宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

レビュー:『Cepheus Engine Vehicle Design System』

2017-04-17 | Cepheus Engine
 『Cepheus Engine Vehicle Design System』は、その名の通り『Cepheus Engine』の車両設計ルールです。
 以前説明した通り、『Cepheus Engine』は大人の事情でマングース版『トラベラー』第2版に乗れなかった人々が「自由に」使える2D6系SF-RPGシステムとして急拡大しているのですが、これまで車両設計システムは未搭載でした。というのも、『Cepheus Engine』の基となったTraveller SRDには、車両設計ルールとなる『Vehicle Handbook』は含まれていなかったのです。
 それを補うべくゼロから作られたこの『Vehicle Design System』、蓋を開けてみると何と「(SRDにある)宇宙船設計システムを車両にダウンサイジングする」という、今までありそうでなかった作りになっていたのです。クラシック版『トラベラー』をやったことのある世代ならピンとくるでしょうが、つまり「まず船体の大きさを決め、船体とドライブの出力(A~Z)との兼ね合いで速度が決まり、ドライブ出力はパワープラント(A~Z)の出力以下に制約される、あとは空いた隙間に必要な物を詰め込んで終わり」というお馴染みのあれなのです。

 さて今回のレビューですが、いちいちシステムを解説するのも長くなりますし、システム自体は無料で手に入れようと思えばできるので参照も容易ですし…ということで、実際に車両を設計することでレビューに代えてみようかと思います。
 やはり『トラベラー』の花形車両といえばエアラフト。しかし、クラシック版ルールでは1台60万クレジットもする超高級車でもあります。『Cepheus Engine』では27万5000クレジットと控え目になりましたが、それでもおいそれと買える値段ではありませんし(1クレジット=1ドル≒100円と考えると目安になります)、派手目なシナリオで壊してしまうとプレイヤーに恨まれそうです(汗)。
 そこで、庶民でも買えそうな「軽反重力車」をこの『Vehicle Design System』で設計してみます。はたしてそう都合よくいきますかどうか…?

1.車体の選択(Choose a Vehicle Chassis)
 輸送機器としての車体枠の大きさをまず決めます。これにより車両の重さ・積載容量が全て決まります。
 ここでは「大きさの例(Size Example)」に「小型車(Compact Car)」と書いてある「コード4」を迷わず選択します。重さは0.75トン、容量(Spaces)は9(容量1=1/12トン)、価格は2100クレジット、製造時間(Construction Time)は7時間と自動的に決まります。更に「閉鎖型(Closed)」か「開放型(Open)」かを決めます。一般のエアラフトのような開放型だと車体価格が1割引きとなりますが、差別化も兼ねてここはあえて閉鎖型を選択。
 また、特殊な環境で用いるための追加装備(腐食環境防護とか)も選べますが、全て省略。自家用車なので追加装甲もなしとしますが、一応車体の素材をTL4の「鉄(Iron)」にしておきます。これで自動的に基礎装甲点(base amount of armor)が2となります。
(※素材選択は「追加装甲の」価格と装甲点に影響するので、ここで車体を高TLの硬い素材にして余計に基礎装甲点だけを貰っておくズルも可能ではありますが…)

2.推進力の選択(Choose locomotion/propulsion)
3.動力源の選択(Choose power supply)

 ここはまとめてやってしまいます。反重力車両を作るので推進力は当然TL9の「反重力(Grav)」(TL12の改良型反重力(Advanced Grav)でもいいのですが、価格が倍になってしまうので…)、動力源にはTL9の「初期核融合(Early Fusion)」を選びます。ただこれ極端な話、積載空間さえ確保できれば石炭燃料のTL3外燃機関(External Combustion)で反重力車両を飛ばせるようにも読めます。私の勘違いであればいいのですが、まあこれはこれでスチームパンクな設計も可能だと好意的に解釈できなくもないです(笑)。
 ここで宇宙船と同様にそれぞれの「ドライブ番号」を決めないといけません。車体の大きさと欲しい速さに比例して必要とされる推進力は大きくなりますし、それを支える動力源もより大きなものが必要になります。車体コード4だと、ドライブBで「1」、Cで「2」、Dで「3」、Eで「6」が得られます。ここで得られた係数を「基本車両速度(Vehicle Base Speed by Drive Performance)」表で「反重力(Grav)」の欄を参照すれば、Bの係数1でも時速100キロメートルで走行可能なことがわかります。これで十分ですからドライブBを購入し、必然的にパワープラントもBが必要となります(C以上は無駄ですし)。
 「ドライブ価格(Vehicle Drive Costs)」表でBを、かつ反重力は「滑空(Thrust)」に属するのでその欄を参照すると、動力炉は基礎容量0.26の基礎価格が300クレジット、滑空の推進力は基礎容量0.3の基礎価格が15000クレジットと出ます。初期核融合や反重力はたまたまそれに掛ける倍率は全て1倍となっているので、先程の数字がそのまま使われます。

