パロディ短歌『石泥集』

百人一首や近現代の名歌を本歌どりしながら、パロディ短歌を披露する。

2016年事件簿16 日本とアメリカの違い

2016-10-01 10:25:19 | パロディ短歌(2016年)
(暴露合戦をした大統領候補の討論会―左―と隠ぺいに明け暮れる伏魔殿―右―) 
        アメリカの情報過剰と日本の情報不足

 次期アメリカ大統領選挙の前哨戦として、候補者同士のテレビ討論が行われた。新聞報道によれば、討論会の結果は民主党のヒラリー候補優勢とみた向きが多かったようだ。まったくの岡目八目だが、筆者もそう思う。

 ただし、改めて驚くことも多かった。まず、候補者同士の個人攻撃の激しさ。アメリカの歴史には中世も近世もない。イギリスの遅れた王政や事大主義の宗教を克服するためにアメリカは生まれた…そういう意識があるせいで、アメリカ文化には遠慮というものがない。中世は暗黒時代―という認識が一世を風靡したことがある。まだ、そんなに昔の話ではない。中世はたしかに武力がものをいった時代であるが、同時に名誉を重んじ、敗者へのいたわりを持った社会であった。ヨーロッパでは騎士道、日本では武士道といわれる道徳である。

 中世を持たないアメリカにはそれがない。察する心である。アメリカの文化はむき出しの文化で、言葉を変えれば、身も蓋もない文化であるといってよい。BS放送で目の当たりにした暴露合戦はまさしくそれを体現したものであった。あれでトランプの方は手加減したらしいから、もう何と言っていいのやら。

 ひるがえって、我が国の現状である。豊洲市場に何故地下空間が設けられたか―という問題に、都庁は「どこにも責任者はいません」と回答した。民間会社では考えられない返事である。こんな会社があったら、すぐに潰れるだろう。過去にも書いた通り、役人はお互いにかばいあって責任を認めないぞ…と警告していたが、まさかここまで破廉恥な回答を出すとは思わなかった。これは小池都知事への挑戦状である。

 責任の所在が分からない、ということは、ワイワイつるみながら仕事をしていたら、いつのまにか地下空間が出来てしまいました―という話である。かつての陸軍が上下なれ合いで、中華事変を拡大していったやり口と全く同一である。責任者がいない―などということはあり得ない。業者や都議会などに責任転嫁ができないと分かって、隠ぺいに走ったのだろう。情報不足というより、肝心の情報が皆無である。

 アメリカ大統領選挙の暴露合戦には、「そこまでやらなくても」とへきえきしてしまう感情がある。と同時に、都の役人に対しては「馬鹿にするな!」という感情が湧いてくるのも自然である。ただし、暴露と隠ぺいを天秤にかければ、まだ暴露の方がずっとマシであろう。小池知事は臆することなく、結果責任に基づいて、幹部への断固とした処分を行うべきである。それができるかどうか、都の幹部は見守っている。知事の力が弱いと分かれば、これまで通りサボタージュを行うだろう。


大統領への並々ならぬ意欲をみせ(ヒラリー)
●あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの立候補かな
(本歌 あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな  和泉式部)
(蛇足)討論会への準備と同時に大統領就任への準備も続けてきた…ヒラリーがそう言った時、会場から拍手が。準備をしなかったトランプに対し、柔道でいえば「一本」である。

そしてトランプを攻撃
●めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし確定申告
(本歌 めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし夜半の月影  紫式部)
(蛇足)確定申告を公開しないのは、連邦税を払っていない可能性がある、と追及。トランプは「ヒラリーが公的に使用した個人用メールを全部公開したら」という条件を付けた。やや、及び腰か。

ヒラリーの健康を攻撃し(トランプ)
●心あてに折らばや折らむヒラリーのおきまどはせる健康診断
(本歌 心あてに折らばや折らむはつ霜のおきまどはせる白菊の花  凡河内躬恒)
(蛇足)ヒラリーが肺炎を発症していたことが明らかに。トランプは執拗に「スタミナがない」と攻撃した。

アメリカの苦境は古い指導者にあると攻撃し(トランプ)
●ももしきや古きヒラリーしのぶにもなほあまりある失敗なりけり
(本歌 ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり  順徳院)
(蛇足)トランプの言っていることを素直に解釈すると、アメリカ第一の保護貿易になりそうだ。ヒラリー優勢の印象を受けて、アメリカの株式市場は値を上げた。

責任者不明の報告書を出し(東京都幹部)
●不明といふ字を百あまり紙に書き責任をやめて帰り来れり
(本歌 大といふ字を百あまり砂に書き死ぬことをやめて帰り来れり  石川啄木)
(蛇足)よくもこんなに厚かましい報告をしたものだと思う。役人はシロアリなのだよ。

反省の色もなく
●くろぐろと一本の道とほりたり たまきはる都庁なりけり
(本歌 あかあかと一本の道とほりたり たまきはる我が命なりけり  斎藤茂吉)
(蛇足)伏魔殿―と役人の組織はよく言われる。高速道路や空港にむらがる天下りの関連会社などを指すが、都庁も晴れて仲間入りした。

役人の掟は健在だ
●あかねさすかばい合いの尊くて無責任体制は生れやまずけり
(本歌 あかねさす昼の光の尊くておたまじゃくしは生れやまずけり  斎藤茂吉)
(蛇足)日本を滅ぼすのは、人口減少ではない。モラルの欠如―特に役人や地方政治家のそれである。

地下も空洞ならモラルも空洞
●無責任の水あふれてつひに濁りけり君も無罪我も無罪の子
(本歌 胸の清水あふれてつひに濁りけり君も罪の子我も罪の子  与謝野晶子)
(蛇足)赤信号皆で渡れば怖くない…ビートたけしの傑作が現実になった。与謝野晶子さんは泣いているだろう。
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