SEポートランド

ポートランド、川をわたればSE地区
レンガのアパート、ちいさな家、古着屋とカフェ
人・建物・緑がほどよく混ざる街

うつむいて雑草をぬきながらGorgeousをしる

2017-08-08 21:52:55 | ガーデニング

【PSUなどがコラボするLGL (Learning Gardens Laboratry)の休み場。木陰ごとにある】

先週、ウィラメット河流域には熱波がきていたようだ。家財道具一式をトラックにつめこんだかのような人々が、まるで何かから逃れるようにキャンプ場まで押し寄せてくるのを横目で見ながら、ぼくは「浄土一家」なる家族のザイオン帰還についての物語を読みすすんでいた。そして8月もたけなわ、暑さでバーストしたタイヤがところどころ散らばるI5を北上してわが家に帰ってくると、ポートランドはそれまでとは違う種類の暑さになっていた。

大規模な山火事の煙が流れてきていているみたい。夕方になると、河のむこうにある高層ビル群が赤茶色にけむって見える。
ただし7月末のほうが空気は乾いていた。でも、そのころの風のなかでもダグラス・ファーは青々と揺れていて、大木のしたの土壌には冬の雨がまだ残っているように見えた。「この対決、冬には雨がつづくオレゴンの圧勝ですなウシシ」と、勝手なライバル心にもとづく加州への圧勝にぼくは酔っていたのだった。
でもいま、少し湿度があがったような赤茶けた空の下、こちらも少し赤くくすんだ様な大木をいま見上げると、いまはロサンゼルスとか、イーストベイにいるみたいな気分だ。なーんだ雨がふる分、コッチのほうが損じゃん。

つまり当地の夏には、二期あるみたい。…いや、むしろ水々しいときは春のつづきだったのかな?

ならば、ここの所やってきた辛いほうの夏、ガーデンにはどんな人たちがきて、どんな事をしているのか見に行かなくっちゃ。リュックに手袋、タオルをつめこんで、酷暑が予報される日の朝方、現場にむかった(注1)。
まず温室にはポートランド州立大(PSU)の学部生さんたち。
そのなかに知り合いの元気な学生さんがいたので、日本語で状況をきくとすこし苦笑しながらもニコヤカに「今日まで授業なんですよー」(サマーセッション=同大は4期制)とのこと。
ガーデンにでると、そこにはおっかなびっくりだったり、慣れた手つきだったりしながら作業する若者たち。これが院生になるころには、楽しげに作業する若者だけが残る、その入り口なのでしょうきっと(2)。

飛び込みボランティアの司令塔ケンジー(PSU院生)に声をかけて、一緒に作業リストを確認したのちに(つまり、ぼくが「当日の作業を主体的に選択することを大切にしている」という発想による)、学生たちのとなりの区画での雑草むしり、が本日のぼくの作業となる。

先月とはかわって、日差しに湿度が加わってくる。
まだ大きくなってないブロッコリー、バジルなどと、こちらのほうが大きい雑草をより分けながら作業をつづける。途中、ついつい野菜のほうを引っこ抜いてしまうのは、恥ずかしながら自分が素人だからだ。
しばらく作業していると、少しづつ参加者がふえてきた。最初はパンクふう黒上下の若年女性。つぎは、もう少し土っぽい茶色の若年女性。少しおくれて、年長のヒスパニック系とおぼしき女性。みんな半ズボンにタンクトップ。農作業というよりは、フェスにでも行くよう格好をしている。小柄+東洋人+オジサン+ストレート=というジェンダー的ヒエラルキ最下層のぼくは、慣れてきているとはいえ身体の圧倒的ボリューム感のちがいに目のやり場に困りながら、また地面を見て作業をつづけた。

潅水パイプからはなれた場所では、サラサラになるまで乾いている土が、パイプの水で固まって軽く乾いた土くれになっている。そんな場所に雑草は根を下ろしている。根のまわりにちいさな片手鍬をいれて茎の根元を引っ張ると、次々と雑草は抜ける…
調子に乗って、ついつい野菜のほうまで引っこ抜いちゃった。でも、東京で抜いた雑草の根っこのしつこさを思い出しながら、この千年間は雑草を抜いて生きてきたぼくのDNAは喜びにあふれてくる。この作業、お金払ってやってもいいぐらい楽しくてラクチンだ。

しばらく続けると、ハエが飛んできた。
   ハエがいる=気づけば蚊に刺されている!
と、心の中で身構える自分がいる。
しかし結局、蚊が飛んで来ることもなく、うるさいのは羽音だけということになる。そういえば7月にはハエさえ飛んでこなかった。なるほど、みんなフェスに行くような(ぼく行ったことないけど)格好をしているわけだ。日本だと、汗だくになりながら海女さんかはたまた宇宙服かのごとく重ね着するのが野良着、なんだけどなあ。

昼前まで2時間足らず作業して、他の参加者とすこし話をして、ぼくの今日の作業はおわり。木陰に休む仲間たちに手をふって家に帰る。最高気温がでる夕方は、ホーソンのスタバ(3)でフィールド・ノートを書こう、と思う。
先週キャンプで読んだ(むしろ今まで読んでないのか!と怒られそう)『怒りの葡萄』前巻は、賃労働をするまえに見たうつくしい国の描写で終わっていた。お給料を東京からいただいている私がその日見た景色も、ジョード家がみたように輝いていた。




付記;
(1) スケボーのときもガーデンのときも、暑い日・寒い日に現場に行けば、そんな趣味が大好きで止まないなひとたちと確実に会えて、共感できて、すこし話しを聞けるんだ、と、とフィールドワーカーとして体得している。「外がつらい日こそ(趣味の)現場に行け」、と。

(2) などとエラそうに書いていますが、20歳のころの自分を振り返ると、農場にかよってる今のほうが不思議だ。齢取ると鈍感になりますねー、とちょっと悲しくもうれしくもある。


(3) ここでシアトル発祥のチェーン店が出てくるのは恥ずかしくもあります。しかし、近所でいちばん作業しやすいの店なものですから。(むしろ、なんであんなに狭くて四角いテーブルのカフェに人があつまるのかがナゾすぎる。あの椅子とテーブル、インドかはたまたベトナムか、っていうスケール感だよ。そこに銀マックのロゴを光らせる可笑しさよ。なんたらラテを飲むと、そんなに仕事はかどるのかなあ)

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