乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

高敞邑城(全羅北道高敞郡)

2011-08-29 | 全羅北道(韓国)
 今回の話は韓国全羅北道高敞郡の中心、高敞の町についてです。(高敞郡観光案内サイト・日本語あり)
 高敞郡は全羅北道西海岸沿いの最南部に位置し農漁村が散らばるいわゆる田舎っぽい地域で、代表的な観光地として支石墓群(世界遺産)や、禅雲寺という古刹、城跡の高敞邑城があげられるます。
 そのうち高敞邑城は高敞のバスターミナルから近く徒歩で行ける距離にあるので「乗りバス」のついでに見物してきました。以下この高敞邑城の画像を中心に話を進めていきます。(「乗りバス」の話はこちら)

 まず町はもとより高敞郡の玄関口になる高敞共用ターミナルの様子から。町を東西に流れる高敞川の北岸に、これまた東西に走る中央路があり、ターミナルはこの中央路に面しています。
 ここは高速バス・市外バスのほか市内バスもターミナル内発着なので乗りやすい部類のターミナルだと思います。支石墓博物館や禅雲寺に行くバスも含め市内バスの乗り場はターミナルの建物の一番端にあり時刻も掲示されていました。


 ターミナル内の待合所にはベンチではなく縁台を大きくしたような「平床」だけが並んでいます。腰掛けるのはもちろん上がってくつろいだり、それこそ寝っころがったりもできる優雅なシロモノです。韓国も日本と同様に「腰掛ける」より「座る」ことが主体の文化なのでこういうものがあるわけですが、さすがにバスターミナルだとこう平床ばかりという風景はあまり見られません。ひょっとして今も「座り」たい人が多い地域のかな、と思うとちょっと面白く感じました。


 真実-秩序-和合、父上母上に孝道をなし年長を恭敬しよう、まっすぐ生きよう運動高敞郡協議会
 というスローガンが書いてあります。そういえば昔日本でも「一日一善!」とか「お父さんお母さんを大切にしよう!」と叫んでいたコマーシャルがあったことを思い出しましたが、こういうのってちょっといかがわしい感じがしたりも。

 ところで韓国のバスターミナルといえばたいがい周辺に旅館・モーテルがあるものです。高敞では泊まる必要があるのでターミナル周辺をあたってみたところ、大都市のように林立状態ではなく数軒パラパラとであまり新しいところはなく、4軒ほど入ってみたところ価格は23000~40000w(中心は30000w)、どこも可もなく不可もなくで決め手を欠く感じでした。

 ではバスターミナルから高敞邑城に向かいます。ターミナルから南に進むとぶつかる高敞川に沿って東に向かうと、川の南岸にちょっと変わった古そうな建物「朝陽館(朝陽食堂とも)」が目に付きました。植民地時代に作られた日本式建築の旅館を改装したのだそうで、韓国の近代文化遺産に指定されているとあります。

 入って聞いてみたところ、ここは韓定食の店で料理の注文はテーブル単位になってしまい一人で食事をするのは厳しいとのことでした。(1テーブル60000wからだそうです。)なので一人だった私は食べられず味はわかりませんが、何人かで高敞を訪問されるという場合なら寄ってみるのも悪くないかもしれません。(ちなみにこの店とは関係のない話ですが、食べ物で高敞郡の名物というとウナギだそうです。ただ焼肉のように目の前で焼きながら食べるそうなので一人では食べづらいかも。)

 朝陽館から高敞邑城の入口まではすぐです。高敞邑城の入口周辺には展示系の施設がかたまっていて、まず美術館が見えます。


 次にパンソリ博物館がありました。パンソリは日本音楽で例えるなら「語り物」に相当するような伝統音楽で、太鼓で拍子をとりながら節をつけてストーリーを語りこんでいくものです。博物館の扇子が看板なのは歌い手が扇子を持って歌うから(語り手が語るというべきかも)でしょう。

 パンソリ博物館の隣には申在孝という李朝末期にパンソリを体系化した人物の家があります。


 パンソリ博物館のすぐ先が高敞邑城です。料金所があり「高敞郡民は無料(身分証持参のこと)」と書いてあるので当然私は入場料を払うべきところなのでしょうが、夕方だからか料金所に誰もいないので払いようがなくそのまま入ってしまいました。
 なお近所の人たちは普通の公園と同じように利用している感じで、身分証をいちいち持ってきている雰囲気もしませんでしたから入場料は厳密ではなくタテマエになっているのかも知れません。その辺りは真っ昼間とか休みの日を見ていないのでわかりませんけれども。


 高敞邑城はソウル南郊の水原にある有名な水原華城ようにぐるり一周する城壁で、北門(拱北楼)が入口になっています。曲がったまま使われている堂々たる木にこれまた堂々たる彩色がほどこされているのが韓国らしいところ。


