伝統文化★資料室

東京成徳大学・日本伝統文化学科の学生と教員が「伝統文化資料室」から、情報発信します!

歌会の作法

2017-02-11 07:06:00 | 伝統文化★資料室

 『歌会乃作法』(大原重明、昭和2年、郢曲會)は、和歌披講の聖典と申すべき重要な一書ですが、伝統的な和歌会式の構成とはやや異なり、特に歌会の次第のありようには独特の記述があります。むろん、冷泉為系氏⇒大原重明氏の口伝に基づくものなので、たまたまそのような形になったとも考えられますが、何らかの粉本があったのではないかなぁと思っていたところ、まったく同名の袖珍本『歌会の作法』(明治42年、大日本歌道奨勵會)を入手いたしました。全36ページの簡便なハンドブックですが、明治36年発足、御歌所歌人の多くが属し、一万余の会員を擁した「大日本歌道奨励会」の肝煎りでできたもので、簡にして要を得ており、とくに「当座式」はその当時実際に歌会を開催するための要点を記していて、「便宜所のこと」「式場のこと」などの記述中に、昭和2年の『歌会乃作法』と一致する点が数多く見られます。両者の直接の関係は慎重に見定めなければなりませんが、このような先例があったことは、169ページにおよぶ『歌会乃作法』の雛型として注目すべきだと思います。


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