ミャンマーが揉めています。
日本人ジャーナリストを始め、亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
もちろん今回の惨劇は全く許されません。
流血の惨事を招いた責任が軍事政権にあることを認めた上で、日本の各マスコミがブッシュ大統領に右へならえで、鸚鵡返しのような状態なので、批判を承知であえて一言。
以下、ミャンマー政府に弁明の余地は無いが、あのときあの判断でよかったのか、
ということがイラク開戦を始め、世界には多すぎるので「敢えて」です。
(独善的な見解を含みます)
まずはミャンマーの軍部独裁について。
経済政策で愚策であることは確か。
体制的にはソ連共産党が集団指導制を取っていた頃、フルシチョフ時代に似ているが、トップも失政の責任を取って交替しているので、ブレジネフ時代のような硬直性は見られない。
日本で森総理を四人組で選んだようなものた変わらない。
北朝鮮のような個人崇拝が無いのはもちろん、密告があるような恐怖政治とは違う。
アウンサン・スーチーが強制(矯正)収容所に入れられることはない。もともとソ連・北朝鮮型のものは存在しない。
今の中国共産党とどこが違うのか?
さらに社会主義的な政策をとってはいるがイデオロギー的な面は皆無に近い。
日本のODAでミャンマー政府は武器を作っているとも言われている。
真偽はともかく、もし本当ならそれは日本外務省の問題だ。
ミャンマーの貧困について。
軍部が確かに経済運営ができておらず、無策である。
テレビでは北朝鮮より貧しいと報じているが、一方、批判はガソリンの値上がりで遠くから通勤する人たちの給料が交通費で消えてしまうとか、食料品が値上がりしたとか、そんな批判が多い。
日本人も日本政府にガソリン値上げ反対のデモを行うべき?
飢えとか話はまだ出てこない。
貧困の原因。
軍部独裁とその無策が貧困を生んだのか?
ビルマの戦後史はイギリス植民地支配からの脱却の歴史。
それはまたイギリスが中間階層として連れて来たインド人や華僑の経済支配からの脱却でもある。
軍事政権は長く彼らの利権を剥奪してきた。
彼らアングロサクソン一派は経済制裁で対抗した。
ビルマの選択は、利権をくれてやるか、経済制裁を耐えるか?
国王を追放し王族を処刑した連中を信用はしまい。
イラクのフセイン大統領はアングロサクソン一派に利権を認めてやっている間は、彼らにすこぶる評判が良かった。
中東独立時に一番石油が豊富な場所にイギリスがその辺の砂漠にいたラクダ遊牧民の族長を連れてきて独立させたBPの利権国家・クウェートに手を出したからまずかった。
フセインの命運は尽きた。
アフリカや中南米には独裁国家は山ほどあるが、なぜここまでミャンマーをブッシュは批判するのか?
東ティモールの独立とどうしてもかぶる。
カナダのフランス語圏ケベック州など少数派の独立運動は混乱を招くとしてアメリカは拒んできたはずだ。
強権的なイスラム国家・インドネシアから東ティモールのキリスト教徒を守る?
他にもキリスト教徒がまとまって暮らす地域はイスラム圏にはたくさんあるが。
東ティモールの独立を外国が言い出したのは石油が見つかってからだ。
結局、東ティモールの天然資源はオーストラリアやアメリカの資本の手に落ちた。
さらにインフラの整備には国連や日本の予算が使われるというお土産付きで。
ミャンマー政府が意識しないはずは無い。
ご主人がイギリス人だというのはともかく、スーチーさんの後ろに(スーチーさん自身は意識していないにせよ)多くのビルマ人がアングロサクソンの臭いを感じているのも事実。
天然ガス、宝石、木材などの資源だけでなく、中東からインド洋を経て中国内陸部へとマラッカ海峡を経由しない新たな交易路として地政学的にも欧米が注目しているのも仕方がない。
英米主導の経済制裁に対し、ミャンマー政府は中国を頼らざるを得なかった。
かつては流血を伴いながら華僑資本を追い出したのに。
経済的には中国頼みはメリットよりもデメリットの方が多かった。
金儲けでは中国の方が長けている。
さて事態はここに至たりて今後は?
10年前、全日空がヤンゴン線を運航していた頃、日本政府がアメリカの圧力に負けずに日本企業のミャンマー進出をもっと支援していれば良かったとは思うがあとの祭り。
アウンサン将軍の例を出すまでも無く、日本に対する感情はたいへんいいので、政府は何かできないか。
自由選挙や外資の流入の前に、ミャンマーの民族資本の育成に手を貸せないものか。
大東亜共栄圏の思想だとお叱りを受けそうだが。
予想できるシナリオは、
軍事政権がある程度粘り、その間、中国の影響が強くなる。
しかし結局圧力に屈し、民政そして外資がなだれ込む。
あとは中国とアングロサクソンのぶん取り合い。
その後は、華僑をタイ人化したタイや、外資を上手くコントロールしたベトナム(この国も独裁だが今はアメリカから怒られない)のように賢くランディング(?)、テイクオフ(?)できればいいなと思う。
カンボジアや東ティモールにならないことを願う。
最後に蛇足でミャンマーの僧侶。
南伝上座部仏教国の中でも信仰心が最もあつい国だが、
僧侶の質には疑問符が付く。
これはあきらかに軍事政権のせいだ。
民意を掴むため保護し甘やかしてきた。
一まとめに括れはしないが、タイやスリランカの僧侶のような威厳やオーラは感じられない。
上の写真はミャンマーの観光地パガンだが、いつもカメラを持った観光気分の僧侶で溢れている。
映画館では上映中に大声で話し、マナーの悪さは有名。
少しでも権利が侵されると徒党を組み、警官隊と喧嘩をしている姿はマンダレーなどで昔からよく見かける。
坊さんの喧嘩はミャンマー名物でもある。
かなり意識して軍事政権に肩入れした書き方をしました。
善玉悪玉の二元論ばかりなので敢えて。
そもそもブッシュが大きな声で批判していることからして、眉に唾をしたくなるというもの。
もちろん、暴力絶対反対です。人名尊重はあたりまえの別の話。
照沼一人(文責は社でなく個人にあります)
アウンサンについてはあまり知りませんが、アングロサクソン系ということ、西欧式民主主義NOということは分かる気がします。ともかく武力弾圧には強く抗議しますが、内政に干渉することには断固反対です。
旧作は見ていないので今度探してみます。
CGでつくった映画に食傷気味でしたが、先日、久しぶりに黒澤の「生きる」を観て、新鮮でいたく感心しました。
ちょうど「自転車泥棒」ももう一度、観てみようと思っていたところなのです。
白黒映画ならではの良さってありますよね。
けんたさん。コメントありがとうございます。
欧米型民主主義でも中国型の独裁でも手段は何でもいいのですが、ミャンマーの人が安心して暮らせるよう願っています。