 高敞邑城の中にはかつて役所の建物がいくつも建っていたそうですが、今は復元された建物がいくつかあるのみです。北門から入ってすぐのところにあるのがそのうちのひとつ「獄」。


 城壁の上は歩いて一周することができます。なんでも女性は頭に手のひら大の石を載せて1周すると足の病気が治り、2周すると無病息災長寿、3周すると極楽往生できるという言い伝えがあるそうです。と聞くと3周した瞬間にポックリ逝ってしまいそうな気もしてしまいますが、おそらくあくまでも1周・2周の結果があった上で「最終的に」という意味だと思います。


 男性だと大していいこともないのかも知れませんが、とりあえず私も一周しました。城壁から降りてウロウロしていると復元された建物のほかに「斥和碑」という碑が見えます。なんでも李朝末期の大院君が西洋列強が侵略しにきた時代に「西洋人が来たとき戦わずに和睦したらそれは国を売るようなものだ。」という攘夷思想を宣言したものだそうです。


 暗くなってきたので高敞邑城を出てちょっと周りをウロウロしてみます。画像は裏路地の様子。韓国のお家にはやっぱりカボチャが似合うなあ。


 高敞川の南岸には市場があります。工事中の上夜ではどこも閉まっているのであまり足を運んだ意味はありませんでしたけれども。市場から北に川を渡るとバスターミナルの近くです。

 というわけで高敞の町と高敞邑城の様子でした。なお田舎町らしく全般に夜は早仕舞いだったので、ここでの行動は早寝早起きが吉と思われます。(下は町外れにあったセマウル精神の塔。「セマウル運動」は朴正煕大統領時代に始まった農村振興運動で、運動歌「セマウルの歌」では早起きが奨励されています。)

(2011年7月訪問)
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韓国の原発(4)霊光原発

2011-08-27 | 全羅南道・光州(韓国)
 今回は韓国全羅南道霊光郡にある霊光原子力発電所(公式サイト)を見物したときの話です。韓国にある全4ヶ所の原発のうちこれまで見てきた3ヶ所(古里月城蔚珍)は東海岸でこの霊光原発のみ西海岸にあります。位置は全羅南道沿岸最北の郡「霊光郡」でちょっと北に行くとすぐ全羅北道です。稼動を始めたのは1986年で現在6基の原子炉が並んでいます。
 まずは行き方から。霊光郡各地の玄関になる「霊光バスターミナル」まではソウル江南ターミナルから3時間40分、光州の高速・市外バスターミナル(ユースクエア)からだと1時間で着きます。霊光バスターミナルで法聖浦・弘農経由山城里行き農漁村バスに乗ると約30分で着く終点が原発の正門前です。(なお私はローカルバス乗り継ぎをするため別の方法で行きました。)原発正門の脇には原発職員や用事がある人を当て込んでいるのか食堂があり「朝ごはん」なんて看板が出ていて、硬い雰囲気の原発と面白い対比が見られました。

 正門に向かって左の坂を上ると原発に付属する展示館(広報館)があります。展示館の正面にはずらりと並ぶ原子炉、そして伸びる送電線。絶景といえば絶景かな。

 では中に入ってみます。1階にある展示館の入口をくぐるとまずは地元の名産品PRコーナー。中でも一番目立っているのが霊光郡を代表する名物クルビ(イシモチの干物)です。
 日本でイシモチと言ってもあまりパッとしない感じですが、韓国では高級魚です。その中でも霊光郡内の法聖浦という町で作られるものが「霊光クルビ」としてブランド力があり高価です。原発に干物というと原発銀座でグジ(アマダイ)やカレイの干物が有名な若狭湾にちょっと似てるかも。
 コーナーの端には霊光郡のみならず北隣にある全羅北道高敞郡の観光案内図が一緒に出ています。高敞郡には世界遺産に指定されている支石墓群があるのでそれと霊光クルビをハシゴする観光客は結構多いのではないかと思いますが、原発もハシゴする人はいったいどのくらいいるのでしょうか。

 続いて肝心の電力系展示が始まります。最初はエネルギーの歴史と水力発電から。キッチュな像の後に歴史の図と水力発電所の模型などが続き、あっさり目に終わります。

 水力の次は火力。韓国の原発は韓国電力の子会社が「韓国水力原子力」とエレベーター風の入口の先に炭鉱の坑内様子が再現されていたのはちょっと凝ってる感じ。その後石炭や石油の埋まっている地層の様子や火力発電所の模型が続いてここも水力同様あっさり目。(原発に付属する展示館ですしね。)

