濃い紫色のラッパがぽっぽっぽっと開き始めた。
午後2時。今朝のほころんだばかりの輝きは失われたとは言え、まだ堂々と咲き続けている朝顔である。
朝から夕まで”時間”が停止してしまったかのように変化しないこのどんよりとした空の下、朝顔は閉じる隙を見失ってまだ咲き続けている。
以前ポルトガルに行った時にエンジ紫色の昼顔がそこここに咲いて美しく、育てたいと思い種を捜したがどこにも実っては居なかった。ドイツで咲く昼顔の中にも美しい白い花の種類があり(写真下)これも種を見かけない。
我が家に咲く、上の写真の紫の花は正確には丸葉朝顔である。
イポメア ヴィオラセア L. はアステカ名をTililtzinといい、南メキシコではぺヨーテなどに並んで、もっとも重要な幻覚剤として尊ばれている。預言者はこれを儀式に使い、または薬としても利用される。この種子の粉末に水を加えて抽出液を服用するか、種そのものを噛む。
催眠効果と同じ働きがあり、忘れた記憶や真実を引き戻す事も出来るという。
何種類かのアルカロイドの含有量はTrubina corymbosa(ヒルガオ属)よりも5倍強である。その中にはLSDと類似した構成のアルカロイドが含まれているので場合によってはLSDトリップに似た幻覚がおこり、数時間の異常をきたすそうだ。その他の副作用としては嘔吐感、倦怠感がひどくなる事だというし、いずれにせよ過剰反応する場合もあるから試さない方が身のためである。
知人Mは昔この話を聞きつけ、丸葉朝顔の種を集めた事があるそうだ。
全て準備万端でさて夢の世界へいざ向わんと、種の粉末を溶いた液を口元に運んで舌先が液を感じたその時、彼の脳裏に幾つかの場面が浮かんだ。
これを飲んで幻覚を見て恐ろしい目にあったらどうしよう-《目を見開いて凍りついた顔のアップ。》
これを飲んで幻覚が消えずにそのまま気が変になったらどうしよう-《包丁を振り回して踊りまくっている図。》
これを飲んで心臓が苦しくなって、お腹も痛くなったりしたらどうしよう-《突かれた丸虫のように縮んでいる図。》
これを飲んで一人孤独に死んでしまったらどうしよう-《部屋の片隅でミイラ化している自分の姿》
彼は残りを即流しに捨てた。賢明である。
それからの彼の行動と言うのが面白い。まず冷蔵庫に飛んで行きオレンジジュースのパックを2本取り出し、そのままがぶがぶと飲み続けたのだそうだ。
何故か? 丸葉朝顔のほんの少量の毒が彼にオレンジジュースを飲め!と命じたわけではない。シトロン系の果実汁は麻薬を中和すると彼が固く信じていたからだ。
まあ、兎に角何事も無く、ただオレンジジュースで膨れた腹をタプンタプンと持て余すだけに終わった。まったくご苦労様だがそれでよかったのだ。
昔、朝顔の葉のおひたしをいただいた事がある。朝顔の葉は毛が生えてざらっとした表面を持っているのでおいしそうにはとても見えないが、ゆがいてしまうともちろんのことしんなりするのと同時にヌメリがあって醤油とおかかで頂けば、案外乙なものであった記憶がある。
今手元にあるのは丸葉朝顔ばかりなので食べられない事は無いだろうが、その時の味を確認する事は出来ない。
私の思考は油断するとすぐに食べることに向ってしまいどうもいけないのでここで方向修正を試みる。
有名な千の利休の逸話のなかに”朝顔の茶会”と言う話があった。
利休の庭に朝顔が咲き乱れて美しいという噂を聞きつけた秀吉が訪ねて来るというが、その日利休は朝顔を全て摘み取ってしまう。秀吉は内心不満に思いつつ茶室を見やるとたった一厘の朝顔が生けてあり、その美しさに感心した。という事である。一厘の花の持つ美しさは全ての朝顔の美を凝縮して格別であった事だろう。
どんな色の朝顔が咲いていたのだろうか?私はどの朝顔も好きだが特に5月の空のような空色の花が好きだ。
一厘の朝顔もいいが、朝顔が咲き乱れる利休の庭を見たいものだ。
さて、丸葉朝顔の葉っぱをしこたま食べたら、見る見るうちに私の頭から紫の漏斗のようなラッパがにょきりと生え、両人差し指からどこまでも延びる蔓が伸びだし口から種をまき続ける。。。などという幻覚に悩まされる事になるかもしれないので実験をためらっている。
参考サイト:メキシコの幻覚性物質を持つ植物
参考文献:神々の植物
追記:この記事を書き終えてからやはり私の好奇心は丸葉朝顔の葉を食べようとうるさいので、数枚を茹でてみた。
