つむじ風

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雪まろげ

2017年01月22日 21時34分35秒 | Review

―古手屋喜十為事覚え―
宇江佐真理/新潮文庫

 2017年5月1日初版。古手屋喜十はシリーズ2作目、同心の手先としては伊三次と同じだが、その性格、人物造形はキッチリ異なる。主人公の嫁であるおそめとお文もまた同様に異なる。同じような背景の生活者であって、つい似てしまいがちのところをクッキリと描ききるのは、やはり著者ならではのすばらしい所だと思う。1作目の「古手屋喜十 為事覚え」を読んだのは2014年8月31日だったからそれから3年が経つ。北町奉行所の隠密廻り同心、上遠野平蔵との腐れ縁も健在だ。

 今回の作品で、「落葉踏み締める」では喜三郎店のうのと6人の子供達の話から始まるが、肝心の主人公喜十がなかなか登場しない。本を間違えたかなと思っていると、この章の最後の方にやっと登場する。ここまで読んで、凡そ著者の目論見(構想)が読めたような気がする。
 最終章「再びの秋」で、やはりねぇと納得する。本来、ここから面白くなるところなのかもしれないが、喜十の続編(捨吉の兄弟、姉妹のその後)を読むことが出来ないのが本当に残念に思う。この先にどんな構想が練られていたのか、今となっては聞いてみる事も叶わぬ夢となってしまった。




 



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