 で真打登場。原子力発電の展示と「未来」の展示が2階で一緒になっています。そういえば原子力発電が始まってもう何十年と経ちとっくに過去あるいは現在のものなのですが、なぜか原発というとたいてい「未来」が強調されがちです。いつまでも未来と言い続けなきゃならないということはつまり今になってもまだ確立したものでないってことなんだろうけど。

 「私たちの国の原発技術力」が誇り高く語られ、国産原子炉「APR-1400」や「OPR-1000」の写真が展示されています。そういえば韓国の原発は輸出産業になっているのでした。そういう方面のPRもしているわけですね。

 こちらは原子炉の型の比較。黒鉛減速沸騰軽水炉(RBMK・チェルノブイリのはこれ)、沸騰水型軽水炉(BWR・福島第一他日本に多い型)、加圧水型軽水炉(PWR・韓国にも日本にも多くスリーマイル事故のもこれ)、加圧重水炉(PHWR・日本にはなく韓国では蔚珍にだけ存在)と並んでいます。
 この展示は(2)(3)の急ごしらえっぽい比較展示とは違い、福島第一原発の事故より前からあったようでおそらく「チェルノブイリなんかと韓国の原発は違うんだ」という主張が込められていたんだと思いますが、今年になってさらに「フクシマなんかと韓国の原発は違うんだ」という主張にも使えるようになったわけで作った人には先見の明があった、のかなあ…。

 原子力発電の優位性を主張するコーナー。太陽光・重油・天然ガス・石炭と比べ「原子力が一番経済的です」だそう。それにしても原発の原価計算ってどこまで入れてるものなのでしょうか。日本だったら種々の立地用交付金や寄付金の類や広告費、割引計算しない高レベル廃棄物処理費用(決まってないのに計算できるかという突っ込みはさて置くとして)、や解体費用、そしてフクシマのあらゆる被害額、さらに原発事故に対する「上限なしの」保険があると仮定した時の保険料を入れて計算した原価がどのくらいなるものか見てみたいところです。大事故がまだなく軍事政権時代に立地を決められた韓国はだいぶマシになりそうな気がしますが、それにしてもそう安く済むもんなのかな。

 中・低レベル廃棄物処理場建設計画の展示がありました。慶州の月城原発の近所に建設中で2009年12月には出来てると書いてありますが実際は遅れていて訪問時はまだ工事中です。原発の展示館なんだからこういうところはちゃんと訂正しておいて欲しいところ。そういえば高レベル廃棄物はどうするの?と当然思うわけですが、そこはあまり突っ込んではいけない大人のお約束なのかも。

 でもって五重の壁に守られているから表に放射線や放射性物質は絶対出しません。しっかり測ってちゃんと管理してます。自然には放射線がいっぱいある上レントゲンとかもあって被曝してるんだから原発なんか気にすんな。というこれは毎度のお約束系展示。

 あと原子炉まわりの3分の1スケール模型。こういうのもお約束ですね。

 原発の温排水はキレイでちょっとぐらい暖まったって問題ないって主張。この周辺の海は水深が浅く温排水の影響が広がりやすいため漁業や海苔養殖に対し補償金が出たりもめているそうなので避けて通れないのでしょう。

 原発のオマケのようについてくる太陽光と風力の展示も少しばかりあります。で省エネしようねと続くお約束。公共交通に乗ろうと書いてある辺りには特に異存はありませんハイ。

 最後に温暖化対策のコーナーで「クリーン開発メカニズム」の説明を見てみましょう。先進国が途上国に資金と技術を援助してCO2を削減できたら一定の割合が先進国の削減量とみなされるという仕組みです。で挿絵は白い顔が先進国民、黒い顔が途上国民とのこと。うーん。

