このパネルの右端が入り口のドア
新年早々うれしかったのは、今年の3月に閉館すると聞いた高松市民文化センターへ、名残を惜しみに帰省ついでに立ち寄った時のこと。
ここには図書館やプラネタリウムが入っていて、子供の時は通いまくってた遊び場の一つです。なかでもプラネタリウムは、そんなに星が好きなの?ってくらい行ってました。星が好きって言うか(まぁ好きだけど)、ビデオで映画を見るような感覚のほうが近かったんですが、当時小学生は1回50円の低料金だったこともあり、行きやすく。永久にあると思っていたのに、なくなるとか言うので、その前に絶対1回は行きたいと思っていたら、中学の同窓会の話があって帰省することにしたので、正月の4日から一人思い出めぐりで訪ねたのでした。
今ではもう珍しくなってしまったそうですが、文化センターのプラネタリウムは、プログラムに記載されている番組以外の星空解説を、人がその場で行っていたのが特徴だったでしょうか。録音やビデオを流すのでなく、星空をドームに投影させて、それに合わせてその場で解説員がマイクに向かってしゃべるのです。文化センターのプラネタリウムの星空解説は、いつも同じおじさん。このおじさんの星の解説を、私は百篇は聞いたでしょう。今でも、「ふたご座のポルックス」なんて聞くと、解説のおじさんの声やイントネーションが蘇るほどです。「この星の集まりは、日本では昔からすばる星、と呼ばれてきました。みなさんも名前くらいは聞いたことがあるかもしれないですね」とかね。いまだに、おじさんの星の解説が懐かしくてたまらない、おじさんの星の解説をまた聞きたいなー、と思うこともあるくらいです。
当時プラネタリウムを見ながら、でも私は本当の星空で、たくさんある星の中から星座を見つけるなんて出来ないわ~、と、夜空を見上げもせずに長い間思っていたのですが、小学校高学年くらいの時に、初めて北斗七星を空に見つけた時のものすごい感動を覚えています。ひたすら驚いた、本当の星座のでっかいこと! 私の天球儀はプラネタリウムサイズで出来上がっていたので、夜空の星座のあまりの大きさが想像以上でびっくりしたのです。ちょっとオリオン座見上げてごらんなさいよ、今。でっかいよ~。
沖縄でも、ロンドンでもプラネタリウムに行きましたが、私のプラネタリウム好きは、ここに端を発するのでした。
正月早々なつかしのプラネタリウム、見た番組は「ワンピース」。全然良かったんだけど、チケット売り場の人に「ワンピースですがよろしいですか?」って確認された。そりゃまぁ、大人の女一人が見るわけですからね。観客は、私以外に親子づれの計3人…。正月だからか、さびれちゃったのか。
プラネタリウムの中は、昔私が通っていたころのまんま(ほんとのこと言えば、中どころか外もむかしのまんま)。シートもドームも何もかも。昔よく座っていたあたりにすわって、投影機を挟んで真反対に座った親子の親子喧嘩を聞きながら(塾の宿題かなんかをやらされてた様子。何回教えても子供が間違えるから、母さん相当いらだってた。初歩の英語の問題)、始まるのを待っていたら、入口から初老の男性がささーっと入ってきて、私はあの人に見おぼえがある、昔もおじさんだったけど、いまはもっとおじさんになった、あの人は間違いなく、私の知っているこのプラネタリウムの星の解説のおじさんです!
すぐさま館内の灯りが落ちて、プラネタリウムの開始とともに「さて、ようこそおいでくださいました」というおじさんのアナウンスを聞いて、確信。絶対そうだもん。この人の声を何回聞いたことか、覚えてるよ、今日の星空と関係なく、「ふたご座のポルックス」を言ってくれとリクエストしたいくらい。
私が足しげくプラネタリウムに通ってたのはもう20年も前だし、当時ですらおじさんというよりかはおじいさんに足を踏み入れかけていた印象の星の解説のおじさん、いくらなんでもおやめになってるだろうと思ってました。別の人が解説してたらいいほうで、下手したら全編ビデオになっているかもとも覚悟しての再訪だったのですが、これはちょっとした奇跡じゃなかろうかと思うくらい、まさかあのおじさんがまだ解説をしているとは予想だにせず。そうであればいいなとは思ってたけど、あり得ないことと納得すらしてたというのに。
オリオン座のリゲルとベテルギウス、おうし座のアルデバラン、すばる星、こいぬ座のプロキオン、カシオペア座から北極星を、東の空にはふたご座のカストルとポルックス(!)。
おじさんが指し示す小さな矢印が星をつないで、次々あらわれる冬の星座(ふたご座って冬の星座だったのね。解説し甲斐のない観客でごめん)、ゆったりしてやさしいおじさんの解説。
泣くかと思ったよ、わたしゃ。
50分の投影時間、星座が20年変わらないように、おじさんの解説も懐かしいままで進み、昔と同じように、プラネタリウムの夜空に流れ星が流れ出して、明け方が近いことをおじさんが言い、東の空から太陽が昇って、「この43万都市高松にも朝が来て、今日のプラネタリウムもこのへんでおしまいです」と、締めの文句も変わらぬまま(昔は30万都市でしたが)。あ、このプラネタリウムの基本の場所は常に高松で、高松の夜空に星を探すのです。ドームのスクリーン最下部にはぐるりと高松の昼間の風景(ビル群など←があるのよ)が映されています。
投影が終わってから、私は思わずおじさんに話しかけましたよ。子供のころ、このプラネタリウムによく通ってたんです、昔から解説なさってますよね? と。「もう、ずいぶん長くやってますからねぇ」とおじさん。「子どもの頃いらしてた? じゃあ私がやってましたかね」と。ええ、おじさんがやってました。
おじさんに聞いたところでは、文化センターは建物自体が老朽化して、耐震基準の問題もあるので、建て替えるんですって。同じ場所にまた建つのかどうかは聞きませんでしたが、そこにはプラネタリウムも一応入る予定だそうです。ただ、規模がどうなるか分からないそうで。そうですかー。
全くなくなってしまうわけではないと聞いて、ちょっと安心しましたが、それでも私が通ったこの風景、この建物のプラネタリウムそれ自体は失われるわけで、やっぱりきといてよかったと思いました。
あわよくば、日帰りでもいいから、閉館までにもう1回別れを惜しみに訪ねたい。
閉館は3月11日です。
長々語りましたが、記念に残しとこうと思って。
その後東京に戻り、10日に乳がん検診に行き、健康であることが分かり(←これも記録代わりに書いとく。来年参照するのだ)、仕事も再開、日常に戻ります。
今年もどうぞよろしく。
ロボ太