つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

日輪と書いてひのわと読んだりして

2005-02-17 23:18:01 | 学術書/新書
さて、どっかの明王さまが乗り移るマンガを思い出した第79回は、

タイトル:「魔」の世界
著者:那谷敏郎
出版社:講談社学術文庫

であります。

なや、と聴くと「ごろう」と呼びたくなるひとは私だけではあるまい(爆)

さておき、古今東西、さまざまな国や伝承で「魔」に属するとされる、いわゆる妖怪、魔物の類を解説した本。

初っぱなから「ナッツ(精霊)の国で」という題名でビルマ(現ミャンマー)の「魔」の話から入る。

ミャンマー!?

いきなりこれですかい。

だいたい「魔」というと、いわゆる悪魔。
ファンタジーだとだいたいヨーロッパ……キリスト教絡みを想像するかもしれないし、少し知ってるといろんな神話(ギリシャ、エジプト、インド、中国などなど)が出てくるかもしれない。

でも、初っぱなからミャンマーの「魔」から始まって、ミャンマーでは、ある政府要人が訪日する際、このナッツに「方角が悪い」と言われて、何の用事もないのに別の国に行ってから日本に来た、と言う話もある。

平安時代は「方違え」と言って、陰陽道で方角が悪いからいったん別の方角に行って、参内する、ってのがあったけど、未だにそれをやってる、と言う話も載っている。

魔を題材にした話だからと言って、いわゆる辞典のような感じじゃない。

魔を題材にしながら、その国の風俗や他の国の魔との関連性などなど、その国の説話や伝奇などの紹介をしながら、紹介していくもの。

学術文庫だから、って肩肘張って読むようなものじゃない。

タイトルで買ったものだったけど、かなり当たりだと思う。
すらすら読めておもしろかったし、いろんな国の「魔」……ホントの悪魔や精霊、龍などなど、いろんな発見もある。

ファンタジーが好きで、東洋の文化が好きで、いろいろ神話や伝説の類は読んだことがあるけど、それでもこれはおもしろい。

高い金を出して買う勝ちはあると思うよ。
これは学術文庫の中ではけっこうおすすめ。
本はあんまり……ってひとでも、魔が象徴する異文化の香りに浴することができると思う。
(おぉ、ひさびさのべた褒め(笑))