 という具合に一通り見物を終えて原発正門からバスに乗ると、車窓に大変激しい原発反対の主張が見えました。

 「熱伝達緩衝板離脱事故」「核燃料棒が破損」「放射能漏出」「霊光原発は148回の衝撃的な故障だらけ」「恐怖感で鳥肌が立つ」「核発電所は閉鎖しろ」「大統領様!信頼なき韓国水力原子力経営陣、ウソに没頭する地域協力民願チームを即刻辞めさせて」(訳は自信なし)に混ざって「あっ!フクシマが!」という文字も見えます。そういえば霊光原発周辺は反対運動や補償要求運動が他の原発より激しいと聞きました。軍事政権時代の計画だったりソウルから遠い過疎地という点では蔚珍原発と似ているような気がしますが、かつて「光州事件」があり今も全然保守党に票が入らないという全羅南道の地域性も関係しているのでしょうか。そういえば韓国では民主化以後の新たな原発立地がまだありません。軍事政権時代の原発立地に原子炉をどんどん増やすという方法をとっています。フクシマの事故後韓国で行われた世論調査でも原発は必要という意見が強いそうですが、半面地元に作られるのはイヤという意見も強いそうですから今後そういう傾向が続くのでしょう。またクルビのイシモチや海苔の養殖など近所の浅い海を利用している住民からすると事故のみならず日常的な温排水の影響を考慮せねばなりませんから危機意識がより高いのかもしれません。ともあれ韓国全4ヶ所の原発を見物した最後にこういうものを見てしまうとさすがに物見遊山気分が吹っ飛びました。
 これで韓国での原発(+PR館)見物の話は終わりですが、全体的に印象に残ったのは「チェルノブイリ・東側」に続き「日本・フクシマ」とは違う、と頑張る姿勢です。日本でも「チェルノブイリとは違う」とよく言われてたのを思い出すところですが、やらかしてみないうちは「こっちはあんなドジじゃない」となって当然なのかもしれません。まあ他山の石はおろかやっちゃった当の日本ですら「おかたづけ」から程遠いうちからやる気満々だったりするほどですし。
 またこの韓国での原発見物は私にとって日本や台湾に続くものだったわけですが、日・台・韓それぞれで絶対安全を説き未来の希望を見せ「他宗派」との差を強調するピカピカのPR館を見て、なんだか新興宗教の施設を巡礼して来たような気分になりました。温排水飲んでそうな魚(慶州の刺身に霊光クルビ)も食べましたからさらに聖餐のパンとワインでも食らったようなもんです。そういえば日・台・韓以外の原発にもこういうPR施設ってあるのでしょうか?たくさん見てもうお腹いっぱいというのも正直な気持ちですが、一方でそんな興味もちょっと湧いた「巡礼」でした。
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韓国の原発(3)蔚珍原発

2011-08-20 | 慶尚北道・大邱(韓国)
 韓国の原発(1)(2)で東海岸南部の原発を取り上げましたが、今回はずっと北上し江原道との境に近い慶尚北道蔚珍郡北面富邱里にある蔚珍原子力発電所を見物したときの様子をお送りします。蔚珍原発は1988年に商業運転を開始したもので、徐々に増設を繰り返し現在6基の原子炉が稼動中です。他の原発と同様に隣接して新蔚珍原発という形で2基建設中と言いますから今後さらに原子炉が集中することになります。この原発は先に見に行った(1)・(2)の原発に比べ大都市から遠く周囲はいよいよ過疎地です。作られた電気が山を越え遠くソウル周辺つまり首都圏で多く消費されることを考えると「裏で作って表で使う」という日本の原発を思い出させられるものがあります。
 まずは行き方から。蔚珍原発は大都市から遠く不便そうですが、韓国の東海岸は道路とバスがよく整備されているので案外移動しやすい場所です。また敷地は町外れではなく大都市から直通バスのある富邱バスターミナルから歩いて10分くらいですので「着いてから」の移動も悩まずに済みます。
 というわけで最初の画像は富邱バスターミナルの外観と内部です。切符売り場と売店が同居する待合所はご覧の通り鄙びていてストーブの姿が好ましく、東海岸の名物カニを獲る様子を写した写真が飾られいい味出しています。

 このターミナルからの所要時間は以下の通りです。
ソウル3時間50分・浦項2時間20分~3時間半・大邱2時間40~50分・釜山3時間50分~6時間・江陵2時間10~30分(途中停車する停留所の数などで所要時間にバラツキがあります。)ちなみにこのターミナルから西の山側に農漁村バスで上がっていくと徳邱温泉という温泉場がありますので原発見物とあわせて寄って行くのもいいかも知れません。なおこの周辺での「乗りバス」の画像はサイトにありますので併せてご覧ください。
 ではターミナルから原発に向かいましょう。原発はターミナルのある富邱の町中(北側)から富邱川を渡った南側の川岸と海岸線に沿った一帯に位置しています。川まではターミナルから200mくらいで、町と原発を結ぶ富邱橋からは原発の敷地が見えます。

 原発側から町のある北側をふりかえったところ。川こそ挟むものの町と原発はすぐそばです。

 原発前の敷地は「蔚珍原子力公園」という名前で公園風に整備され、その中の北側、富邱橋を渡ってすぐの町に一番近い位置には「蔚珍原子力スポーツセンター」があります。いわゆる地元向けの見返り施設ということでしょう。実にストレートなネーミングですね。

