せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

江戸末期建築の民家生活を体験して-1~『家族の絆を育む民家』~

2017年07月21日 | 日本民家再生協会・伝統建築・造園


この夏の連休は海の日でも、山にこもっていた柿本です。
日本民家再生協会の仲間と、長野県飯田市の「大平宿」に2泊3日。
ガスやマッチに頼ることなくの生活。

「古代発火法」と言われる木と木をこすって火種をつくる
火おこしのやりかたで、囲炉裏に火を灯し、
煮炊きやお風呂を沸かすという生活をしてきました。


どのような集落かというと、風景はこちら
http://www.oodaira.org/home/da-ping-su-nei-de-tu

宿泊の内容は、生活体験だけではなく、
古民家の調査とその考察。
掃除や修復作業も行うといった
民家に住まう家族、そのものになる!という体験。

さらに、集落に住んでいた方の当時の話や思い入れ、
現在の活動紹介などを聴くというものでした。

本当に多くのものを、感じ、話し、受け取った日々でした。

この民家体験を通しての気づきや感想について、
3つのテーマでまとめます。

1) 『家族の絆を育む民家』
家族の絆はどこから生まれるのか?感謝の気持ちが湧き出る時。
 〜民家での疑似家族体験を通じて気づいたこと〜

2) 『人間が自然の一部に回帰する民家』
癒しやくつろぎはどこから生まれるのか?
生きていることが気持ち良いと感じる瞬間。
 〜江戸時刻で生活してみて分かったこと〜


3) 『集落保存にみる志を貫く活動』
残すことの意味とは?何を大事にして、何を切り捨てるのか
 〜保存活動家のお話を聴いて、勇気をもらったこと〜
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まず、最初のテーマ『家族の絆を育む民家』

電気、水道は来ているものの、
江戸末期に建てられたその民家の当時の生活に近づくべく、宿(家)に着いたらまずは掃除から。
日が暮れぬうちに、炊事、お風呂沸かしです。8人家族+1ゲストの構成。

一度に、沢山の量の料理を作ります。手分けして、野菜向きに野菜切り、お湯沸かしに、火の番、、、。
同時に進行することを、ほぼ8人で分担。
それでも2時間30分ほどかかったでしょうか。(感覚的に)
   *時計のない生活、時刻は拍子木の知らせのみの江戸時代の時刻で暮らす。
↓竃のノスタルジックな写真は、協会のメンバーによるもの



食器を並べ、囲炉裏の周りに各自が座り、
料理を取り分けてゲストをお迎えして、「いただきます。」

この瞬間に、疑似家族が、家族になりました!
囲炉裏の灯が、皆に安心感を与えたのでしょう。
ほっとしながら、笑みもこぼれて。
なんとも言えない連帯感。




お一人だけ、ゲストを迎えたことで生まれた結束感もありました。
料理の出来栄えなど、、、どうかしら?と、みなで息を飲む感じでした。

朝晩と食事を作りながら
家と家族とは何か、とても考えさせられました。

・ 共同で助け合いながら、生活する。
そこに生まれる「互いへの信頼関係」

・ 火を囲む安心感、屋根で雨風をしのげる。
ハードな側面で家により生み出される「安心感の共有、食事を共にする喜び」

お風呂は、夜には湯も冷めて、最後だった私は、
お父さん役の年下男子に追い炊きをしてもらっていたのですが、
何度も窓付近まで来てくれて「熱くないか?湯加減はどうか?」を尋ねてくれるのです。

子ども役の私は、「まだ、まだぬるい」と答えるを繰り返し、、、。

この時も、相手を信頼すること同時に
大きな「感謝の気持ち」が湧いてきました。

自分以外の誰かのために、時間と手間を割いてくれている相手に対して。
昔の暮らしは、家族同士が互いに「愛しているかどうか」などと話さずとも

・ 「互いを思いやって行動する、生活する」そのものが、愛だったのではないかと、、、
そんなことも考えながら、湯に浸かるのでした。

今では、お風呂焚きは機械ががやってくれるから、、
お父さんの家での出番もなく
家族からの感謝って、お給料の額だったりして!?

などと考えが飛躍したりもして。

家族の絆が生まれるのはそういった共同生活からなのだと、
そこがスタートなのだと。だから、より人との関係を深めたければ、
外のレストランで歓談するのではなく、
作業を共にすることなのだと、改めての実感でした。

私が設計する住宅(民家)も、
家族の絆が深まる」そんな仕掛けがある
空間を創ろうと、改まった気持ちと

同時に、私自身、もっと家族に頼って良いし、
頼られてて良いんだなと、、、

このブログのテーマである「ワークライフバランス」にも通じる
気づきがあったのでした。

2)、3)のテーマは次回のお楽しみに〜。