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「生活扶助基準に関する検討会」委員各位に要望書を提出しました

要  望  書

「生活扶助基準に関する検討会」委員
慶應大学商学部商学科 教授 樋口美雄様
首都大学東京 都市教養学部教授 岡部卓様
早稲田大学 法学学術院教授 菊池馨実様
慶應義塾大学 経済学部教授 駒村康平様
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部社会福祉学科教授 根本嘉昭様

2007年(平成19年)10月28日
京都市中京区麩屋町通丸太町下ル舟屋町407
長栄ビル4階 鴨川法律事務所
生活保護問題対策全国会議代表幹事
弁護士  尾   藤   廣   喜

大阪市北区西天満3丁目14番16号
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所(連絡先)
電 話  06-6363-3310
FAX  06-6363-3320
上記同事務局長
弁護士  小 久 保  哲  郎

拝啓
秋冷の候、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、当会は、弁護士・司法書士・研究者・市民で構成し、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として活動している団体です。此度、厚生労働省社会・援護局長の私的研究会として「生活扶助基準に関する検討会」(以下、「検討会」と言います。)が設置され、貴殿が検討会の委員に選任されたことを知りました。当会は、現在の社会情勢のもと、検討会における議論を経て、生活保護基準の引き下げ、もしくは一部きり上げによってカモフラージュした総額抑制が強行されるのではないかと強く危惧しております。
そこで、検討会の委員に選任された貴殿に対し、検討会における今後の検討にあたって、慎重かつ多方面から検討していただきたく、本書面にて下記のとおり要望させていただく次第です。専門家として、すでに十分問題点を検討されておられるとは存じますが、論点整理の一助として、本書面をご一読いただければ幸甚です。
今後、検討会における議論が真に市民の生活実態を踏まえたものとなり、一層充実した検討がなされることを祈念しております。
敬具


1 生活扶助基準に関してなされてきた過去の検証の経緯をご理解ください。

(1)水準均衡方式は「一般国民の消費水準との均衡」を図る方式であること

ご存知のように、水準均衡方式は、1980年3月17日から1983年12月10日までの中央社会福祉審議会生活保護専門分科会における議論を踏まえ、それまでの格差縮小方式を引き継いで、1984年4月から採用された方式です。
従前の格差縮小方式は、一般国民の消費水準と比較した被保護世帯の消費水準が低かったため、生活保護基準を引き上げなければならないという目的意識のもとに採用されました。当時高い伸び率を示していた全都市勤労者世帯第1・十分位の消費水準との均衡を図る手法を取り入れることで生活扶助基準の引き上げを実現しました。これに対し、水準均衡方式は、格差縮小方式の成果を受け、当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であるとの評価を踏まえ、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式として採用されました。具体的には、当時において一般国民の消費水準の60%程度をもって妥当とされています。
また、生活扶助基準の過去の見直し作業において、相対的貧困論のみに固執すべきではないことも指摘されています。例えば、1983年12月10日の生活保護専門分科会において、石田忠委員は、「格差はひらかなくて縮小したとしても、例えばいろいろな理由で国民生活が一般的に厳しくなって来た場合、それに比例して扶助基準も下がっていいということにはならないと思う。そういうのは政治目標にはなり得ない。一般国民の生活水準が下がってくることがあったとしても、今まで国が保障してきた最低限のところだけは守るということ以外に政治的な態度としてはあり得ない。だとすれば、格差が仮に縮小してきても、今の60じゃなくて、それが70になっても、まだ頑張らなきゃならないということがあるかも知れないと思う。」と発言しています。
このように、水準均衡方式は、本来、「一般国民の消費水準との均衡」を図る方式であり、「低所得層の消費水準との均衡」や「第1・十分位の消費水準との均衡」によって引き下げることを予定した方式ではないと言えます。

(2)「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」も第1・十分位の消費水準との均衡を図るために直ちに基準を引き下げることは予定していないこと

