、これを還元して収益価格を、また、類似の取引事例から比準価格を求め、二つの試算価格を調整して鑑定評価額が決定できる。建築工事費はBCIS(=Building Cost Information Service)で査定可能である。宿泊ホテルの構造は、一棟の建物(写真 3)の縦割り長屋の一部で、部屋数はフロントでの聴聞と目視で私の部屋の広さと同程度として70室である。この一棟の建物の中には、他にもホテルとして経営されている部屋が相当数存し、その玄関には私と同じ広さの部屋で朝食付が一泊£25.00(≒3,600円)と表示されている。私の円払い宿泊料との格差を如何に解釈するかは経営実態を知る必要がある。以上を総合的に勘案すると、surveyorであれば情報収集も可能となり、対象ホテルの鑑定評価は可能と思われる。欧米の制度も研究して作られた評価制度であるから当然といえば当然の帰結である。 


(写真 3)
(全体)全体敷地:4,560㎡ 全体建物:23,500㎡
(対象ホテル)敷地部分:600㎡ 建物部分:3,000㎡ 客室数:70室



おわりに

 英国のperiod propertyには依然として世界中から大きな人気を博しているが、ロンドン中心部を歩くと、再開発対象となっている建物の中には、鉄骨をふんだんに活用したものも見られるようになっている。不動産業者の項目でHPをいくつか紹介したが、knightfrank.comは是非訪問調査して欲しい。今後の英国の開発動向が伺えるような気がする。本稿締切日の翌3月24日に不動産鑑定士修了考査の合格が発表された。お世話になった方々に心より御礼申し上げ本稿を閉めたい。
以上
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1 コメント

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ありがとうございました (かわにしよしと)
2017-07-05 11:21:56
今日は梅雨の晴れ間で、写真にある紫陽花も少々淋しがってるかもしれませんね。
今年も届きました、弟様の傑作が。
家に一個残って玉ねぎと比較して、やっぱり見た目からして違うねえと妻も申しておりました。
早速今夜からいただきます。
このブログを拝見しててもそうですが、ほんとうにお元気になられたようで何よりです。
似顔絵のほうが負けてる感もありますね。
昨年暮れに奥山さんにお会いしましたがお元気そうでした。
私このたび、来年(6月)古希の絵本デビューが決まりました。この年では’快挙’、らしいです(笑)。
子供のころからの夢でしたので嬉しいのですが、他の仕事を断って集中してましたので貧乏になってしまいました。’清貧’だと勝手に思っています(笑)。
出版の折にはご連絡いたします。

今更ながらの感もありますが、似顔絵に特化したホームページを作成しました。佐治さん共々無断掲載させていただきましたが不都合でしたら即削除いたします。
お忙しいとは存じますがお時間ございましたらご笑覧ください。使えるものがございましたらボランティアさせていただきます、ご遠慮なく。
佐治さんもお元気でしょうね。よろしくお伝えください。
それでは弟様の傑作、ありがたくいただきます。
暑くなりました、熱中症等十分にお気を付けくださいます様。

 かわにしよしと拝

http://www.nigaoe-pokopen.com

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