 スポーツセンターの先には原発本体への正門があり、その前を奥に進みます。

 無事原発のPR施設「広報館(弘報館)」に到着しました。期待を裏切らない(?)ような近未来っぽい外見です。

 お客がいないので受付係の人も手持ち無沙汰な雰囲気。入口から受付に進むとパンフレット類と一緒に蔚珍原発オリジナルグッズと言える「原発うちわ」を配っていたのでありがたく頂戴しました。あおぐと放射性物質が飛んできそうなステキなデザインです。

 まずキューリー夫人の顔が見え、偉大な人類の進歩、みたいな雰囲気が盛り上げられています。

 その先にとってつけたような急ごしらえの三脚展示が3つ並んでました。内容はそれぞれ「加圧水型軽水炉(国内)・沸騰水型軽水炉(日本・フクシマ)・加圧重水炉(国内)」という図解。本当にただ図解が描いてあるだけでそれぞれの特徴だとかどれが優れているとかいった説明が全くないのが実に不気味です。たぶん「韓国の原発はしょぼい日本のフクシマの原発なんかとは違うカタなんだ」と言いたいのでしょう。

 もう一つ急ごしらえらしい三脚には「人工放射線VS自然放射線」という飛行機にアメリカまで乗ったら、とかレントゲン一回、などいろんな場面での被曝量を示すが図があります。なぜ唐突に?と思ってよく見ると、「福島第一原発事故による韓国への影響」が加えられていて納得。韓半島(朝鮮半島)直接上陸時0.3ミリシーベルト以下とのことです。こんなものを立てるくらいですからフクシマ以降問い合わせが多かったのか、先手を打ったのか、ともあれ日本人のはしくれやってる以上日本のせいでご苦労様ですとしか言えませんけれども…。

 その先にはお約束の原子炉の模型。スケールは3分の1だそうです。

世界エネルギー現況。ウランはあと3600年ももつというわけですが、ウランのとこだけ小さく(再処理時)と書いてあるのはイカサマのような。

 子供向けなのかアニメも常時流れています。働き通しで疲れて死にそうな石油君を助ける謎のヒーローがウラニウム君という筋立て。わが日本のヒーロー「頼れる仲間プルト君」と一騎打ちしたらどっちが勝つかな、とか考えてしまいました。

 パズルゲームのコーナー。結構数があるのは小学生とかの団体さんを見込んでいるのかも。

 人工放射線と自然放射線量の比較がまたありました。よほど好きなのかな。

 でもなんで飛行機に乗った時の被曝量の写真がチャイナエアライン(中華航空)で行先がヨーロッパなんだろう?上述の三脚にあった同様の説明では大韓航空らしき絵でアメリカまでだったのに。被曝量は距離を考慮してかアメリカの0.1ミリシーベルトに対しヨーロッパは0.07ミリシーベルトにしてありますが、韓国から台湾乗り換えでヨーロッパに行ったら遠回りじゃんその分入ってるのかな、とつまらないことを考えてしまいました。

 と思ったらまた人工放射線VS自然放射線。これは最初の方にあった三脚の図と大体同じものです。

 その隣には放射性廃棄物についての展示。それにしても最終処分場作らないまま動かしちゃうんですからどこの国も大胆というか無責任というか、いい加減なものですね。

 その先ではシミュレーションルームで訓練する職員さんの様子が見られ、最後は温暖化対策には原発というお約束がシメになって出口でした。

 と思ったら出口の前に地味ながら気になる展示がありました。非常時の行動や避難についての説明で、先に見た2つの原発の広報館にはこういうものが見あたらなかったのでちょっとびっくりします。

 やっぱり過疎地だから事故や避難ということを言っても大丈夫ということなのかなあ。大都市が近いと影響を与える人口が多すぎて展示できるような具体的な対策として現実味のある話に組み立てられないでしょうからこの手の広報施設としては結局事故はないで押し通すしかなさそうです。その点過疎地だったら避難させる人口が少ないのでとりあえず逃がせるように思えそうではあります。ともあれこれで見物を終え、また橋を渡ってバスターミナルに戻りました。
 最後にちょっとおまけ。ターミナルからバスに乗って5kmほど北上すると道境を越え蔚珍郡に隣接する江原道三陟市に入ります。この三陟市内でも原発建設計画が進んでいたのですが、「フクシマ」の事故後に行われた江原道知事選挙で原発反対派が当選し先行きが不透明になりました。韓国で現在稼動中の原発4ヶ所は全て軍事政権時代に計画・建設されたものですからありがちなカネでつるという以前の話だったと思われますが、三陟の計画は過疎化する産炭地が産業を求めているという面があります。もしこの三陟市の原発ができると民主化後最初の新規の原発立地ということになりその意味でも今後の動向が気になるところです。
 それにしても日本海側は日本も原発だらけですが、韓国の東海岸ももし三陟がぽしゃったとしても従来の原発に原子炉を増設しているので両側ともいよいよ原発だらけです。ということは世界有数の原発の温排水が流れ込む海というわけで、日本海でも東海でもなく原発海とでも呼んだ方がぴったりしてていいんじゃないのかなあ、と思ったのをオチにして3回の韓国東海岸原発見物をおしまいにします。
(西海岸の霊光原発に行った話はこちらです。)
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安東の新バスターミナル

