Senboうそ本当

広東省恵州市→宮崎県に転居。
話題は波乗り、流木、温泉、里山、農耕、
撮影、中国語、タクシー乗務、アルトサックス。

裸の警察 別冊宝島編集部 2007年 宝島社

2017年08月10日 | 毒書感想(宮崎)

タクシー乗務の際に携帯する本はなるべく「退屈」「難解」なものをチョイスするよう心がけています。理由は簡単、本の内容が面白すぎるとついつい仕事がおろそかになり「本の世界に溺れてしまう」からです。本書「裸の警察」を持って仕事に向ったのは大きな間違いでした。

本書は1999年「別冊宝島シリーズ」として出版、後に文庫化したものです。このシリーズ、1976年に創刊されて以降今でも継続中という人気シリーズ 時代にうごめく「政治問題」や「サブカルチャー」を題材に 際どい内容をどこまで活字にできるか を追求した「毒書」の代表選手。今回久しぶりに目を通しましたが、さすが いい味出してます。この「裸の警察」は15名のライターによる競作。警察OBやルポライターが本人の実体験や綿密な取材にもとづいて執筆していて、なまなましい話が満載。出版から17年も経過していますが今でも十分楽しめる内容でした。以下は本文からの抜粋・・・

 

 私もはっきり言って、最初はブルッてしまいました。それまで火炎瓶などは何度も投げつけられていても、銃で撃たれたというのはそのときが初めてでしたからね。一メートル外れた弾でも、人間の受ける衝撃はすごいんです。ヒューッという、弾が空気を切り裂くときのなんとも痛烈な音が響く。さらに相手の弾が味方の装甲車に跳ね返ってそこら中を飛び回る、二重三重の音が飛び交いますからね。その恐怖といったら・・・。」
 ところが人間というものは何にでも慣れてしまうもので、毎日偵察に行ってそうして撃たれていると、そのうちなんとも感じなくなってしまうんですね。山荘のすぐ手前まで土嚢を積み上げ、こちらの防壁とする作業を行ったのですが、その途中で『よーし休憩だ』と土嚢の陰に引っ繰り返ってタバコを吸いながら隊員と馬鹿っ話をしていた。頭の上を弾がヒュンヒュン飛んでいくなかをですよ。 (PART 1 警察官・その生と死 より)

 

 一機にいたとき、何度も外国の高官が部隊の見学に来て、『あさま山荘事件』について話すんですが、どう説明しても向こうには通じないんですよ。アメリカ人など、「ナッシング(ばかばかしい)」と一言。俺たちならバズーカで犯人を吹き飛ばして五分で解決してみせると。人質には気の毒だが、それはリスク・ファクター。人質一人を助けるのにこちらが何人も死んでいては、理屈に合わないではないかと言うんです。考え方がまったく違うんですね。
 でも日本の場合、あれでよかったんでしょうね。自分たちにこれだけ犠牲を出しても、一人の人質を救出するために日本の警察はあんなに頑張ってくれる。その姿を見て、国民の警察に対する信頼は築かれたと思うんです。それまで学生運動が盛んなとき、警察は鬼っ子でしたからね。権力の象徴、国民の敵・・・みたいに見られていた。 (PART 1 警察官・その生と死 より)

 

 とペチャクチャやかましいこと。ついさっきまでのこの人の行儀のよさはなんだったのか。ともあれ、ツボを押さえたしゃべくりに、善男善女の老人たちは早、頬がゆるみはじめている。機を逃さず堀川さん、本題のひったくり被害防止の話題へとつなげていった。
 「ひったくりの被害、大阪は二十年連続日本一多いんです。自慢やないけど不動の一位。皆さんのなかには警察官見たらムシズが走るちゅう人もおってでしょうし、被害届が出てない例も多い。ほんでも被害総額七億九千万円や。さすが商都大阪! ぎょうさん現金が動いとるんです。ね、そこの奥さん、一万円札で五列に並べてニメートルの高さですねん。いっぺんでええからそんな札束、わたしも触ってみたい」
 市民の警察官を見る目も、警察官自身をもボヤキ倒し笑い飛ばして、説教臭さを微塵も表に出さずに必要情報を伝える手堅さ。浪花の漫談の妙だ。 (PART 1 警察官・その生と死 より)

 

