[神主神気浴記]

田舎町の神職が感得したご神気の事、ご相談をいただく除災招福の霊法の事、見聞きした伝へなどを、ほぼ不定期でお話します。

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クエビの神スクナビの神 47

2014-04-29 | つたへ
 
 再び、久地達がクラミの洞穴に終結した。
 飛と龍二が雲を使って洞窟の入り口付近を明るく浮かび上がらせた。
 久地とタニグの神が奥正面の岩戸の前に到着すると、正面にほのかな灯りが燈された。

 「遅くなってすまなかった。久地の尊たちに来てもらった」タニグの神が前に進み出て岩戸の絵に声をかけた。
 すると、絵がぼんやりとだが少し明るさを増し、動いた。
 「お待たせした、我らは再び参上した。直ちにお救い申す」久地は岩戸の絵に向かって話しかけ、於爾の猛を前に呼んだ。
 「於爾の猛、郷主より預かったミハカシをご神前に奉納してくれ」
 「ハイ、尊」
 於爾の猛は一礼して、於爾加美毘売から剣を次々と三振り受け取り、一振りをタニグの神に他をご神前に奉げた。
 次に和邇の猛が族長より預かった御酒を椀に注いでもらい、それに榊の小枝を浸して神前を丁寧に祓った。

 すると、岩戸自体がさらに明るさを増し、絵が浮かび上がった。
 そのとき、じっと絵を凝視していたタニグの神が、剣を抜くや否や岩戸の下方へ振り下ろした。 
 「キィーン!」 音を立て火花が飛んだ。
 すると、岩戸の絵は一気に明るさを増し、銀色に輝いた二匹の於呂知の姿が眼前にクッキリと現れた。於呂知は眼をカッと見開き首を一振りすると、いきなり絵の中から頭を出し、それぞれが剣を口にくわえて絵の中に消えた。
 後ろにいた全員が、思わぬ出来事に一歩下がった。

 やがて、絵があった所がゆらゆらと大きく揺らぎ始めたかと思うと、そこから今度は二人の男が出てきた。手には先ほどの剣を持ち銀色の甲冑を付けた若者である。
 「吾れはスクナビと白す」色黒の方の若者が云った。
 「吾れはクエビと白す」もう一人は色白であった。
 共に理知的で品性を備えた顔だちをしている。
 「私は久地幸村と申す。吾れらは西の大耶の郷より参った者。タニグの神に出会って事の次第を知り、取って返した。まことにタニグの神に出会ってよかった」
 「吾れらはオロチ族の神、共にスサの神である。こたびは、西の大神岳から来る神を待てとのお告げがあった。やはり久地の尊たちがそうであったか。かたじけない」
 「お待たせしてしまった。これでスサの三神が揃い申した。我らは大元の神より消えた民を探すことを託された者。神魂布瑠の森を発ってよりようやくここまで来た。タニグの神の申す事を聴けば、スサの神たちと行動を共にし、仙境とやらに向かえば、それらの民の行方が分かるやも知れんと思った」
 「久地の尊、このスクナビとクエビは先観の物知りで、特にクエビは知恵者だ。私より仙境にある国や仙都のことについて知っている」タニグの神が、久地や本宮に告げた。
 
 「昔者、自ら海を渡り来て、一匹の蛇に導かれこの葦原に住みき」と、スクナビの神が言った。
 「消えた民とは、この地、葦原に最初にたどり着いた民たちのことだ。しかも、一匹の蛇に導かれてこの葦原を発見した。彼らは、葦など水草の根、すなわち水辺のくろがねを知る民であった。それゆえ、この上陸地点に導いてくれた黄金の蛇を神として祀った。そしてここに留まった後、対岸に流れ来る川の黒水をたどり更に山へ向かって行き山砂を発見し、その地をスサと名ずく」クエビの神が説明してくれた。
 「山へ入った民たちはその後、西と東の目印の大岳に分かれ今に至っている。この大岳は大噴火で大火岳と呼ぶが、その民たちはおもと山と呼んだ」スクナビの神が付け加えた。
 「そこに坐す神が大元の神。これが正解だな」久地がポンと手を打った。 
 
 「そうでしたか。私の説もあながち間違ってなかったな。それで・・、スクナビの神とクエビの神、仙境とは何所にあるんですか?」
 「吾れらも仙境は何所其処にあるとは云えぬのだ。なれど天橋立が現れたとき、その先に現れる。行き方はスクナビが詳しい」
 「仙境にはアダシヒトの国があり、表側が仙都をアカルタヘという常春の国。裏側は仙都をアラタヘと云う常冬の国である」
 「なんですって、仙境には表裏があるんですか?」思わず本宮が大きな声で言った。
 「そうだ!」クエビの神が答えた。
 「空に浮かぶ巨大なコマのようだと聞いたが・・ クエビの神」
 「巨大なコマを上から見るとすれば、都伎のようにほぼ丸い。その下半分がアカルタヘ、上半分がアラタヘだ。コマのような浮いている仙境を正面から見ると、常に仙都アカルタヘしか観えない。アラタヘは常に裏側になっていて、裏へ回らないと見えないのだ」
 「なるほど、月のように裏側は見えないという事か。だから冬なんだな。仙都にはどんな人たちがいるのかな?」

 「表の仙都は、仙人の住まいする所だ。神たる女王テルタヘと妖精と仙衆。仙衆は聖とも云うが、日の吉凶を知る日知り、また、その道で知識や技量が特に優れている者がいる」
 「裏側が例のワルサの国か・・」
 「裏の仙都には神になれなかった女王の弟のワルサとその手下のよりまし、そして妖精になれなかった妖怪、それにエダチの兵などだ」
 それらを聞いている全員に緊張感がみなぎってきた。

 つづく
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