つむじ風

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天使に見捨てられた夜

2017年10月15日 10時59分32秒 | Review

 桐野夏生/講談社文庫

 1997年6月15日初版、1999年9月3日第12版。「天使に見捨てられた夜」は前作「顔に降りかかる雨」に続く女探偵、村野ミロシリーズになるらしい。
 男がイメージする女ではなく自立した女を描く。既成の女ではない、女の本性、本来の女を描く。実にカッコ悪い主人公である。どうも理解できない部分と、妙に納得できる部分が折り重なったような主人公である。「女にしかわからないこと」なのだから仕方がない。
 しかし、何か特別な推理力や特技があるわけでもない。七転八倒しながら黙々と真相に迫ってゆく主人公をイメージしていると、トモさんじゃないが、(下心は別にして)つい助けたくなるから面白い。

 一色リナ(山川雪江)が、八田牧子と富永洋平の子だとはなかなかミステリアスな作りだ。八田牧子からの成功報酬は結構な額であったが、今回の事件で「私が失ったもの」は決して小さくはなかったと思うし、思い出すたびに情けなくなるだろう。本当にカッコ悪い主人公である。こんな形で女主人公を描く作品は初めて出会ったような気がする。