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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

これは「やったらあかん」手続きです。

2016-11-05 06:57:35 | 受験・学校

いじめ訴え自殺 学校側、遺族に説明なく「通学途中の事故」と申請
フジテレビ系(FNN) 11/4(金) 21:08配信 (ヤフー・ニュース)

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20161104-00000933-fnn-soci

この記事ですが、ご遺族が記者会見でおっしゃっていることはほんと、「ごもっとも」なことです。

まだ自死の背景に何があったのか、ご遺族として調べてほしいと要望している段階で、学校側が勝手に自死を通学途上の事故として書類をつくり、スポーツ振興センターの災害共済給付を申請する・・・・。

そういうことは「あってはならない」ことだと思います。

ちなみにこれが自死ではなく「事故」なら、文科省の「学校事故対応に関する指針」で、次のように災害共済給付申請にあたって、「被害児童生徒等の保護者」に配慮した対応が行われるよう、各学校に要請されています。(以下の青字部分が「学校事故対応に関する指針」からの引用)

死亡事故の場合は,災害共済給付制度により死亡見舞金が支給されるが,その請求に当たっては,被害児童生徒等の保護者の感情に十分配慮し,適切な時期に被害児童生徒等の保護者に連絡し,説明を行う

と同時に、このような学校の災害共済給付申請には、もうひとつ、波及的に大きな問題を引き起こします。

それは、スポーツ振興センターの「学校安全Web」にある「学校事故事例データベース」に収録されている過去の事故事例について、「それってほんとうに事故なの?」という疑念を生じさせることです。

ちなみに「学校安全Web」は、以下のURLです。

http://www.jpnsport.go.jp/anzen/

現在、この学校安全Webの事故事例データベースは、学校事故・事件の問題を考えたい人が過去の事例に学んだり、あるいは統計的に見てどうかを検討したりする際、重要な情報源になっています。

その重要な情報源に収録されている過去の事故事例のなかに、まだ事実を確認しなければいけない段階なのに、勝手に学校の判断で「自死」が「事故死」になっている事例が混じってしまっている・・・・ということを、このたびのケースでは示しているわけですね。

ですから、被害者家族・遺族対応の面、過去の事故事例のデータベースの信頼性を損なう面、2つの面で、この学校が災害共済給付の申請において取った対応は、大きな誤りであると私は思います。

ちなみに、もうひとつ付け加えますと。

「エビデンス・ベース」なることばで学校事故・事件研究をしている人が、この学校の災害共済給付の手続きに対して何も怒らなかった、批判もしなかったとしたら、そういう人を信用してはいけません。

なぜなら、自分たちが重視している「エビデンス」の一つ、学校事故事例データベースの信頼性が損なわれているわけですから。

つまり、自分たちの重視している「エビデンス」の信頼性が損なわれるような、そういう対応が行われているのに、怒りも批判も表明できないような人が「エビデンス重視」とか、「エビデンス・ベース」とかいうのはいかがなものか、ということですね。

「あなたたちはいったい、何を大事にものを考えているの?」と、彼らの誇りや矜持を疑います。

あともうひとつ、付け加えますと。

まじめに学校事故・事件の事後対応をしている学校現場の教職員・管理職や、教育行政の担当者も、こういう学校の対応については怒り、批判をしなければいけない。

でなければ、周囲から「あなたたちまで同じようなことするんですか?」という疑惑の目にさらされることになるのでは?

「自分たちはけっして、同じような誤った事後対応はしない」とかたく誓うためにも、「こんな対応っておかしいやろ!」と、学校現場からも、教育行政の内部からも、私としては声をあげてほしいところです。

<追記>

朝日新聞デジタルにも記事がでていたので、紹介します。

http://www.asahi.com/articles/ASJC465Y9JC4UTIL06D.html

 

 


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