なみもよう

詩やら短歌やらをかきます

unloved

2017-07-31 08:01:10 | 小説
15歳になったら、悪魔が囁くようになる。気をつけなさい。

涼介が小さい頃から、育った施設の大人達から聞かされた言葉だ。涼介は孤児で、自分の親が何故いないのかは知らない。ただ、特別だから、この施設に居られるのだということだけは耳にたこができるほど入念に教えられて育った。
そして今日、涼介は15歳になった。
鉄格子で縞々になった朝日が、窓から差し込んでいる。鳥の声が届き、涼介は窓から鉄格子の向こうの空を見やった。そこから見える小さな景色には白は見当たらず、快晴であることが伺えた。

「人類ってさ、滅ぶべきじゃない?」

突然降ってきた雨のように、その言葉は自然と頭に浮かんできた。それは囁きと言うより、情動というか、衝動というか、心の底から湧いてくるようなものに涼介には感じられた。

「人類って、滅ぶべきじゃない?」

なるほど、これが悪魔の囁きというものか。涼介はベッドを抜け出し、施設の廊下を裸足のまま歩いていく。施設に、危険なものが落ちていることはない。今まで住んできた経験上、涼介はそれをよく知っていた。
涼介の目は、人よりよく見える。単純な検査でわかる視力は1.8程度。ただし、それに加えて、涼介の目は見たいものを何でも見ることができる。
涼介の目標は施設長。涼介の目には、ホースを片手に花壇に水をやる施設長の姿が見えていた。
涼介は迷いなく足を進める。一際明るく日の入るドアを開けると、中庭に出た。

「先生。」

涼介は、ホースを片手に花壇に水をやっていた施設長の背中に、声をかけた。
施設長は振り返る。そして来ることが分かっていたかのように、不自然なほど自然に微笑んだ。ホースの水を止めると、涼介に向き直る。

「涼介。誕生日おめでとう。」

そして両手を広げる。涼介はその胸に飛び込んだ。

「ありがとう、先生。」

「朝一番で、悪魔が囁いただろ?」

「うん、でも、言われてたから、大丈夫。」

大人の、しっかりした手に頭を撫でられ、涼介は面映そうに笑った。

「だって滅ぼすべきなんだ、そのために僕は君たちを作ったのに」

拗ねたような悪魔の囁き。

「ここの施設で育って、幸せだって思うから、俺。だから、悪魔の囁きなんてさ、意味ないよ。」

涼介は笑う。
施設で育つものは、みな、純粋だ。施設長は満足げに笑みを返した。
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