2011-08-16 | 慶尚北道・大邱(韓国)
 韓国東部、慶尚北道の安東市は河回村に陶山書院、鳳停寺と有名観光地が揃い外国人観光客もよく見かけるところです。
 安東のいいところは駅と高速・市外バスターミナルが揃って市の中心部にあることで、バスや列車で着いてからの心配をする必要がない…と以前は言えたのですが、今年(2011年)になって事情が変わってしまいました。駅から北西に5kmほど離れた国道34号線沿い(松峴洞)に新バスターミナル(公式サイト)ができたため、駅に近かった旧ターミナルはなくなってしまったのです。
 以下7月にこの新ターミナルを通ったときの画像を貼っていきますのでしばらくお付き合いください。

 安東は何度か行ったことがあって油断し旅行前の下調べをしなかったので、バスターミナルが移転したことを全然知らないまま夜着いてしまいました。安東なら街中のターミナルに着くから安心、と広い3列シートの優等バスでぐっすり寝ていて、終点らしい雰囲気で起きたら外の様子が見覚えがない広々としたところでびっくり。
 どういうこっちゃ?と技師様(運転士さん)に聞いたら安東のターミナルは移転したんだよ、と答えが返ってきてようやく新ターミナルに移ったことを知ります。(旧ターミナルの画像はここにあります。)


 ターミナル内はよくある新しいバスターミナルという感じでこれと言って変わった点もない感じ。名物の塩サバを売っている辺りが安東らしいくらいかな。(安東は山の中なので海でサバに塩をして運んでくると安東に着く頃よく塩が回っていて美味しかった、といういわれがあります。)最近韓国のバスターミナルで見かけるようになったクレジットカード専用券売機が並んでいるのはさすが新しいターミナルです。


 8時を過ぎていて外は真っ暗。韓国のバスターミナルは街はずれであってもたいがい周りにモーテル・旅館があるので夜遅く着いても安心感があるものですが、ここ安東の新ターミナルは周囲に宿やお店の看板が見当たりませんでした。(タクシーはたくさん停まっているので立ち往生はせずに済むという安心感はありましたけれども。)いずれ賑わうようになるでしょうか。


 ターミナルから道一本隔てて市内バス乗り場が整備されているのはいい点です。ただできれば市外バスターミナルにくっつけて直接乗り換えられるようにして欲しかったところ。またどういうわけか照明がなく真っ暗なのが不思議でした。まさか節電目的とも思えませんがこれはちょっとなあ。


 暗くて見にくいのですが、一応あれこれと市内バスの説明が掲示されています。その掲示や安東市公式サイトの市内バス情報によれば0,0-1,1,2番バスがそれぞれ安東駅(汽車駅)を通るとのこと。各系統それぞれ10~15分間隔で始発6:30終発22:00とありますからとりあえず使いやすいと言えるレベルの運行状況だと思います。
 ちなみに安東の市内バスはソウルで普及しているT-moneyカードが使えますが、これで払うと運賃が100w割引の上乗り継ぎが一回無料とのことですからおトクです。(現金払いの運賃は1200w)
 また観光地へのバス案内もあり、この乗り場を通らないバスも書いてあります。河回村にはターミナル前の道路(国道のことと思いますが未確認なので利用する際は現地で確認してください。)を渡って市内方向に200m行ったところから46番、鳳停寺もそこから51番を利用とあります。また陶山書院には直接行けないので一旦安東駅に出てから67番に乗り換えとのこと。
 これらのバスは便数が少ないので上記の公式サイトなどで時刻を調べておいた方がいいでしょう。(「市内」発の時刻しか載ってませんが、出発地からこのバスターミナルまでの所要時間はおそらくそうはかからないはずなので油断せずその市内発の時刻から待つ方が無難だと思います。)


 私はこの市内バス乗り場から1番のバスで安東駅前まで移動しました。所要時間は約20分、駅に着いてしまえば周りにはモーテルや旅館がたくさんあるのでひと安心です。(なおバスターミナルからの市内バスは駅前を鉄道と並行して走る道路(国道34号線)の駅側に到着します。なので逆に駅からターミナルに行くときは駅から道を渡った向かい側の停留所から乗ることになります。)