今回の検討会における配付資料では、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の生活扶助基準に関する意見の概要について、「生活扶助基準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なもの。具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当。」とまとめられています。しかし、これは恣意的に歪曲された要約と言わざるを得ません。「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」は、水準均衡方式を前提としたうえで、今後の基準見直しにあたって第1・十分位の低所得層の消費水準との均衡に着目すべきことを指摘したにすぎません。むしろ、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の報告書では、第2の1に「捕捉率(生活保護の受給要件を満たす世帯がどれだけ実際に生活保護を受けているか)についても検討を行う必要があるとの指摘があった。」と明示され、さらに、第4の2には、「生活保護制度は、他の社会保障制度や社会福祉サービス等を補完する位置にあり、したがって他の制度の保障水準が上昇すれば、生活保護がカバーすべき範囲が縮小し、逆の場合は拡大するという性格を持っている。このため、一般の低所得者対策が十分でない場合、被保護世帯の増加や受給の長期化につながるおそれがある。」などと指摘され、低所得者対策等他施策との連携の必要性が確認されています。「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」は、低所得層に漏給層が含まれていることに十分留意しながら、生活保護制度以外の社会保障制度や社会福祉サービスの実情も踏まえた上で、第1・十分位の消費水準との均衡を図るということを確認したのです。第1・十分位の生活実態を無視し、形式的に消費水準のみを比較して均衡を図ることを是認したものではありません。

(3)貧富の格差が拡大した実態を踏まえて「一般国民の消費水準との均衡」が図られるべきこと

水準均衡方式は、そもそも中間層の分厚い「バルーン型」の社会を前提にしていました。生活保護基準がバルーンの下に張り付いても全体のバランスは崩れない、という前提に立っていました。しかし、その後、日本では急速に国民の間の貧富の格差が拡大しており、厚生労働省の『所得再分配調査報告書』で再分配所得のジニ係数の推移を見ても、1981年には0.314だった数値が、2005年には0.387まで上昇しています。現在は、「バルーン型」の社会から真ん中のくぼんだ「砂時計型」、「ひょうたん型」の社会に移行しつつあると言えます。このような社会では、生活保護基準を最下層に位置づけると、最下層をさらに下方に引っ張って不平等度が増すことになります。現在の格差の実態を踏まえれば、消費水準を比較するにあたって、単に「分位」で並べるだけでなく、その間のジニ係数を出して分析する必要があります。

2 生活扶助基準の引き下げによって多くの市民の生活が悪化することをご理解ください。

(1)生活扶助基準の引き下げは生活保護を利用する市民の生命を直接脅かすこと

生活保護基準は、憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」の基準を定めるものです。生活保護は、社会保障制度の根底にあって広く市民の生存を支えており、生活扶助基準の引き下げは、そのまま生活保護を利用している市民の生命を脅かすことになります。このことは、過去の生活扶助基準の見直しにおいて、厚生省(当時)も確認してきたことです。すなわち、格差縮小方式の見直しを行った1980年から1983年までの生活保護専門分科会における検証において、厚生省社会援護局の金田局長は、1982年11月13日の生活保護専門分科会では、「生保は他の年金等がカットされても別だと考えている。」と発言し、さらに1983年7月20日の生活保護専門分科会では、「他の予算が減ると同時におとせる性格のものではないし、私共は「防衛」といっているが、治安維持のようなもので、暴動が起きたらどうするんだといったくらいのことを大蔵省に対しては言っている。」と発言しています。生活保護が生命と直結する重要な意義を有することを厚生省の社会局長自身が認めていたと言えます。生活扶助基準が、市民の「健康で文化的な最低限度の生活」を真実保障するものになっているかどうかを、憲法25条及び生活保護法1条、3条に基づいて十分に検討していただくことを要望します。