齧って見ると朝顔のときよりはヌメリが無い。
個体差かもしれない。もう少し齧ると案外これが美味しい。それほど癖が無く多少野性味のある野菜と言う感じだ。醤油とおかかがあったらいいだろう。またはゴマよごしにも悪くない。結局ゆがいた葉を全部食べた。
今のところまだ、私の頭かららっぱは生えてくる様子は無い。。。と思う。
午後2時。今朝のほころんだばかりの輝きは失われたとは言え、まだ堂々と咲き続けている朝顔である。
朝から夕まで”時間”が停止してしまったかのように変化しないこのどんよりとした空の下、朝顔は閉じる隙を見失ってまだ咲き続けている。
以前ポルトガルに行った時にエンジ紫色の昼顔がそこここに咲いて美しく、育てたいと思い種を捜したがどこにも実っては居なかった。ドイツで咲く昼顔の中にも美しい白い花の種類があり(写真下)これも種を見かけない。
我が家に咲く、上の写真の紫の花は正確には丸葉朝顔である。
イポメア ヴィオラセア L. はアステカ名をTililtzinといい、南メキシコではぺヨーテなどに並んで、もっとも重要な幻覚剤として尊ばれている。預言者はこれを儀式に使い、または薬としても利用される。この種子の粉末に水を加えて抽出液を服用するか、種そのものを噛む。
催眠効果と同じ働きがあり、忘れた記憶や真実を引き戻す事も出来るという。
何種類かのアルカロイドの含有量はTrubina corymbosa(ヒルガオ属)よりも5倍強である。その中にはLSDと類似した構成のアルカロイドが含まれているので場合によってはLSDトリップに似た幻覚がおこり、数時間の異常をきたすそうだ。その他の副作用としては嘔吐感、倦怠感がひどくなる事だというし、いずれにせよ過剰反応する場合もあるから試さない方が身のためである。
知人Mは昔この話を聞きつけ、丸葉朝顔の種を集めた事があるそうだ。
全て準備万端でさて夢の世界へいざ向わんと、種の粉末を溶いた液を口元に運んで舌先が液を感じたその時、彼の脳裏に幾つかの場面が浮かんだ。
これを飲んで幻覚を見て恐ろしい目にあったらどうしよう-《目を見開いて凍りついた顔のアップ。》
これを飲んで幻覚が消えずにそのまま気が変になったらどうしよう-《包丁を振り回して踊りまくっている図。》
これを飲んで心臓が苦しくなって、お腹も痛くなったりしたらどうしよう-《突かれた丸虫のように縮んでいる図。》
これを飲んで一人孤独に死んでしまったらどうしよう-《部屋の片隅でミイラ化している自分の姿》
彼は残りを即流しに捨てた。賢明である。
それからの彼の行動と言うのが面白い。まず冷蔵庫に飛んで行きオレンジジュースのパックを2本取り出し、そのままがぶがぶと飲み続けたのだそうだ。
何故か? 丸葉朝顔のほんの少量の毒が彼にオレンジジュースを飲め!と命じたわけではない。シトロン系の果実汁は麻薬を中和すると彼が固く信じていたからだ。
まあ、兎に角何事も無く、ただオレンジジュースで膨れた腹をタプンタプンと持て余すだけに終わった。まったくご苦労様だがそれでよかったのだ。
昔、朝顔の葉のおひたしをいただいた事がある。朝顔の葉は毛が生えてざらっとした表面を持っているのでおいしそうにはとても見えないが、ゆがいてしまうともちろんのことしんなりするのと同時にヌメリがあって醤油とおかかで頂けば、案外乙なものであった記憶がある。
今手元にあるのは丸葉朝顔ばかりなので食べられない事は無いだろうが、その時の味を確認する事は出来ない。
私の思考は油断するとすぐに食べることに向ってしまいどうもいけないのでここで方向修正を試みる。
有名な千の利休の逸話のなかに”朝顔の茶会”と言う話があった。
利休の庭に朝顔が咲き乱れて美しいという噂を聞きつけた秀吉が訪ねて来るというが、その日利休は朝顔を全て摘み取ってしまう。秀吉は内心不満に思いつつ茶室を見やるとたった一厘の朝顔が生けてあり、その美しさに感心した。という事である。一厘の花の持つ美しさは全ての朝顔の美を凝縮して格別であった事だろう。
どんな色の朝顔が咲いていたのだろうか?私はどの朝顔も好きだが特に5月の空のような空色の花が好きだ。
一厘の朝顔もいいが、朝顔が咲き乱れる利休の庭を見たいものだ。