 というわけで今回は安東の新バスターミナルについてでした。ターミナルと市中心部の移動で市内バスに乗れるのは楽しいけど夜くたびれて着いたときはやっぱりめんどくさいので、古いけど便利な場所にあった旧ターミナルが恋しくなるばかりです。
※安東の東側から来るバスは新ターミナルに向かう前に安東市中心部を通りますが、その際旧ターミナル付近でも乗降できるようです。切符売り場が存在するのかなど詳細は未確認。
(2011年7月利用)
※追記 安東バスターミナルの路線バスについて新しい情報をいただきました。下記のコメント欄をご覧ください。
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韓国の原発(2)慶州の月城原発

2011-08-09 | 慶尚北道・大邱(韓国)
 韓国慶尚北道の慶州は世界遺産に指定された古都で韓国を代表する観光地の一つです。その慶州に行くなら名所古跡はもとより皇南パンに校洞法酒ああ旨そう、という方面にもなだれこみたくなるところ。しかし先日の旅行ではそうした誘惑に富んだ内陸の慶州中心部はガマンし海岸線だけを抜けました。
 慶州での目的地は海岸線に位置する「月城原子力発電所」。ここは古里原発に続き韓国で2番目のに作られた原発で、現在運転中の原子炉は4基。さらにすぐ隣には新月城原発が建設中です。今回はこの月城原発と周辺の画像を貼っていきますので以下お付き合いください。
 まず位置と行き方から。月城原発は慶州市陽北面奉吉里と陽南面羅児里の境界線上に敷地を広げていて、正門や原発をPRする広報館(弘報館)は南の羅児里側に面しています。
 この羅児里に行くバスは2つあり、1つは慶州バスターミナルからの陽南行きの座席バス150番、もう1つは蔚山の市外バスターミナルからの(慶州市)甘浦行きの市外バスです。私は釜山広域市と蔚山広域市の境界線上にある「古里原発(とりあげた前回の記事)」訪問のあと蔚山から後者のバスに乗りました。
 さてここが羅児だよ、とバスの運転技師様に言われて降ろされたところは東の海岸線を南北に走る国道31号線沿いのどうということもないような集落です。

 国道に沿って広がる町を歩いてみると夏の陽射しを受けた建物の白さが海辺の町らしさを引き立たせ、6月に行ってきた南イタリアをちょっと思い出しました。

 国道から海沿いに出るとどーんと原発を背景にした浜辺が登場。なんでもここでは地引網をするそうです。でもこんなとこで地引き網して魚獲って食って楽しいかっていうとかなり微妙…。釣り具屋もあったりいかにも温排水に寄って来る魚が目当てなんだろうなという感じです。

 原発のまん前で魚かあ…とイヤがってたくせに空腹になると身勝手なものです。耐えられずフラフラと海辺の刺身屋に入ってしまいました。フェトッパプすなわち刺身丼10000ウォンを頼んだらカレイか何かの白身がたっぷり丼に盛られ、メシがご丁寧に2杯分出てきます。韓国で刺身を食べる時のお約束メウンタン(辛い汁物)も出てきてウマいけど食べすぎしばらく動けなくなりました。

 なかなか腹がこなれた気がしてこないのであきらめて満腹のまま刺身屋を出ます。暑い昼下がり原発に向かって歩いていくと浜辺では女の子たちが楽しそうに黄色い声あげて遊んでました。もはや絵的には原発とたわむれている感じ。

 そのうち浜辺に鉄条網が立ちはだかり先に進めなくなります。その鉄条網ギリギリにテント張ってくつろぎながら釣る人がいました。なるべくギリギリまで温排水口に近づきたいというということかな。

 という背景さえ気にしなければごくのんきな雰囲気の中、ふと鉄条網から陸地側を見たら物騒な方面が陣地を構えていてびっくり。そういやここはまだ「休戦」中の分断国家なのでした。ついつい油断してしまいますけれども。原発は戦争になったら格好の標的でしょうからそんな国に建てていていいのかしらんと思ってしまいますが「北」からしても自分の領土なのでそこを汚染させてはマズいだろうという暗黙の了解みたいなものがあるのでしょうか。

 浜辺が行き止まりになったのでバス通りの国道に戻りました。国道沿いに正門(画像左)があり、その前に公園と原発をPRする広報館(弘報館・画像右)が広がっています。

 広報館に入ってみると人類は発展と共にエネルギー消費量が増え、温暖化の問題が浮上、ああ救世主原子力バンザイ、という流れはどこも一緒なので割愛しますが、大きな模型などは少なくパネルでの展示が多いのでややあっさりめな印象です。

 ここの広報館は韓国の原発の歴史展示が他より多めでやや異彩を放っていました。(※韓国に4ヶ所ある全ての原発に広報館・展示館といったPR施設が併設されています。)年表とともに昔実際に使われていた資料や記念品なんかがここ月城原発のもののみならず保存展示されています。

