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全国青年司法書士協議会より声明が出ました。

全国青年司法書士協議会より「生活保護基準の切り下げ等に反対する会長声明」が出ました。

(以下声明本文。メールアドレス中@を改変)

全青司2007年度会発第66号
2007年11月1日

生活保護基準の切り下げ等に反対する会長声明

全国青年司法書士協議会
会 長 伊 見 真 希
東京都新宿区四谷1-2 伊藤ビル7F
TEL:03-3359-3513FAX:03-3359-3527
E-mail KYW04456あっとまーくnifty.com
URL http://www.zssk.org/


 政府・厚生労働省は2007年10月19日、「第1回生活扶助基準に関する検討会」を開催し、生活保護基準の見直し及び級地の見直しに本格的かつ具体的に着手した。そして2007年10月30日には早くも第2回の検討会が開催され、第3回は11月8日開催予定と、来年度予算編成にあわせて急ピッチでの基準見直し作業が行われようとしているところである。そこで当協議会は、生活保護制度の違法・不当な運用をただし生存権保障の最後の拠り所としての制度の改善をめざし、4年連続「全国一斉生活保護110番」をはじめとして様々な取組みを続けてきた立場から、生活保護基準見直しに関して以下のとおり声明を発する。

声明の趣旨

当協議会は、政府・厚生労働省に対し、
1 生活保護費削減と保護基準切り下げを前提とし、あるいは目的とした生活扶助基準の見直しをしないこと
2 生活保護の基準に関しては、来年度予算編成に合わせた拙速な検討作業を行うことなく、生活保護利用者をはじめ幅広い市民や有識者の声を聴きながら慎重な審議を行うこと
を求める。

声明の理由

1 現代日本における格差と貧困の拡大は無視することのできない社会問題となっている。「生活が苦しい」と感じる人の割合は56.2パーセントに達し(2005年)、一切貯蓄のない世帯も23.8パーセントに達して生活苦の実態を裏付けている。さらに年収200万円を基準すると日本の労働者の4人に1人はそれを下回っており(2005年)、働きざかりの30代や40代の間にも低所得労働者の増加が目立っている。働いても食べていくのがやっと、あるいはそれすら困難という生活困窮世帯が増加しているのである。そして非正規雇用の拡大とあいまって、格差と貧困の固定化・再生産の傾向も目立ちはじめ、低収入ゆえに国民健康保険料が払えず医療にアクセスできない、満足な教育を受ける機会を奪われる、経済的困窮を理由に自死を選択せざるをえなくなった人が1998年から8年連続で年間3万人を超える、といったように市民生活全般に格差・貧困の拡大・固定化の悪影響が及んでいる。

2 生活保護制度を利用する人の数も急増しており、2007年7月現在で153万2385人・109万7420世帯が生活保護を利用している。そしてさらに注目すべきは、その何倍もの人々がわが国においては本来生活保護を利用できるにもかかわらず生活保護制度にアクセスできていない現実があるということである。(生活保護基準以下の生活者のうちの保護受給者の割合(捕捉率)は、概ね2割程度とされている。)これは、行政による教示が不十分なため市民に生活保護制度についての知識が十分に行き渡っていないことに加え、本来生活保護が利用できるにもかかわらず窓口で追い返されたり、違法・不当に生活保護を打ち切られるという保護の現場における違法・不当な運用が珍しくないことにも起因しており、多くの低所得者は、要保護状態にもかかわらず、生活保護を受給できず、最低生活費を下回る爪に火を灯すような生活を余儀なくされ、生活費補填の為に多重債務に陥る人も多々存在する。当協議会は4年連続で「全国一斉生活保護110番」を実施しており、今年度においては全国各地から約1000件に及ぶ相談が寄せられたが、上記のような悲痛な現状を訴える相談が多々寄せられた。

3 このようななかで今般厚生労働省は、いわゆる「骨太方針2006」において「生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直しを行う」とされたことを受けて、生活扶助基準の見直し作業に着手した。そして、報道されているところによれば、(1)「最低生活費にあたる基準額の引き下げ」(2)「基準額の高い地域」に大きな影響の出る「級地制度の見直し」(3)高齢単身世帯でも「1割を超す削減幅」(4)冬季加算の見直し等が提言される見込みであるということである(2007年10月18日付ないし2007年10月20日付「北海道新聞」)。当協議会は、もし報道されているとおり今般の見直しが生活保護基準を切り下げる方向でなされるのであれば、保護基準の切り下げは後述のとおり生活保護利用者のみならず国民生活全般、とりわけ低所得者の生活を直撃するものであるから、その検討は慎重な上にも慎重な配慮が必要であり、広範な市民各層・有識者の意見を反映する具体的な手続き保障が必須であると考える。そして財政難を理由にあらかじめ生活保護費の削減のみを目的とした基準の切り下げは当協議会としては絶対に容認できないものと考える。