4.燃料容量の決定(Determine fuel requirements)
 動力源を核融合としたので、自動的に燃料は水素となります。その燃料をどれだけ蓄えるかを決めますが…空きスペースとの兼ね合いもあるので後回しにします。いずれにせよここでは、その輸送機器を「連続何時間(もしくは何日/何週間)動かせたいか」で必要な容量が決まります。さらに動力源の種類次第で燃料量に掛けられる数が変化します(といっても初期核融合は1倍ですが)。

5.操縦方法の選択(Choose vehicle’s controls)
 とりあえず何の補正もない(代わりに高くもない)TL4の「標準(Basic)」を選んでおきます。容量は1必要です。ちなみにTLが高くなるとヘッドアップ・ディスプレイによる操縦支援や、思考制御も可能になるようです(そして当然高額です)。
 ここで車両の敏捷度修正(Vehicle Agility)を出しておきます。これは走行方法や操縦席によって「運転が容易かどうか」を示す指標です(主に〈運転〉技能判定の修正値になります)。この車両の場合、反重力車両で0、小型(2トン以下)で+1、標準操縦で0の補正が得られるので合計で+1です。

6.通信機器の選択(Choose vehicle’s communications system)
7.探知機の選択(Choose vehicle’s sensor package)
8.搭載コンピュータの選択(Choose vehicle’s computer system)

 今回の用途には必要なさそうなのでとりあえず無視します。ちなみにコンピュータを搭載すると車両が技能を持つことができるようになるので、例えば搭載兵器の自動射撃が可能となります(自動操縦はここではなく操縦席の追加装備で「自動操縦(Autopilot)」の購入が必要となります)。

9.搭乗乗員数の決定(Determine number of required crew)
 車両の操縦には運転手が最低1名必要で、操縦席(Cockpit)の設置がいります。まず容量2の「標準操縦席(Cockpit, Basic)」を置きます。価格は1000クレジット。
 あと、3人掛けの「窮屈な座席(Seat, Cramped)」も置いて4人乗りにします(イメージとしては一般的な自動車の後部座席?)。容量は4、価格は2000クレジット。

10.追加装備の決定(Determine additional components)
11.砲塔・武器装備点の決定(Determine turrets, fixed mounts)

 ここは武器や追加装備を積んだりなので全て省略します。

 さてここで確認です。コード4の車体に積める容量は9で、これまで0.26+0.3+1+2+4=7.56を使っているので残りは1.44です。この中に後回しにしていた燃料タンクを作らなくてはなりません。
 「燃料要求量(Power Plant Fuel Requirements)」表でドライブBの動力源は1時間あたり容量0.00052が必要とされ、初期核融合の補正係数は1倍です。とりあえず容量の残り1.44のうち0.04だけ燃料に回すと、連続走行時間は約77時間と出ます。まあこれだけあれば大丈夫でしょう。

12.残った容量を荷台に割り当てる(Allocate remaining space to cargo)
 残った1.4の容量はそのまま荷物の積載空間とします。容量1.4をキログラムに直すと116.67キログラムなので、ちょっとした荷物は運べそうです。

13.最終的な価格と製造時間を求める(Calculate final price and construction time)
 ここまででかかった金額は20400クレジットです。宇宙船と同じく、これを標準設計の量産品とすることで1割引となるので、18360クレジットが最終価格です。2万クレジットを切る値段なら、ちょっとローンを組めばTL9の自家用反重力車が手に入りそうです。
 そして製造にかかる時間は、車体コード4の基礎製造時間が7時間、追加装甲はないので補正なし、標準設計にしたのでその補正もないので結局7時間で製造できることになります(ちなみにカスタムメイドだと10倍かかります)。

 ちなみにこのVDSでも、標準車両記述書式(Universal Vehicle Description Format)が定められています。先程完成した車両を当てはめると、

TL9軽反重力車
 閉鎖型0.75トン車体(船殻点0、構造点1、装甲点2)を採用したTL9軽反重力車は、初期核融合炉(コードB)と反重力機関(コードB)を搭載し、最高速度は時速100km、巡航速度は時速75km、敏捷度補正は+1です。動力炉は積載された水素燃料40リットルで約77時間稼働します。この車両は標準操縦席で制御されます。荷台には1.4kl搭載可能です。運転者を1名必要とし、他に3名を搭乗させることができます。価格は18.36KCr.(標準設計による10%引きを適用)で、製造に7時間かかります。


 ここから改造するとするなら、2000クレジットの追加で自動操縦(ただしTL9を維持するなら〈反重力機器-0〉しか取れませんが)、後部シートを外して操縦席を2人掛けにして貨物スペースを増やすか軽い武装をつけるか装甲を増やす、あたりでしょうか(容量が厳しいので車載武器は無理ですが)。操縦性を犠牲にして(敏捷度修正を減らして)車体価格を削るのは、元々の価格が安いのであまり意味がないでしょう。

 元々ケチくさいコンセプトの上に、VDS自体が「初期核融合+反重力」を基準にした係数設定になっているのでかえって見本としては不適格になってしまいましたが、従来の『トラベラー』シリーズの車両設計システムより簡易に作れるのはおわかりいただけたでしょうか。
 入手性の容易さから、今後このVDSで設計された車両が次々と産み出されそうな気がします、いや産み出されるに違いないと確信できる完成度です(疑問点や悪用されそうな点はなくはないですが…)。
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