さて、丸葉朝顔の葉っぱをしこたま食べたら、見る見るうちに私の頭から紫の漏斗のようなラッパがにょきりと生え、両人差し指からどこまでも延びる蔓が伸びだし口から種をまき続ける。。。などという幻覚に悩まされる事になるかもしれないので実験をためらっている。
参考サイト:メキシコの幻覚性物質を持つ植物
参考文献:神々の植物
追記:この記事を書き終えてからやはり私の好奇心は丸葉朝顔の葉を食べようとうるさいので、数枚を茹でてみた。
齧って見ると朝顔のときよりはヌメリが無い。
個体差かもしれない。もう少し齧ると案外これが美味しい。それほど癖が無く多少野性味のある野菜と言う感じだ。醤油とおかかがあったらいいだろう。またはゴマよごしにも悪くない。結局ゆがいた葉を全部食べた。
今のところまだ、私の頭かららっぱは生えてくる様子は無い。。。と思う。
僕も朝顔の中では、空色の花が一番好きです。去年は青い花もあったのですが今年は一つも咲きませんでした。
利休の朝顔に関しては、同感です。確かに一輪の際だった花の美しさも格別でしょうが。沢山の朝顔が美しく咲き乱れる庭も魅力的です。庭に地這いにした朝顔があるのですが、一番花が咲いたときで、40くらい咲きました。それぐらいでは、まだまだ、まばらな感じです。どのくらいの花があれば、美しく咲き乱れるという感じになるのでしょうか。
追記を読んで、やはり、と思ってしまいました。何だかお腹が空いてきました。(笑)
空色の朝顔は、空を切り取って緑のつるに乗せたかのようで美しいですね。何色も花は美しいのですが。40くらいでは駄目ですか。。では来年は朝顔の苗を何十と用意して思い切り朝顔屋敷(笑)やってみてください。
私も来年はたくさん蒔いて見ようと思います。でも丁度その頃留守になるかもしれないなあ。やはりLapisさんに期待です。
追記。。”やはり”ですか?
やっぱりこの頃皆さんに見抜かれているのを感じます。筒抜けですね(笑)
もしもその気があったらお試しあれ。
大丈夫お腹こわしもしませんから。
ですから、seedsbookさんの記事を読んで、心を読まれたか~と勝手に不覚をとったと思いこんでしまいました(笑顔)。
しかもしっかり食べてるし…(笑)。でも、他にも身の回りに幻覚作用をもたらすものはたくさんあるようですが、ちょっと怖くて試したことはないなあ。
と言いつつ、アルコールを飲んでりゃ、世話ないですけど(自爆)。薬中はないけど、アル中の危険性はあるかも?
葉っぱは大丈夫ですよ。
種です、問題は。
でもやっぱりこのごろ、感が鋭くなったのは。。。それは、やっぱり。。。。
(笑)
そういえば、大真面目に原始キリスト教の一部には、マジックマッシュルームで神の啓示を受けた、という説を唱えていた学者さんもいたことを思い出しました。その手の成分については昔の人の方が詳しかったりするかもしれませんね(一部の現代の専門家を除いて)。薬や麻酔のない時代に、鎮痛作用のある薬草とかは貴重だったでしょうし。
得体の知れないものを試してきたのですから。
麻薬、薬草ばかり出なく、食べるものでも同様です。
中毒については、Alice-roomさんは本の麻薬に犯されてますから、他の方では大丈夫でしょう。(笑)
友人が今年は空色の朝顔を植えたとかでお願いしました。種をちょうだいと。
Mさんもseedsbookさんも冒険心があってたのもしいですね。そうですか、LSDに似たものなんですか。植物は薬になるのが多いですね。こちらのブログで結構いろいろ知りました。以前にタンポポのお浸しを食べたと見ました。朝顔のお浸し。。。
頭から何かが生えてきませんように願っています。
いつか朝顔が一面と言う状態を作って見たいものです。私の実験は可愛いものです。
危険なことはしていませんから、愛想尽かさず来てくださいね。
まだ頭からラッパは生えてませんし。。。(笑)
まあ、表現方法という奴は今でも色々ありますから、その芸術家としての心意気なんでしょうが、それでもって日本人の心、侘び寂、文化論レベルに話が発展してゆくと困るますよね。
しかしこの場合、金の茶室など建てるような、きらびやかに”贅”をつくす事を好む秀吉に対しての静かな(またはある意味ではラディカルな)抗議でもあったのではないか?と思うのです。
多分利休もたくさん作朝顔を愛でていたことだと想像するのでしょうが、どうでしょうか。