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やっぱり、「ICHIBAN」は祝福してくれた。



    やっぱり、「ICHIBAN」は祝福してくれた。




 午後4時半。
「おい。5万円貸してくれ。」
 僕は、相手に嫌を言わせない激しさで右手を出した。
「今日もいかはるんですか?」
「当たり前だ。
 今日は必ず勝てる。保証する。」
「何で?」
 相手が不審そうに訊いて来た。
「あのな。
 今日は、僕の「愛欲上野篇」が届いたんだぞ。
 あの懇意にして来た「ICHIBAN」が、祝儀をくれないわけがないだろう。
 だから、必ず勝つ。」
「……。」
 がんこ堂は、ものも言わず、自分の仕事にかかった。
 人の世の機微をわからないやつとは話しづらいな。


 僕は、「海物語・お祭りモード」の前、
 もっと言うと、昨日も一昨日も相手にした台の前に座った。
「この台は、まだ爆発していない。」
 それが僕の根拠だ。


「お前な。
 最近、少し、可愛くないぞ。
 あまり素っ気ない態度ばかりとってると、
 彦根を棄てるからな。
 そしたら、お前とは一生会えなくなるんだぞ。
 そこいらをよく考えて、今日は僕に対応しろよ。」
 勝負を始める前に、まず一言、くぎを刺しておいた。


 僕の言葉に、台も店長も考えたらしい。

 1万円。
 そして2万円。
 アッという間になくなった。


「そうか。
 そうかよ。
 ふ~ん。お前はそういう腹なんだな。
 わかった。
 よくわかったぞ。彦根パチンコ「ICHIBAN」。
 今日5万円全部敗けたら、
 僕は、すぐに彦根を出る。
 上野のエスパスと仲良くする。
 二度とお前の顔を見ない。」
 そうどついて、
 僕は3枚目の1万円札を入れた。


 ・・・。


「お前な。
 本気で僕を馬鹿にしてるのか?
 わかった。
 この1万円がなくなったら、すぐに立ち上がる。
 さらばだ。」

 と宣言して、
 もう、やけくそで打ち始め、
 29000円がなくなったその時。


    スーパーラッキ~!


 可愛い声がした。

「そうか。お前。考え直したか。
 それでいい。
 そのまま出し続けろよ。」
 僕は少し声を優しくして言った。


 すると、どうだろう。

 出るわ。出るわ。メチャ出るわ。
 29000円分は、あっという間に戻って来た。
 それでも止まらない「海物語・お祭りモード」。
 11500個まで貯まった。


 で、
 時計を見たら、7時50分。
「そうか。7時50分か。
 最近は10時帰宅パターンが多かったから、
 今日はここいらで止めておこう。
 まだ爆発までは行ってないから、
 それは明日の楽しみにとっておこう。」
 僕は、あくびなんぞをしながら、席を立った。


 13000円の勝ち。
 まあ、祝儀としては妥当な金額だな。


「ありがとう。彦根パチンコ「ICHIBAN」。
 お前の厚意は、しっかり理解したからな。
 明日もまた会おうぜ。」

 僕は「ICHIBAN」の建物に、丁重に頭を下げ、
 「本のがんこ堂」に向かったのであった。


「おい。
 元金の5万円と、
 勝ち金の1割の1000円。今日の利息だ。」
「勝ちましたか。」
「当たり前だろう。
 最初から、今日は勝つって言ってたじゃないか。ハハハ。
 よし。
 今夜は、お前さんの奢りで、僕の払いの出版祝賀会だ。
 往くぞ。」

 精神的ゆとりを感じさせる発言の世川行介君であった。
 明日になったら、また文無しで、
 パチンコ代を借りるくせして、ネ。





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