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大リーグの労働協約交渉

2016-12-28 11:57:24 | 労働応報
N国際労働財団より
o.432 (2016/12/19)

大リーグの労働協約交渉に暫定合意

 大リーグ野球選手(アメリカン・リーグ、ナショナル・リーグの現行30球団)についての労働協約が大筋でまとまりつつある。
 協約は5年間、これにより1994年―1995年に起きた7か月半のストライキ及びワールド・シリーズ中止といった労働争議再燃の懸念がなくなり、ストなし26年という長期安定の状況が続くことになる。
 今、日本で話題になっている日本ハムの大谷翔平選手の大リーグ移籍問題は外国選手に関する条項の適用を受けることになるが、多くの中南米選手も影響を受ける。
 合意の主要点は以下のとおりである。

球団選手への報酬最高額を現在の$1億8,900万から2021年までに$2億1,000万に引き上げる。その総額を超える場合は、超えた額に20-92%の奢侈税ないし追加課税を徴収する。
黒字球団から得られた収益金(チケット収入や放映料など)を赤字球団に一定割合で分配する。
通常シーズンを現行の183日から2018年には187日とするが、試合数は162試合と変更なし。
選手の最低年俸は現行の$507,500を段階的に引き上げ、2019年には$555,000としその後2年間は物価スライドする。40人枠に入るマイナーリーグ選手の現行$82,700は2019年には$89,500とし、その後物価スライドする。
通常シーズンのロースター枠(チームの公式戦に出場できる資格を持つ選手枠)は26名とするが、9月1日以降は40名にする。
選手にはフリー・エージェント資格が1回与えられるが、選択の期間は現行の7日から10日に延長する。
フリー・エージェント選手を獲得した球団のうち、奢侈税を支払う球団は第2及び5ラウンドのドラフトを辞退する。それ以外の球団は第3ラウンド・ドラフトを辞退する。
オールスター戦における勝者へのボーナスは$640,000とし、勝者リーグ32名選手に$20,000づつ配分する。
ワールド・シリーズのホーム・グラウンド開催権は現行のオールスター勝利リーグからシーズン中の勝率の高いチームへ変更する。
薬物検査を厳格化しテスト回数を飛躍的に増やす。2回目の違反者には50試合の出場停止、3回目は100試合、以降は無期限停止とする。
海外での試合はロンドン、アジアなどを考慮する。報酬は$15,000から$100,000。
噛みたばこの使用を禁止する。
外国アマチュア選手(23歳以下から25歳以下に変更)への契約金は、弱小球団に多く割り当てられる“外国選手契約金ボーナス・プール枠”を使うが、ドラフト指名権の種類により上限を$475万、$525万、$575万の3段階とする。
球団は年間の医療費及び年金保険額を$2億へと増額する


野球大リーグ・労使関係の長期安定はどうして実現できたのか

 米国プロ野球(MLB) に5年間の労働協約についての暫定合意が成立し、1995年以降、26年間ストなしの安定した状況が続くことになった。
 これに対し、米国4大スポーツのNHL(ホッケー)では2004―2005年、NBA(バスケット)では2011-2012年、NFL(フットボール、審判員)は2012-20-13にストライキが起きている。なぜこうした違いが出るのか?
 マサチューセッツ州にあるスミス・カレッジ、スポーツ科学担当のジンバリスト教授は「基本的には金銭問題が多い。労使の性格の違い、信頼関係の欠如、又は新執行部による秩序確立に伴う軋轢、報酬の配分などもある」と語る。
 労働争議では失うものも大きいが、それ以上に得るものが大きいと考える者がいて、2011年のNBAでは“少数のオーナーと選手”が数十億ドルをめぐって全体を巻き込んで争った。2011年のNFLでは多額の金を巡る富裕オーナーと弱小オーナーとの対立、それに審判の要求が絡んで、レギュラーシーズン全てが廃止された。2011年のNBA、2012-13年のNHLでは収入見込みに自信が持てないオーナーが争議の原因を作った。
 労働組合については、MLB選手会(MLBPA) が最強の労組と言われ、創設当時の1966年に全米鉄鋼労組(USW) から招いたマービン・ミラーにより労働組合としての強い基盤を築き、年俸調停やフリー・エージェント制度などを勝ち取った。強い組合ほど要求を纏めやすく争議になる前に結論を出す可能性が強い。
 NBAとNFL選手会の弱さの一つは、短いキャリアーの中で$200万―500万の高報酬を得る選手たちが、報酬とプレイの機会を奪われるストを嫌うことにある。
 もう一つの違いは、選手報酬に上限を設けるサラリー・キャップであり、1994年のMLBそしてNHLのロックアウトの原因になった。そして1995年にMLBに導入された一定以上の報酬に対する罰則、奢侈税はチームに対するもので個人報酬へのキャップではなくなった。
 サラリー・キャップは選手だけでなく、オーナーにも拒否感がある。収入の少ないチームに高額キャップの選手がいると、チーム間の収益差が大きくなって緊張関係を生み、リーグ・レベルでの財政問題にもつながる。
 以上のように、MLBについては強い組合とサラリー・キャップのないことが指摘できるが、同時に1992年就任のバド・セリグ・コミッショナーの存在の大きさがある。
 彼は名目では全能でも実際には限界あるこの仕事を、時には強権、時には無能と思える采配で、飴と鞭を使い分け、オーナー間の争いを調停し、強いリーダーシップを発揮した。表面上であれ、足並みを揃えさせてMLBを改革し、プロ野球を隆盛させただけでなく、団体交渉へのセンスある取り組みを教えた。
 MLBから学ぶことは、労使双方が組織的に行動できると交渉も効率的となり、ストライキに至らずに交渉が纏まることである。これを他のリーグがどう学ぶか、期待したい。


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