環境と経営のブログ

環境制約の中でしか存続できなくなった現代の経営のあり方について考えていきます。

日本経済の弱体化と日銀自体の弱体化

2016-10-01 01:24:50 | 総合

1.難解な言葉が踊る日銀報道
 良い戦略は必ずといってよいほど、単純かつ明快である(戦略論の大家R・ルメルトUCLAアンダーソン・スクール教授)。
日銀の戦略は、訳が分からない。マイナス金利を導入するといったり、金利を深堀するといったり、次から次に政策自体が混迷を深めている。その極め付けが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のような一般人が理解しがたい金融政策の標語である。
R・ルメルトは、悪い戦略の特徴として次の4つを掲げている。
①空疎である-難解な表現を使い、高度な戦略思考の産物であるかのような幻想を与える。
②重大な問題に取り組まない-問題そのものの認識が誤っていたら、当然ながら適切な戦略を立てることはできない。
③目標を戦略と間違えている-悪い戦略の多くは、単に願望や希望的観測を語っている。
④間違った戦略目標を掲げている-単純に実行不可能だったりすれば、間違った目標と言わざるを得ない。
(R・ルメルト「良い戦略 悪い戦略」日経新聞社 一部抜粋)

2.日銀の異次元緩和は失敗に終わった
 この9月30日、強気で知られている黒田氏は、カナダ銀行との会合で、「中央銀行が万能ではないことも事実だ」と発言し、金融政策の限界に言及したと報道されている(日経夕刊)。そもそも日銀程度の規模では、世界の金融資本の相手ではないということは、3年半前に本ブログで述べたとおりである。小よく大を制するには、相当の覚悟と叡智に基づいた優れた戦略が必要だったのである。当時から、私には黒田バズーカは優れた戦略だとは思われなかった。60兆円ばら撒けば、あっという間にインフレが来ると踏んでいた。その程度の認識だったのではないか。これは、今でもそう思っていることだ。
 この9月に行われた日銀総括検証は、突込みが足りず、これで検証がなされたとみることはできない。なぜならば、黒田バズーカやマイナス金利政策が2%のCPI引き上げという目標達成にとって有効だったかどうかの検証結果をキチンと提示していないからである。
 一方、2%達成ができなかった理由は、いろいろと説明されている。日銀の分析によれば、「外部環境の変化」と「適合的な期待形成」(この用法も難解になっている。要は、過去のデフレ心理に引っ張られるということ)ということである。しかし、やはり、肝心かなめの異次元金融緩和策そのものの「有効性」に関しての検証結果を聞きたいものだ。
 この政策は、当初は有効に機能するかのようには見えたが、現在では全くと言ってよいほど有効に機能しないということが多くの人の共通認識となりつつある。(9/23日経夕刊によれば、米アクティビストのダン・ローブ氏は、日銀の金融政策を麻薬にもたとえ「コカインを吸うパイプを捨てるべきだ」と発言、米ダブルライン・キャピタルの最高経営責任者(CEO)も日銀の手詰まりを指摘とのこと)
 これと似たような実例がある。旧日本陸軍の高射砲がそうだ。ある時点までは、その高射砲は敵の爆撃機まで到達していた。その意味で、高射砲には有効性があった。しかし、高射砲が届く高度以上を飛行するB29爆撃機が出現すると、高射砲は無用の長物になったのである。ところが、届かないという事実を確認しても、それを検証して、高射砲に代わる対策を講じることなく、延々と無駄な高射砲を打ち続けたのである。打っても無駄だと分かっていても、「勝つまでは」打ち続けるのである。これが旧日本軍の行動パターンであった。
 2013年4月の段階で60兆円規模の金融緩和策は、マネーの量やそれが生み出す期待が物価を上げるという考え方に基づくものであった。しかし、それは吉川洋東大教授が、その翌年に指摘したとおり、そもそも「オカルト経済政策」(参照2014/10/25日経「物価は足し算だ」)だったことが判明したことになる。先に述べたように、日銀の異次元金融は、国際金融資本からは、完全に底が割れてしまった政策となっている。すでに、国際金融資本は、日銀の政策の上をいく戦術に転換している。このことは、すでに本ブログでも示したとおりである。
 この状況にいたっても、2%が確実に達成したと確認できるまでは、この政策をやり続けるという(これを「オーバーシュート型コミットメント」と、やはり難解な用語)。横文字で表現はしているものの、そのメンタリティは、旧日本陸軍のそれと些かも変わっていないようだ。

3.日本経済のリスクよりも日銀自体の財務リスク
 問題なのは、黒田総裁が日銀の金融緩和策に限界はないような印象を与えてきたことである。しかし、日銀は打出の小槌ではない。中央銀行とはいっても、世界規模から見たら、規模は知れている。また資金量も有限であるのは事実である。こういった有限の存在が、無制限に金融緩和できるような幻想を与えつつ、今まで累計200兆円以上もの割高な国債購入や累計で10兆円以上もの株式購入をしようとしてきたのである。
 すでに株価の大幅な下落、国債利回りの低下によって、日銀の財務自体が相当毀損してしまった。GPIFは株式運用で5兆円もの運用損を出しているが、日銀も大きな評価損を出していることは容易に想像がつく。日銀の株価は、次第に民主党末期の時点に接近している。
 私は、そもそも日本経済にとって日銀の介入は必要だったのか疑問に思っている。為替も長期循環波動からいうとそろそろ円安になる時期だったし、民主党政権末期から株式は上昇の兆しが出ていた。異次元緩和がなくても、景気循環の波が円安・株価上昇をもたらしたと考える立場である。
 しかし、リフレ派の人たちには、千載一遇のチャンスと考えたのであろう。我々こそが、日本経済の救世主と考え、異次元金融緩和を断行したのである。その結果として、日銀は実力以上に体力を消耗し、弱体化してしまった。ミイラ取りがミイラになるという箴言があるように、これによる財務リスクが、そろそろ表面化する可能性があるのではないかと大変危惧している。おそらく、国際金融資本もそのように見ていると思われる。

4.日本資本主義は健在か
 日銀(リフレ派)の誤りは、国内の民間企業を信任せず、自らの官僚統制を進め、民間企業の自主独立の気構えを奪った点にあると思う。しかし、これだけの金融緩和をして弱体化した日銀が未だに何とか信認を保ち得ているのは、実は民間企業の集合体である日本経済に対する国際社会からの信認がまだ残っているからである。わが国の経済が信認されていなければ、日銀もどうなっていたかは容易に想像がつくことである。
 福澤諭吉翁が言っているように、民間の経営者は政府や日銀に頼らないように頑張らなくてはいけない。この気骨こそが資本主義の核心ではなかったか。さて、今の日本の経営者はどうか。
ジャンル:
経済
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