(2)生活扶助基準の引き下げによって一般市民の生活が苦しくなること

生活保護基準は、国民生活に関わる様々な制度と連動しています。したがって、生活扶助基準が引き下げられれば、最低生活基準に連動している様々な基準額も引き下げられることになります。具体的には、地方税の非課税基準額が引き下げられ、それまで非課税であった人が課税されたり、課税額が増えたりします。課税額が増えれば、保育料など各種社会福祉サービスの利用料が引き上げられます。また、介護保険の保険料・利用料、障害者自立支援法による利用料の減額を受けられない人が増えます。国民健康保険料の減免(及び自己負担額の減免)基準を生活保護基準に連動させている自治体も存在しており、それらの自治体では減免から外れる人が発生します。さらに、生活福祉資金や就学援助制度など、低所得者向けの制度を利用できなくなる人が新たに発生します。そして、生活保護基準との整合性に配慮することを謳った最低賃金の引き上げ目標(改正法案)や年金額にも影響が及ぶでしょう。このように、生活保護基準は、各種福祉施策の利用資格、利用時の負担金等はもとより、年金、課税最低限、最低賃金の金額等にも影響し、市民生活の広汎にわたって重大な影響をもたらします。
就学援助制度から外されることによる学校給食費の未納世帯、保育料未納世帯、国民健康保険料を支払えずに「医療難民」化する世帯、介護保険を受けられない「介護難民」が増えるでしょう。また、生活そのものが成立たなくなってアパートを失ったホームレスや「ネットカフェ難民」が増え、ひいては少子高齢化を推進することとなります。これらが、本来国民の生活と命と健康を守るべき厚生労働省の行うべき仕事とは考えられません。

(3)第1・十分位との比較によって「底なし」の基準引き下げにつながること

水準均衡方式は、相対的貧困論に立脚しています。そのため、絶対的貧困論に基づく一定の担保がない状態で形式的に第1・十分位の消費水準との均衡を図れば、今後、生活扶助基準は「底なし」となる危険があります。一般市民の収入が増えなくても、前記のような負担増によって、低所得者の消費実態はさらに下がります。そうすればまた、それを根拠に生活扶助基準が引き下げられ、それがまた低所得者の消費実態を押さえ込むはずです。こうして「貧困化スパイラル」が進行し、人々の暮らしが悪化し続け、生活扶助基準も際限なく引き下げられることが予想されます。
内閣府『平成18年次経済財政白書』の「絶対的貧困」の項によれば、日本においても経済的理由によって「食料、医療、もしくは被服など」を買えなかったという人たちが9%存在していました。この人たちは全国消費実態調査における第1・十分位に相当する人たちと推測されます。生活が圧迫されれば、消費は抑え込まれます。圧迫され、抑え込まれた消費実態を元に生活扶助基準を切り下げることが、本当に「要保護者の需要を基と」している(生活保護法8条)ことになるとは思われません。生活扶助基準は「健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」(法3条)のであり、食料を買えない、医療にかかれないような人たちの生活水準を引き上げることこそが本旨のはずです。実質的な生活保護漏給層との「均衡」は、結果的に「健康で文化的な生活水準」を切り崩すことに帰結すると思います。
 
(4)生活保護の間口が狭まること

生活扶助基準が切り下げられれば、生活保護制度の間口が狭まり、生活保護を受けられない人たちが出てきます。
日本の捕捉率が極めて低い水準にあることは、各種の先行研究によってほぼ明らかになっています(橘木俊詔・浦川邦夫『日本の貧困研究』P125)。生活扶助基準を云々する前に、全国消費実態調査で明らかになった所得と資産の状況から、政府が自らの責任において「捕捉率」を推計し、それの解消に向けた作業を行い、しかる後に水準均衡を図ることが本来の進むべき道筋であり、また「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」を真に継承する作業だと思います。実質的漏給層を放置して、それとの「均衡」を図るとは本末転倒ではないでしょうか。
委員の皆様が、国民の生活保護を受ける権利を制限し、剥奪することがないよう、切に願います。

3 厚生労働省が生活扶助基準引き下げ・総額抑制のために検討会を利用しようとしていることを十分ご理解ください。

(1)結論が先にあること

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(いわゆる「骨太の方針2006」)は、歳出削減に向けた見直しの一環として、2008年度までには確実に生活扶助基準の見直しを実施するとしていました。2008年度の予算編成を踏まえれば、検討会における検討内容が「骨太の方針2006」に掲げた上記見直しを実施するための根拠とされることは必至です。厚生労働省は、基準引き下げ、もしくは一部据え置き・切り上げを伴いつつも総額としては抑制するという結論を先に持っており、検討会はそのための「アリバイ作り」に利用されるのではないかと懸念しています。