 その中でまず月城原発に関する展示物を見るとカナダ国旗が多く目に付きます。なぜかというと韓国の原発のうちこの月城原発だけはカナダの技術を導入したもので、運転中の4基全てが世界で少数派の重水炉(CANDU炉)であることが特徴なのだそう。(他の原発は全て軽水炉)この重水炉は核兵器生産に好都合という利点(?)もあるというので冷戦時代の軍事政権の思惑が何か絡んでいたのかちょっと気になるところです。なお最初に運転を開始した原子炉は1983年に運転開始とそろそろ30年の設計寿命を迎えるのでそれを延長していいのかどうか物議を醸しているのだとか。

 古里原発や蔚珍原発、また原子力に限らず韓国電力公社自体の資料も並んでいます。歴史的展示物の点数はあまり多くなくまたさして一貫性があるようには見えなかったのですが、それでも実物があるとぐんと興味が増すものです。

 順路の最後の方になると事故の解説がいくつかありました。左の「スリーマイル事故とチェルノブイリ事故の比較」は「スリーマイルの事故はチェルノブイリと違って死人も出てなくて大したことなかった。韓国の主流である(加圧水型)軽水炉はスリーマイルと同じだから安心。」みたいな持っていきかたです。それだとやや苦しい気もしますが。また右のは地震で派手に壊れた日本の新潟県にある柏崎刈羽原発についての解説。わざわざこれを作ったのは柏崎刈羽が日本海側で韓国に近いからでしょうか。この解説では韓国は日本みたいに地震がないという文脈で安心させようとしているようでした。

 で最近作ったっぽいのがこの「PWR(加圧水型軽水炉)・BWR(沸騰水型軽水炉)設計特性と安全性の比較」という掲示。「韓国の原発はPWR、日本はBWR、日本のBWRの方が危ない。」という内容です。

 実のところ日本にもPWRの原発はたくさんあるので日本の原発=BWRという前提なのはおかしな話ですが一体どういうことなのかな。多分BWRである「フクシマ」と韓国の原発は違うと思わせる必要が先にあって作られた掲示なんだと思います。「フクシマ」の事故はあまりに大きくしかも現在進行形ときてますから、それを思い出させてしまう「フクシマ」の文字は極力出したくない。でも何とか韓国とは違うと思わせたい。それでこのような比較になってしまったんではないかと推理してみました。まあいずれにしても福島第一原発の事故でとばっちり食ってるのは間違いなさそうです。「ダメ日本のせいでチクショー」と恨んでる原発関係者(特に広報方面)が韓国はもとより原発を持つ全ての国にいるんだろうなあ。
 展示を見終わったら外に出て展望デッキから原発を望み、隣接する公園に降りてみます。「青い空」「澄んだ空気」「キレイな自然」「原子力の約束」といった押し付けがましいパネルと共に何やら重そうな碑が立っていました。羅山初等学校(小学校)跡とあり、見ると1997年原子炉3・4号基ができるにあたりそこから914m以内が居住制限地域とされ全ての住宅や建物が撤去されることになった→原子炉から500mの位置にあった羅山初等学校は移転することになり跡地に記念碑を立てた、という話です。何ごともなくてもそれくらいの範囲は居住制限地域になるんですね。チェルノブイリや福島を考えると気休めにもならないような距離ではありますが。(914mは1000ヤードですからアメリカで考えられた基準でしょうか?)
   
 そうやって碑を眺めると改めてこの原発の位置を考えてしまいます。慶州駅から直線距離で約27km、同様に太和江駅(旧蔚山駅)から21km、浦項駅から37kmという地点。チェルノブイリや福島の事故を思うとつい遠目の視点になり大きな工業都市に挟まれた位置と考えてしまいますが、実際に行ってみると静かな海辺の集落が続く中に急にドンと原発「だけ」現れるという感じです。(台湾でもそうでした。)前回とりあげた古里原発も今でこそ2つの広域市にまたがる境目にありますが、ということは2つの中心部から最も遠いところとも考えられるわけです。結局20kmとか30km「も」離れているのに近いと思えてくる原発の物騒さをまず考えるべきなのかもしれません。
 そんなわけで月城原発見物を終えたあとは、その北、直線距離でわずか3.5kmのところにある新羅の文武大王陵(大王岩)という海中墓を見に行きました。海岸からだと文武大王陵は遠目の岩くらいにしか見えませんが、その海岸は海水浴場になっていてとてもにぎわっています。

 ここへ来てようやく古都慶州らしさ(?)を感じ、慶州に原発があるんだなあと改めて思いました。
韓国の原発(3)につづく】
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