つむじ風

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一匹竜の刑事

2017年01月25日 15時35分07秒 | Review

―顔のない刑事・決死行―
太田蘭三/角川文庫

 2011年1月25日初版。著者の作品には4人(釣部渓三郎、蟹沢警部補、相馬刑事、香月功部長刑事)のヒーローが居るのだそうだが、本作品の香月功部長刑事だけが非現実的スーパーヒーローなのだろうか。本作品は「顔のない刑事、尾瀬の墓標、赤い渓谷」に次ぐ4作目、シリーズが進むにつれてそのスーパーヒーローぶり(逸脱ぶり)が激しくなっているようだ。いわゆる現実離れした話し、ということになるが。

 著者は山歩きが好きで、よく訪れているようだが、「あとがき」でも書いているようにリアルな描写である。随分昔に登った奥多摩駅-鴨沢-堂所-ヘリポート-雲取山荘-ブナ坂-七つ石山-高丸山-鷹の巣山の縦走を思い出す。清里駅から赤岳、富山駅から薬師岳など、その描写がリアルであるだけにこのフィクションとの融合は効果的だ。これがなければ、結構つまらないものになってしまうのかもしれない。確かに「虚実の皮膜論」とは言い得て妙である。

 「顔のない刑事」というのは、覆面をしたり、人に顔を見せないということではなく、単に「警察手帳」を持たない刑事というだけで、あえてお題にするようなことではないようにも思える。シリーズを最初から読んでいないので、今のところ著者の真意、意図は判らないが。

 警察は、犯罪の対極にある。その組織や法律、象徴的な職種(刑事)を描き、犯罪と対峙させることで、ストーリーをより立体的に象徴的に浮かび上がらせることができる。その辺の出来、不出来が作品の評価を分けるところなのだろう。警察小説の「さきがけ」は、横山秀夫、藤原審爾の作品に遡るらしい。以降、佐々木 譲、今野 敏、陽堂瞬一、誉田哲也と続くようだが、この辺の作品は既にお目にかかっている。いつか、「さきがけ」作品にも是非お目にかかりたいと思う。

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