(2)厚生労働省が検討会の議論を形骸化させようとしていること

これは、先生方には、あえて申し上げる必要のないことであろうかと存じますが、「結論が先にあること」の事情から見て、検討会に提出される厚生労働省の資料は、基準引き下げという結論に検討会の議論を誘導するための資料である可能性が高いことが懸念されます。とりわけ、全国消費実態調査特別集計に基づくデータは、膨大な資料に基づいて長時間かけて準備されたものであり、本来であれば、基礎資料の分析なしに短期間に検証を行うことは不可能と言えます。にもかかわらず、厚生労働省は、多忙な検討会委員の先生方に対して、敢えて十分な準備期間を用意することなく直前に資料を配付しています。検討会委員の先生方の日頃の研究活動に基づく批判的な検証を事実上回避することで、厚生労働省の用意した結論に誘導しようとしているように思われます。

(3) 厚生労働省が国民不在のまま検討会を進めようとしていること

厚生労働省は、検討会を国民不在のまま開催しようとしています。今回の検討会では、「水準」(生活扶助基準)の他、「体系」「地域差」「その他(冬期加算、勤労控除)」についても検討の俎上に上げられており、これまでの経緯からすれば、これらは審議会で議論されるべき次元の問題です。その点で、今回の検討会の開催は慣行上も異例と言ってよいでしょう。
そのうえ、厚生労働省は、検討会の開催を直前まで隠していました。2007年9月1日、北海道新聞は、厚生労働省が近く有識者らによる検討チームを設置して生活保護費の削減を検討すると報じました。この報道を受けて、民主党の山井和則衆議院議員が同年9月19日提出の質問主意書で有識者会議の設置の予定等を尋ねたところ、内閣総理大臣は、10月2日、「現時点では未定である」と回答していたのです。ところが、10月19日、第1回検討会が開催されました。第1回検討会の開催の告知は、厚生労働省のホームページ上にわずか3日前の10月16日になされ、市民の傍聴の機会が十分に確保されませんでした。このような手続きに対しては、当会会員を含む多数の市民が厚生労働省に対して抗議を行いました。しかし、第2回検討会の開催についても第1回検討会と同じ事が繰り返されました。厚生労働省の事務方は、第1回検討会の席上、第2回検討会の日程について「未定である」と説明していましたが、そのわずか6日後の10月25日、厚生労働省のホームページ上に同月30日に第2回検討会を開催すると告知されました。さらに、10月26日の段階で、厚生労働省は第3回検討会開催日は未定と答えています。先生方は、いつ厚生労働省から今回の検討会についての打診を受け、いつ第2回、第3回の検討会の日程を入れたでしょうか? なぜ、国民の知る権利を保障しようとしないのでしょうか? 確定している日程を直ちに公表するよう厚生労働省に要望してください。

4 厚生労働省から示されるデータを用いての検討の妥当性や限界、データ自体の信用性に留意した上で生活扶助基準を検討してください。

(1)生活扶助基準は本来「需要」に着目すべきものであること

生活保護法8条1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」と定めています。水準均衡方式においては、上記「需要」を測定するために、全国消費実態調査の特別集計に基づく「消費水準」が基礎データとされてきました。しかし、全国消費実態調査が正しく「需要」を拾い上げているか否かについては十分な検証がなされていません。とりわけ、苦しい生活を送っている低所得層は、本来の需要を抑制して消費を控えているはずです。市民の「需要」を測定するために、「消費水準」以外の要素を考慮する必要性やその方法についてきちんと検証する必要があるのではないでしょうか。また、例えば、農村地域では、近所付き合いにお米や野菜の贈答などが日常的に介在し、市場で購入する以外の物品が交際のために必要となっていることも考えられます。全国消費実態調査では出てこない「需要」の存在についても慎重な検証が必要です。

