医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その9)

2016年08月04日 | 循環器
私が「循環器内科の良心」と認識している京大K教授、素晴らしいです。そんな京大からの報告です。
東大からはこういうデータがなかなか出てきません。

Anticoagulant and antiplatelet therapy in patients with atrial fibrillation undergoing percutaneous coronary intervention.
Am J Cardiol. 2014 Jul 1;114(1):70-8.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)


本来この臨床研究は、心筋梗塞や狭心症で心臓の血管にステント療法を受けた患者のその後を調べようと行われているCREDO-KYOTOというものですが、その患者が心房細動の場合にどれぐらいワーファリンによる抗凝固療法(静脈のさらさら療法)が行われ、脳梗塞や脳出血の発症率はどうなのか5年間調査されたものです。素晴らしいです。

以前、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)の記事で、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類の臨床試験でのワーファリン投与群というのは、コントロールの仕方がとても下手で、ほとんどワーファリンを投与していない群に近い群であるということをお伝えしました。

そして以前、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)の記事で、エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。

今回のCREDO-KYOTOという臨床研究では、心筋梗塞や狭心症で心臓の血管にステント療法を行われた患者を対象にしており、治療後、抗血小板療法(動脈のさらさら療法)を2種類の薬で行わねばならない患者で、医者としては、すでに2種類の薬でさらさら療法をしているのに、さらに3剤目で静脈のさらさら療法を行わなければならない「3種類もの薬でさらさらにして大丈夫?」という心理が働く患者を対象にしています。

図の上は、これまで説明してきたアリストテレス研究での脳梗塞・脳出血の年間発症率です。そして、下の右側は今回のCREDO-KYOTOからで、「3種類もの薬でさらさらにして大丈夫?」という医者の心理を反映してワーファリンでコントロールするうえで弱めにしてしまって、TTRが65%以下が3分の2以上であることを示しています。

図の下の左ですが、これは5年間での数値です。年間にするには5で割らなければなりません。どうでしょうか?上の方、心房細動があるほうが当然脳梗塞は多いです。2.2%対0.88%です。心房細動がない患者は今回関係がないので、心房細動がある患者で考えます。

心房細動がある患者1,057人のうち、ワーファリンによる抗凝固療法を受けた場合と受けてない場合で、脳梗塞は2.3%/年対2.1%/年でほとんど変わらないのは印象的です。「3種類もの薬でさらさらにして大丈夫?」という医者の心理が働いて弱めにしてしまうからです。

心房細動がある患者1,057人のうち、ワーファリンによる抗凝固療法を受けた場合と受けてない場合で、脳出血は0.6%/年対0.3%/年です。

ここで、あれ~?っと思いませんか?上のアリストテレス研究では脳出血の発症率はエリキュースという新薬群で0.24%/年、ワーファリン群で0.47%/年です。

心筋梗塞や狭心症で心臓の血管にステント療法を行われた患者を対象にして、治療後、抗血小板療法(動脈のさらさら療法)を2種類の薬で行わねばならない患者で、医者としては、すでに2種類の薬でさらさら療法をしているのに、さらに3剤目で静脈のさらさら療法を行わなければならない「3種類もの薬でさらさらにして大丈夫?」という心理が働き弱めにワーファリンを投与している患者群で脳出血は0.6%/年(動脈硬化による病気の発症リスクが非常に高い患者群です。すでに2種類の薬でさらさら療法をしていて脳出血は起こりやすくなっています)で、アリストテレス研究のワーファリン群0.47%/年とほとんど差がありません。

つまり、アリストテレス研究でのワーファリン群というのは、「どれだけ下手に治療したんや~」群なのです。脳出血の発症が多すぎるのです。

さすが、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなど医療後進国を参加させているだけあります。本当に「恐るべし、ファイザー製薬」であります。そしてそのファイザーの広告塔になってその薬の都合の良いことだけいう医者たちも恐るべしであります。

京大の先生方、今回も素晴らしい報告ありがとうございました。CRODO-KYOTO研究の益々の成功をお祈りしたします。

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