前歴前科のある者ならその手口を見て、こいつ、いや、あいつじゃないかと目星をつける。泥棒というのはおかしなもので、空き巣はノビをやらないといったぐあいに、それぞれ得意分野を持っている。おなじノビでも窓ガラスを割るのに三点割りといって三箇所を割る者もいれば、そんな丁寧なことをせずに無造作に割る者もいる。
 あるいは高所が得意で、一階でなくて二階、三階から侵入する者とか、それぞれ癖を持っているものなんですよ。
   (中略)
 さっきも言いましたように、泥棒の場合、手口捜査で犯人を割り出していくのが一つの手。これをマト割りといいますが、その結果、手口から見るとこいつだと割り出したら、その男の所在確認をする。もちろん、ピタッと当たらない場合だってありますよ。手口から判断して、こいつだと思った奴が、刑務所に沈んでいることもありますしね。そしたら、一からやり直し。
 で、マト割りをしたら、こんどはそいつの尾行。尾行は二週間ですむこともあれば、三ヶ月も四ヶ月もかかることがある。なぜ尾行するかって? 現場に指紋でも残されていれば証拠になりますが、共同捜査をする場合は、そんなひっぱれる証拠がないから共同捜査になったわけで、尾行しているそいつが、盗みに入り、おかしな言い方ですが、ちゃんと盗んで出たところを挙げる。この方法しかない。 (PART 2 刑事の肖像 より)

 

 鑑識の手順ですが、すぐ現場に入るわけではありません。現場の周辺から、徐々に内側に向かって調べていくんです。
 犯人は、犯行現場で犯行を犯しただけでなく、そこから逃走するときに、凶器をゴミ箱や溝などに捨てたかもしれない。ですから、建物の、少なくとも一〇〇メートル周辺をまず調べます。それから、現場がマンションだったら、エレベーターや廊下を調べ、部屋の中でも、犯行現場にすぐ向かうのではなく、トイレ、寝室、台所・・・など周辺から調べるんです。
 でも、周辺を調べるといっても限りがあります。欲を言えば、キリがない。犯罪の性格、たとえば単独犯か複数犯かなどによって、必要な範囲は違います。ふつう、現場から一〇〇メートル周辺までです。
 犯人が複数なら、調べる範囲は広くなる。犯行の起きる前の行動を前足というのですが、たとえば、見張りをつけるとか、コンビニで一服して時間調整するとか、自動販売機でジュースを飲んだとか、公衆電話で電話したかもしれない。ですから、近くにコンビニがあれば防犯用のビデオカメラを調べたり、公衆電話の指紋を調べたりします。 (PART 3 捜査の迷宮 より)

 

 現場鑑識は、非常に根気のいる仕事です。指紋をとるにしても、指紋は肉眼では見えません。だから、犯行の様子から判断して、だいたいの見当をつけてアルミ粉末をハケで振りかけてみる。単に行方不明という場合は、どんな犯行がその部屋で行われたのか見当がつきませんから、どこからどこから指紋が採取できるかは判断できない。出入り口はやるでしょうが。 (中略)
 ですから、絶対そこに犯人検挙につながる資料があるという確信がなければ、なかなか見つけられない。漫然としていては、すぐ見つかるような証拠でも見落としてしまう。たとえば、ここの壁にシミがあります。肉眼で見える。ところが、神経が集中していないと、見ていても見てない。目はそこに向いていても、見てないことがある。最初は、神経を集中させて観察していても、広い部屋を見ているうちに、どうしても集中力はなくなってくる。そうならないためには、絶対に資料がある、という確信が必要なんです。
 しかし、坂本事件の場合は、私だって見落としたかもしれない。悪意ではなくってね。だからマスコミが、あれは捜査に欠陥があった、というのは当たらない。拉致されたかどうかもわからないで、とにかく現場を見てみた、ということにすぎないんだから。  (PART 3 捜査の迷宮 より)

 

 

以下は おまけ企画「警察隠語集」からの抜粋。

さんずい   →汚職。知能犯の事件のこと。

しかとう   →とぼける、無視をする。花札のもみじは鹿で十。その鹿が横を向いているから。

がさ     →「さがす」の反転で、家宅捜査、探すこと。

せんみつや  →千のうち三つしか本当のことを言わないことから、うそつき。タレントのせんだみつおという名は、ここからとった。

 

 

 

 

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