ギリシャがユーロ圏を離脱する可能性が現実味を増す中、その「爆弾」がもたらす損失がどれほどに上るか、最大1兆ドル(約80兆円)にもなるとの推計もあるようです。
ギリシャのユーロ圏離脱――「Greek exit(ギリシャの離脱)」から「Grexit(グレクジット)」という造語が生まれ――影響は「計算不可能」であり、どれだけ連鎖反応を引き起こすかによって変わるというのです。
ドイツ金融会社のアナリストによりますと、ギリシャがデフォルトしユーロ圏を離脱した場合の直接的なコストは、欧州諸国と国際通貨基金が保有するギリシャ債権が受ける打撃だけで、数十億ドル(数十兆円)。
また、欧州中央銀行が保有するギリシャ国債は推計500~550億ユーロ(約5.1兆~5.6兆円)に達しており、これらはギリシャのユーロ離脱により事実上、無価値になります。
さらに、中央銀行間のユーロ決済機構を通じてギリシャ中銀はECBに多額の債務を負っており、この債務額は1040億ユーロ(約10兆5000億円)に上ると見られます。
「Grexit」の直接コストの総額は、UBSのアナリストによりますと2250億ユーロ(約23兆円)、DekaBankによれば3500億ユーロ(約35兆円)。DekaBankはこのうちドイツが被る損失額だけで860億ユーロ(約8兆7000億円)と推計しています。
一方、英民間調査機関によりますと、仮にユーロ圏解体が「無計画に」行われれば、損失額の合計はユーロ圏のGDPの5%に相当する1兆ドル(約80兆円)にも上るとの推計を出しています。
莫大な損失になりますが、最も恐れられているのはギリシャのユーロ圏離脱がイタリアやスペインなどの周辺国で銀行の取り付け騒動が起きる可能性で、考えられるシナリオとしては、ギリシャが離脱し通貨ドラクマの価値が半分かそれ以下になった場合、欧州の一部の国で預金者が自分たちの預金も危険にさらされていると考え、取り付け騒ぎが起きることになります。仮にそのような事態になれば社会は大混乱に陥ることになります。
ギリシャ離脱を受けてユーロ圏が崩壊したなら、ドイツ単独の損失額は1兆ユーロ(約101兆円)近くになるとの予測もあり、ギリシャのユーロ圏離脱コストを考えれば、メルケル独首相とオランド仏大統領が初の共同記者会見で、ギリシャをユーロ圏にとどめたい考えを強調したのも無理もないことです。
6月17日の再選挙を前にギリシャで実施されました2つの最新世論調査で、国内紙が実施した調査では、新民主主義党の得票率が23.6%でトップ、急進左派連合は21.4%で2位。
一方、テレビ局の調査では、急進左派連合が得票率28.5%で、新民主主義党の26.0%を抑え首位となったと報じています。