(2)全国消費実態調査のデータに基づく検討には限界があること

今回の検討会に提出された資料では、全国消費実態調査から「夫婦子1人世帯(有業者あり)」と「単身高齢」をそれぞれ取り出し、該当するデータをすべて打ち込むとともに、該当世帯の生活保護基準額をすべて出してその平均も出しています。しかし、全国消費実態調査は、2004年に実施されたものです。前回の全国消費実態調査からすでに3年が経過しており、現在の消費実態を反映しているか疑問があります。また、全国消費実態調査は、2004年9月から11月にかけて実施されたものであり、調査項目は多いものの、家計調査と異なり通年で実施していません。単身者にいたっては10月と11月のみです。そのため、季節物の出費などが反映されてしまい、「はずれ値」の出ることが避けられません。本来、集計にあたってこのような「はずれ値」を除外する必要がありますが、夫婦子1人世帯の第5・五十分位の「和服」の支出が突出してしまっている点に鑑みると、今回の集計ではそのような処理がなされていないと考えられます。このような信用性に疑いのあるデータに依拠して検討することは避けるべきです。
この間、原油価格の高騰によって各種日常生活必需品が値上がりしていることは、各種報道で伝えられている通りです。このような時期に、3年前のデータに基づいて「見直し」を強行すれば、生活の立ちいかなくなる世帯が多数生み出されてしまいます。

(3)第1回検討会で提出された資料にはデータとしての信用性に疑いがあること

今回の検討会に提出された資料のデータには、前記「和服」の支出以外にも問題があります。
まず、夫婦子1人世帯のデータにおいて、エンゲル係数が所得に比例していない点に大きな疑問があります。資料3の6頁によると、単身高齢者では分位が上がるにつれてエンゲル係数が低下しています。夫婦子1人世帯についても、本来、分位が上がるにつれて、単身高齢者のようなカーブを描くはずです。ところが、資料3の4頁に記された夫婦子1人世帯のデータでは、エンゲル係数がすべて2割程度で推移しています。
そもそも、夫婦子1人世帯と言っても年齢的には相当に幅があります。子が成人している50代世帯と、幼児を抱えている30代世帯とでは支出の内容も変ってくるはずであり、本来両者を同一に扱うべきではありません。第5・五分位でも教育費が月額8116円にとどまっているのは、成人した子と同居している高収入の世帯が相当程度入り込んでいることによると考えられます。標準世帯(33歳夫、29歳妻、4歳子)にあてはまるデータが少なかったものと推測できますがが、子が未成年の世帯で集計するなどしない限り、ばらつきが多く、到底データとして使えるものとは言えません。
また、資料3のデータを前提にしても、一般低所得世帯がかなり食費を切り詰めていることがわかります。資料4の9頁及び10頁によれば、保護世帯のエンゲル係数は3割に達していますが、単身高齢者のエンゲル係数、夫婦子1人世帯のエンゲル係数ともにこれを下回っています。このような低所得世帯と比較して生活扶助基準を引き下げるということは、食費を切りつめた生活を強いることになるのであって、生存権保障の見地からは本末転倒と言わざるを得ません。資料3の4頁には、これらの比較に基づいて「生活扶助基準額はやや高め」と表現していますが、むしろ、低所得層が生活保護水準以下に落ち込んでしまっていることを問題にすべきです。
さらに、仮にエンゲル係数3割が妥当であるとすると、単身高齢世帯で第3・五分位程度(155000円のうち35000円)は食費に使えないとおかしい、ということになるはずです。ところが、実際には、第1・十分位で22650円、第1・五分位で24500円とされています。その他、資料4の10頁で被保護単身世帯(60歳以上の場合)の交際費に着目すると月1149円となっていまが、高齢者は友人知人の葬祭も多くなっており香典代がかかります。月1000円程度によって社会生活における交際が実現できているとは考えられません。
マーケット・バスケット方式による理論生計費を算出し、真の「需要」に即した検討を行うべきと思います。

5 以上申し上げましたとおり、今回の検討会への諮問の経過と内容には、あまりにも大きな問題があることは明白です。
貴殿におかれましては、改めて、被保護世帯を含む低所得階層の人々が、真実「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることができるものなのかどうかを、理論生計費(マーケットバスケット)に立ち返って十分に検証、計算してみることを再考していただくことも必要であると考えます。今回の基準見直しにつきましては、いたずらに結論を急ぐことなく、十分な資料の検討に基づいて議論を尽していただきたく、お願い申し上げます。
また、生活保護制度を利用している当事者の生活実態の分析を十分になさせたうえで、さらに、当事者や関係団体の意見を十分聴取し、基準見直しの是非を検討していただきたく、お願い申し上げます。
以上                   
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