4 生活保護基準の切り下げは地方税課税最低限・国民健康保険料減免・介護保険料減額・障害者自立支援法減額(境界層該当)・公立学校授業料減免・公営住宅家賃減免・就学援助・生活福祉資金貸付等々さまざまな制度の基準額の切り下げに連動する。最低賃金の引き上げ目標、年金支給額にも影響を及ぼし、保護利用者のみならず低所得者の生活を直撃するものとなる。さらに、第2項で指摘したとおり、わが国においては本来生活保護が利用できるにもかかわらず生活保護を利用していない(できない)人々が膨大に存在するのであるが、基準の切り下げはその一部を隠蔽する効果を及ぼすことになる。格差と貧困の拡大とその固定化が社会問題となっているなか、その現状に棹差す効果をもたらしてしまうのである。

5 また今般の見直しは「低所得世帯の消費実態等を踏まえ」一般低所得世帯とのいわゆる「水準均衡方式」を基本に行われようとしているところであるが、第2項でも述べたとおりわが国においては行政による教示不十分と窓口における違法運用も要因のひとつとなって、膨大な漏給層が生み出されており、保護が利用できるということを知らずに爪に火を灯すような生活をしている世帯が数多く存在している。そのようななかで単純な比較で保護基準の切り下げを行うならば、前項で述べた他のさまざまな制度の基準の切り下げによる効果とあいまって、絶対的貧困に陥らないための担保措置をとらなければ、保護利用世帯と保護を利用していない低所得世帯の生活水準のスパイラル的な引下げを産む危険性がある。また今回の見直しにあたって参照されているデータは2004年全国消費実態調査にもとづくものであり、その後の、とりわけ昨今の生活必需品の急速な値上がり等の経済情勢の変化を反映したものではない。さらにデータの妥当性そのものの慎重な検討作業も必要である。貧困と格差の拡大の中での政策的配慮も求められるところであり、生活保護基準の検討に当たっては慎重かつ多面的な検討作業が必要とされているのである。また今回のように大規模な基準の見直しを行うのであれば、それは国民生活に直結する作業なのであるから、一部の限られたメンバーによる拙速な検討作業を避け、保護利用世帯及び低所得世帯の当事者の声をはじめ様々な市民・有識者の意見を反映させるための具体的な手続き的保障措置が取られなければならない。
にも関わらず、今回の見直しにあたって、10月19日に第1回生活扶助基準見直しに関する検討会が開催されるということが厚労省ホームページの掲載により公にされたのは本年10月16日(更新を知らせるメールサービスが配信されたのは18日)のことであり、あまりにも周知期間がなさすぎる。そしてその後も第1回の検討会において次回の開催日時は未定であるとされながら、10月25日になって突然第2回検討会が10月30日に開催されることが突如発表された。
そもそも2007年9月19日提出に係る民主党・山井和則衆院議員の質問主意書(質問第27号)に対して、内閣総理大臣は、同年10月2日「厚生労働省においては、『経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六』(平成十八年七月七日閣議決定)に基づき、級地の見直しを含む生活扶助基準の見直しを検討しているところであるが、あらかじめ基準額の引上げ又は引下げといった方向性をもって検討しているものではない。また、御指摘の有識者会議の設置を含め、今後の具体的な検討の進め方については、現時点では未定である」と答弁しているところであり、10月2日の時点で未定であったものを19日に開催するというのは常識的には不可能であり、この首相答弁自体虚偽の答弁であったという疑念を抱かざるを得ない。さらに19日の検討会時点で開催日時が未定である検討会が、日程調整のうえ30日には開催とされるという経緯も常識的には考えられず、19日の時点で厚労省側は虚言を弄していたのではないかと疑われてもしかたない。
これら一連の経緯は、厚労省側の検討作業に対する不誠実さを示すとともに、なるだけ市民の目に触れないところで、多くの市民が事の重大さに気付く前に基準切り下げの結論を固めてしまおうという隠された意図を示すものではないかと思わざるを得ない。この点については厚生労働省に対し強く抗議の意を示すとともに、少なくとも今後の生活扶助基準見直しに関する検討会の開催時期・開催場所・会議資料等については今すぐ公開するように強く求めるものである。

6 以上、生活扶助基準の見直しは、保護利用世帯はもちろんのこと一般低所得世帯をはじめ市民生活全般に多大な影響を及ぼすものであるから、政府・厚労省に対して声明の趣旨記載のとおりの対応を要望するものである。

よって上記のとおり、この声明を発表する。

(以上)
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